「おちょやん」「妻、小学生になる。」で大注目!天才子役・毎田暖乃の驚きの演技術
NHK連続テレビ小説『おちょやん』では主人公・竹井千代(杉咲花)の子ども時代を演じ、父親(トータス松本)との迫力あるやり取りが話題に。そして、ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)では“石田ゆり子の魂が入った、堤真一の妻”という難役に挑み、「演技力が半端ない!」「スゴすぎる!」と視聴者をザワつかせた毎田暖乃(まいだ・のの)さん。天才子役はどうやって生まれたのか。そこには大人も驚く独特の演技スタイルがありました。
—肩書は何ですか?
何をしている人かってこと?子役です!そう言うと「いやいや、女優やん」みたいなことを言われたりするんですけど、こちらも「いやいや」みたいな。私の中で「女優」は、大人の、人生を積んできた人で、小学生は「子役」です。
—女優・子役になろうと思ったのはいつ頃ですか?
私が小学2年生、7歳の時です。広瀬すずさんが大好きで、いつも「カワイイ~」と言いながら見ていました。そしたら『なつぞら』(NHK連続テレビ小説)に出るというのを聞いて、見たらめっちゃおもしろかった!楽しそう!私もやりたい!と言って、お母さんに事務所を探してもらったのが子役をやるきっかけです。
—お芝居の勉強はどうやって?
事務所で先生に教わっています。私が住んでいる関西は時代劇の撮影が多いので、着物とか古い時代のものを自然に使えるようにということで、最初に時代劇を教えてもらいました。殺陣(たて)が楽しくて、私が主役をやって周りを「シャキーン」と切りつけたら、優しいお兄さんたちがバタバタ倒れてくれます(笑)。
だんだん今の暮らしに近づいてきて、現代劇も教わっています。私は、セリフを教えられると下手になるらしくて。先生が人によって教え方を変えてくれているんです。だから、私の場合はセリフを練習するよりも、台本に書かれていないところの想像をすることが多いです。
—例えばどういうこと?
『妻、小学生になる。』だと、貴恵さん(石田ゆり子)が亡くなる前の幸せな生活とか、亡くなった後、この世をさまよっている時に何を思っているかとか。
『おちょやん』では、弟と引き裂かれる思いが分からなかったんですけど、先生から実際に家族がバラバラになる話を聞いたらすごく泣けてきて、具体的な話を聞いたら役の気持ちが想像できました。
—セリフはどうやって覚えていましたか?
気持ちの流れを覚えると、言葉は勝手に出てくる。1回台本を読んで流れを頭に入れて、台本に書いてないところを考えて、また読む。気持ちの流れが入れば、勝手に言葉は出てくる感じでした。だから現場に台本を持って行ったことはないです。
覚えたセリフは、いったん忘れます。とはいえ、セリフは体には入っているので、例えば『妻、小~』だと、堤さんの言葉を“初めて聞く言葉”として聞くと、話しかけられたらそれに反応して言葉が出てくる感じ。
—オーディションはすごかったらしいですね。
『おちょやん』の千代役オーディションは、500人くらい受けたみたいです。事務所の先生から「受かろうと思って行かないで」と言われていたので、合格を聞いた時は「え?ほんまに?」って感じでした。
本当は3次くらいまであるはずだったのが、1次で決まったって言われました。「千代がおったな…」と、満場一致?だったみたいです。『妻、小~』もそうでした。自分でも怖いです(笑)。
オーディションの時に頭にあったのは、「受からなくていいから自分が出したいことを出す」「やっちゃいけないことはない」この2つでした。
—何をやりました?
『おちょやん』のオーディションで「ほんま、生きるってしんどいな」というセリフがあって、皆は椅子に座っていたんですけど、私だけ床にベタ~っと寝転んで「生きるってしんどいな~」と言いました。後になって、それがものすごく印象的だったと言われて、本番でも採用されました。実際、生きるってしんどいなんて思ったことないし、私は毎日幸せですけどね。
—トータス松本さんのことを蹴るシーンがあったけど、あれはアドリブ?
あれは、監督とお父ちゃん(トータス松本)に「ほんまに好きにしていいから、気持ちをぶつけなさい」って言われてやったんです。私、力が強いので本気はヤバイと思っていたんですけど、「いくらやってもお父ちゃんはどないもないから、本気で来い!」って言われて思いっきり行きました。
ただ、本番で蹴ったところが一番痛いとこに当たっちゃったみたいで、私も周りの人もすぐに謝ったんですけど、「これだけ痛かったから、いい芝居できたわ」って言ってくれました。
—役作りではどんなことを?
『妻、小~』の万理華役は、次の台本が来るまでに、想像で日記を書いていました。役になりきって、きょうはママに怒られないようにしようとか、夕ご飯はママの大好物を作るとか書いていたら、台本が来た時に引き出しとして出せるのかな、ということで。
—中身が石田ゆり子さんの役を演じるに当たって、どんな準備をしましたか?
まねをしようとは思ってなかったです。最初は、同一人物を2人でやるからと、貴恵さん(ゆり子)の魂が入った万理華(毎田)のセリフを、ゆり子さんも一緒に読んでくれました。
あとは、「自分のシーンがなくても見学に来ていい」と監督が言ってくれたので、3人家族(父:堤真一、母:石田ゆり子、娘:蒔田彩珠)のシーンを見に行って、自分もそこにいる空気を想像していました。お話しするというよりは、ゆり子さんにどんな癖があるか…みたいなことを、ただボーッと見ていました。
でも、堤さんと蒔田彩珠ちゃんのおかげですよ。2人がおらんかったら、私はただの小学生だから。2人が私のことを貴恵さんとして見てくれたから、そうなったんです。
私が、彩珠ちゃんのことを役名で「麻衣」って呼ぶと、彩珠ちゃんも「何、ママ」って返してくれて。そしたらほんまに彩珠ちゃんのことがカワイイって思えてきて、これが「母性」か、と思いましたね。
—人見知りもしないんですね。
野球の広島東洋カープが好きでよく試合を見に行くんですけど、前後左右の人とは全員友達になっちゃいます。
よく行く近所のイタリアンレストランでは、家族はテーブルにいるんですけど、私だけカウンターでマスターと2人でしゃべっていることもあります。私がカウンターに座ると「何飲む?」って聞いてくれるので、「オリジナルで」って言うと、オシャレなカクテルを出してくれます。ジンジャーエールのアセロラ割りだったかな。
—学校は楽しい?
楽しい!皆に会えるとうれしいし、先生もクラスの子もドラマを見た感想を言ってくれて、応援してくれて、ほんまにいい学校ですよ。勉強?できるとは言われます。でも好きな科目は体育!何も考えずに体を動かすのが、とにかく好きなんです。
最近ハマっているのは、キックボクシングとボルダリングと料理。『妻、小~』で料理のシーンがあって、前から家でお手伝いはしていましたけど、フライパンを振りたかったので、野菜を切って炒めたりしていたら上手くなりました。
—どんな家族ですか?
父、母、兄の4人家族です。とにかくうるさい(笑)。トランプしたり、テレビでカープを応援していると外に響いちゃうので、窓は開けられへん。家族全員、血液型はBです(笑)。
—将来の夢は?
女優。
—どんなドラマに出たいですか?
恋愛ドラマ!『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)にハマりました。ヒロインもいいけど、ヒロインを助ける友達役をやりたい。警察官もカッコイイな。あとは動物が好きやから、動物と一緒に出られるもの。
目標はNHK大河ドラマです。『麒麟がくる』を見て、織田信長に興味を持ちました。パパとお城の跡地を見に行ったりしましたね。
—好きな女優は?
杉咲花さん!一生、私の憧れの人です。(『おちょやん』で)共演して分かったんですけど、優しくて、すごく気遣いもされるんです。ちょっとしたことでも絶対「ありがとうございます」って言うんですよ。
—次の作品の予定は?
NHK夜ドラに決まりました。朝じゃなくて、夜です。そしたら、監督が『おちょやん』の監督で、スタッフさんもほとんどが『おちょやん』のメンバーなんです。本当は少しドラマはお休みする予定だったんですけど、絶対楽しいやん!やりたい!となりました。今回、オーディションはなかったです。
もう1つ、ドレスデザイナーにもなりたい。絵を描くことが好きで、スマホでドレスのデザインをしています。作るのはプロの人に頼んで、私はデザインができるといいなと思います。
【インタビュー後記】
吸収力がすごいです。質問から答えに行き着くまで少し時間がかかると、お母さんが「聞かれていることはこれだから、それに答えて」とアドバイス。暖乃ちゃんも「そっか」とすぐ修正してきます。事務所の方針も、女優である前に人として身につけるべきことを学ばせる、という考えなので、個性は大事にしながらもきちんと育てられています。インタビュー中にもメキメキ成長をしていくので、今回の私の相づちは、ほとんど「え~」「は~」ばかりでした。人・環境に恵まれているのは間違いありませんが、それを引き寄せる力も才能かもしれません。
■毎田暖乃(まいだ・のの)
2011年9月25日生まれ、大阪府出身。ルート所属。2019年、NHK連続テレビ小説『スカーレット』で、大島優子の娘役としてデビュー。2020年、『おちょやん』で幼少時代の竹井千代役と春子役の2役を演じ注目される。2022年、金曜ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)では、石田ゆり子の魂が体に入った堤真一の妻、小学生・白石万理華役として出演し、称賛の的に。2022年8月スタートの夜ドラ『あなたのブツが、ここに』(NHK)出演予定。