アメリカ合衆国は世界の国々からどれほどまでに好かれている・嫌われているのだろうか
世界は米ソによる冷戦構造の終結、アメリカ合衆国のみのスーパーパワー時代を経て、EUや中国の台頭に伴う多角時代となりつつあるが、アメリカ合衆国が世界最大の影響力を有している事に違いは無い。同国を世界各国はいかなる視点で見ているのだろうか。同国の民間調査機関Pew Research Centerが2015年6月に発表した世界規模の調査結果「Global Publics Back U.S. on Fighting ISIS, but Are Critical of Post-9/11 Torture」を元に確認していくことにする。
次に示すのはアメリカ合衆国を提示し、それに対して「とても好意的に思う」「それなりに好意的に思う」「それなりに忌避感を覚える」「とても忌避感を覚える」「分からない」の5選択肢から1つ回答者の心境に近いものを選んでもらい、好意的2つを好き派、忌避感2つを嫌い派でまとめた結果。青が多いほどその国ではアメリカ合衆国に好意を覚える人が多く、赤が多いほど嫌いな人が多いことになる。
ヨーロッパ諸国では大よそ好意的だが、ドイツがやや低め。もっともドイツはアメリカに限らず、他国に対してはあまり好意を持たない姿勢を示すことが他調査からも明らかになっているため、別段不思議な話ではない。他方、ロシア方面ではウクライナ情勢を受けてウクライナ自身は好意的な人が多い一方で、ロシアでは嫌い派が多数を占めている。
アジア地域では大よそ好意的。ただし中国や中国の影響力の強いマレーシア、そしてパキスタンでは嫌い派の値が大きいのが目立つ。南米でも大よそ好意派が多数を占めるが、アルゼンチンやベネズエラでは4割が嫌い派なのが目に留まる。
アフリカ諸国では大よそ好意派が多数。その度合いはアジアやヨーロッパよりも顕著となっている。
次に示すのはヨーロッパとアジア地域における、取得できる範囲での好き派の値の動向を示したグラフ。
ヨーロッパ方面だが、金融危機・欧州債務問題の露呈化以降は高めな値に移行し、それが維持されている。そしてドイツが昔から他国よりも低めな状態を維持している状況も分かる。またロシアだが今世紀に入ってからは他の西欧諸国と変わらない値が維持されていたものの、ウクライナ問題の顕著化に伴い急激に下落しており、国民感情ベースでもアメリカを避ける動きが出ているのが分かる。
一方アジア方面では、やはり金融危機ぼっ発以降、各国ともいくぶん高い値に移行している。特に韓国の上げ方が著しい。日本では2011年に跳ね上がりの動きがあるが、これは震災後の救援活動「オペレーション・トモダチ」によるところが大きい。対立構造を示しつつある中国でも、他国と比べれば低めだが、一定値を維持し続けており、国民ベースでは変化の無いようすがうかがえる。
今件値はあくまでも成人の国民からの意見であり、国政に直接反映されるわけでは無い。しかし民主主義を採用している国では国民感情が多分に政策に影響されること、独裁国家でも往々にして「国民の意志で」との手口が使われることから、国際情勢の判断の際には大いに参考となる値に違いない。
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