岡山大学事件~教授の解雇無効仮処分に対する異議申し立て棄却
解雇無効の仮処分確定
岡山大学薬学部の教授2名が、医学部教授らの論文に研究不正があるのではないかと疑義を申し立てたところ、ずさんな内部調査を行い、研究不正がなかったとしたうえで、疑義を申し立てた教授が「教授にふさわしくない」として解雇された事件については、すでにYahoo!ニュース個人の記事でも取り上げてきた。
6月に、二人の教授の解雇は無効であるとの仮処分に対し、岡山大学側が異議を申し立てていたが、去る10月18日、岡山大学側の異議が棄却され、教授の解雇は無効であるとの仮処分が確定した。
あくまで仮処分の確定であり、裁判はこれからだが、解雇の不当性が示されたと言えるだろう。
医学部の研究不正はなぜ起こる?
しかし、日本の生命科学系における研究不正は、医学部に所属する研究者が行う傾向が強いように感じる(参考:白楽ロックビル氏のまとめ)。最近も、東大医学部の研究者らの論文に対する疑義の訴えがあり、大学が本調査を始めているところだ。
白楽ロックビル氏は、医学部教授などに不正行為が多い理由は、「研究者特殊感」にあると指摘している(白楽ロックビル:『科学研究者の事件と倫理』(講談社,2011))。白楽氏は、医学部、医師の研究者のなかに、自分は研究不正をしてもかまわないという特殊感を持つものがいるという。
医学部は、歴史のある国立大学を中心として、他学部に比べ教授の権限が強く、下位の地位の研究者は上位の地位の研究者に従うべき、逆らえないという感覚が強い。また、医師免許を持っていない医学部以外の研究者を下に見る傾向が強い。
それはある意味必要なことだ。人の命を預かる厳しい職業である医師は、おのおのが勝手なことをしてしまえば、治療が成り立たないからだ。その点では軍隊のような組織に似ているのかもしれない。
しかし、それが行き過ぎれば、上位者が自分は特殊な人間で、研究不正を行っても問題ないだろうとの意識を持ってしまうのかもしれない。この「特殊感」が存在するか、さらなる調査が必要だ。
治療ではない研究は、本来自由な発想で行うべきであり、教授だろうが学生だろうが関係ないはずだし、医師免許の有り無しは関係ないはずだ。
解雇された森山教授は、薬学部の教授であり、医学部が特殊だという感覚がなかったため(ある意味当然だ)、疑問があるから問題点を指摘したまでで、まさか解雇に至るとは思ってもいなかっただろう。
岡山大学はどう出るか
これからも裁判は続く。
名門の岡山大学と教授2名という、権限や権力の差が歴然としている裁判であるが、事実に基づく公正な裁判がなされることを心より願う。
岡山大学も、誠実に非を認めるべきであり、それが岡山大学に在籍する多数の健全な教員、そして学生に対する責務であると言える。今後の裁判にも注視していきたい。