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【2022.1/16版】妊産婦への新型コロナワクチンのブースター(3回目)接種 国内外の最新情報

重見大介産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスのワクチン接種状況

日本における新型コロナウイルスワクチンは、2022年1月14日時点で総人口の78.6%、9949万人が2回接種を完了しています。(文献1)

しかし、2021年12月1日から開始された3回目接種(ブースター接種)の完了者は総人口の0.88%(約112万人)にとどまっています。

国内では、厚生労働省も日本産科婦人科学会も、妊産婦へのワクチン接種を推奨しています。(文献2,3)

なお、日本の妊産婦における接種状況はこれまではっきりしたデータがなかったのですが、2022年1月13日に日本産婦人科感染症学会のページで「妊婦の新型コロナウイルスワクチン接種に関するWEB アンケート調査 結果」が公開されました。

概要は以下のとおりです。

・調査期間 2021年10月5日 〜11月22日(Webアンケートによる横断研究)

・Webアンケート調査に参加した妊婦は6,576名

・ワクチンを1回以上接種済みの妊婦は5,397名(82.1%)

・2回接種済みが4,840名 (73.6%)

・未接種は1,179名 (17.9%)

アンケートに回答した妊婦さんは接種に積極的だった等の可能性(選択バイアス)は考慮しなければなりませんが、2回接種済みの妊婦さんが約74%というのは心強いデータと考えます。

しかし、本結果には当然ながらブースター接種に関する数値は含まれていません。

海外における妊産婦へのブースター(3回目)接種の見解は?

(1)米国

オミクロンにより全米で感染者が急増しており、米国では妊婦へのワクチン接種を再度呼びかけています。(参考:Newsweek

米国における妊婦のワクチン接種率はここ数カ月で多少上昇したものの、一般的な集団に比べると遅れています。

米国CDC(疾病予防管理センター)のデータによればワクチン2回を接種している妊婦は約41%程度にとどまっているようです。

では、ブースター接種についてはどのようになっているのでしょうか。

代表的な公的機関として、CDCとACOG(米国産婦人科学会)の見解は以下のとおりです。(文献4,5)

・CDC

「ワクチン接種は、妊娠中や授乳中の女性にも推奨されています。また、妊娠中、授乳中、現在妊娠を希望している人、将来妊娠する可能性がある人など、18歳以上のすべての人は、ブースターショットを受けた方が良いです。」

・ACOG

「18歳以上のすべての成人は、ブースター接種を受けるべきです。これには妊娠中や最近妊娠した女性も含まれます。ブースター接種には、どのワクチンを選んでもかまいません。あなたが最初に受けたのと同じワクチンを選ぶ必要はありません。」

つまり、CDCもACOGも、妊産婦へのブースター接種を推奨しているのです。

なお、CDCの研究報告から、妊娠中のワクチン接種によって流産、胎児死亡、先天異常などの発生頻度は増えていないことがわかっています。(文献4,5)

また、「妊婦は感染した場合の重症化・死亡リスクや、早産となるリスクが高まる」「使用できる治療薬に制限があり選択肢が少ない」といったこともぜひ知っておいてくださいね。

(2)英国

それでは、英国はどうでしょうか。

政府機関であるNHS(国民保健サービス)の見解を以下に示します。(文献6)

・NHS

「ワクチンをまだ受けていない場合は、できるだけ早く最初の2回分を接種することを推奨します。出産後まで接種を遅らせる必要はありません。また、少なくとも3か月前にCOVID-19ワクチンの2回目を接種していれば、ブースターを接種することができます。」

英国でも、やはり妊婦へのブースター接種が可能だとしていますが、積極的な推奨をしているという記載はないようです。

まず、2回の接種を完了させることが重要だという見解のようですね。

ただし、2022年になってから、妊婦への接種を積極的に呼びかける大規模なキャンペーンを政府主導で実施しています。

2021年5-10月に英国でCOVID-19の症状で入院した妊婦の96%がワクチン未接種であり、そのうち3分の1で呼吸器のサポートが必要になりました。また、5人に1人は早産でした。

こうしたデータを踏まえたものだと考えられます。

なお、前回のワクチン接種から3ヶ月空いていればブースター接種が可能という部分は、あくまで英国での見解ですのでご注意ください。

日本における妊産婦へのブースター(3回目)接種の見解は?

それでは、日本での見解はどうなっているのでしょうか。

主な公的機関として厚生労働省、専門学会(日本産科婦人科学会、日本産婦人科感染症学会など)があります。

(1)厚生労働省

専用ページで、ブースター接種についてわかりやすく記載されています。(文献7)

その中で、ブースター接種の対象は、以下を全て満たす方全員となっています。

・2回目接種を完了した日から、一定の期間が経過した方

・18歳以上の方

・日本国内での初回接種(1回目・2回目接種)又は初回接種に相当する接種が完了している方

また、「特に接種をお勧めする方」として以下が挙げられています。

・高齢者、基礎疾患を有する方などの「重症化リスクが高い方」

・重症化リスクが高い方の関係者・介助者(介護従事者など)などの「重症化リスクが高い方との接触が多い方」

・医療従事者などの「職業上の理由などによりウイルス曝露リスクが高い方」

では、妊産婦についてはどうでしょうか。

同ページの中に、こう記載されています。

妊娠中の方、授乳中の方、新型コロナウイルスに感染したことがある方にとってもワクチン接種はメリットがあるため、接種をご検討ください。

英国と同様に、接種は可能としていますが、強い推奨を示す文言はありません。

しかし、妊娠中の感染によるリスクを考慮し接種を検討してくださいと書かれており、まずはかかりつけの産婦人科で相談してみると良いでしょう。

(2)日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会からのお知らせは、前述のように2021年10月25日が最後の更新となっており、オミクロンやブースター接種に関する通知はまだ出されていません。

早期の更新が望まれます。

(3)日本産婦人科感染症学会

こちらも日本産科婦人科学会と同様に、妊産婦へのブースター接種に関する一般の方向けの見解はまだ出されていません。(文献8)

妊産婦へのブースター接種、どう考えれば良い?

ここまで、妊産婦における国内外のブースター接種に関する国内外の見解を紹介しました。

整理すると、

・米国は積極的に推奨している

・英国や日本では接種が可能としているが推奨するという文言は記載がない(ただし、英国では政府主導で妊婦への接種を促すキャンペーンを実施)

ということになります。

日本では1-2回目の接種時期を考慮すれば、まだブースター接種のタイミングに入っていない妊産婦さんも多いと思います。

ただ、まずは2回の接種をしっかりと完了することが重要で、かつ今後の感染状況等を考慮してブースター接種を検討していくことが必要になるでしょう。

日々の感染予防行動も忘れずに、このパンデミックをみんなで乗り越えていきましょう。

*本記事の内容は2022年1月16日時点で得られた情報に基づいています。日々更新される可能性があるため、なるべく下記リンク等から最新情報をご参照ください。

*2022年1月20日に一部追記をしました。

参考文献

1. 日本経済新聞.

2. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A.

3. 日本産科婦人科学会. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報.

4. CDC. COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding.

5. ACOG. Coronavirus (COVID-19), Pregnancy, and Breastfeeding: A Message for Patients.

6. NHS. Pregnancy, breastfeeding, fertility and coronavirus (COVID-19) vaccination.

7. 厚生労働省. 追加接種(3回目接種)についてのお知らせ.

8. 日本産婦人科感染症学会. インフォメーション一覧.

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士 / 医学博士

「産婦人科 x 公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事している。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。※記事は個人としての発信であり、いかなる組織の意見も代表するものではありません。

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