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今だからこそ、孫の手を!詐欺への三次元防犯が必要な時。新型コロナの蔓延で在宅率と危険度が上昇している

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

今こそ、危ないところにも手が届く、孫の手が必要

新型コロナウイルスの蔓延の影響で、高齢者が集っての防犯講座・講演は、ほぼなくなり、テレビも新型コロナ関連の番組ばかりで、詐欺への警戒が薄れつつある状況です。しかし相変わらず、被害が多発しています。

このところ目立つのが、注意喚起の「裏をとる」形での詐欺です。

サッカーでもディフェンダーの裏(背後)をつくことで、ゴールを決める確率が高まりますが、詐欺でも警戒という防御の裏をついて、詐欺のゴールを決めようとしてきます。

カードのすり替え、カードの切りこみ、カードにパンチも!

今は、キャッシュカードをだまし取る手口が主流になっています。

カードを封筒に入れさせて、「ハンコを押してください」といって、高齢者が印鑑を取りに行くその目を盗んで、偽のカードを入れた封筒とすり替える手法が横行していますが、その手口が知られると、今度は、家人の目の前でキャッシュカードにハサミで切りこみを入れて、「カードはもう使えません」と言って、カードを持ち去る手口も出てきて、被害を広げています。

ところが今度は、この手口への警戒がなされると、また新たなものが出てきした。

キャッシュカードにパンチでカードに穴をあけて、「カードはもう使えない」と思わせて持ち去る手口です。

まさに私たちの警戒の裏をついて、様々な形の詐欺を行っており、ネットで被害情報を得られない高齢者にしてみれば、巧妙化のスピードについていけない状況になっています。

それだけに、これからは三次元での防犯が必要になってきます。

これまでは、高齢者自身へ直接に「キャッシュカードを渡さない!暗証番号は教えない!」という注意を呼び掛ける「線」での防犯でした。これは一次元防犯といえます。

しかし高齢者自身だけでは、被害を防げない状況も生まれていることから、高齢の親を見守る、息子娘たちも詐欺の手口を知り、「おかしな封書が届いたら一緒に、見ようね」「このところ、あなたの口座からお金が引き出されているという嘘の電話が多いから注意して」といった、「面」としての防犯も行われています。

この傾向の広まりは、講演をしているのでよくわかります。

以前は、高齢者ばかりの講演、講座が多かったですが、ここ数年は高齢の親と一緒にくる方も多くなり、「面」としての二次元の防犯の高まりを肌で感じています。

しかし昨年より、詐欺などの防犯講座が行われないなか、裏を取るような巧妙な詐欺の手口も発生していて、詐欺被害の広がりを非常に危惧しています。それに、息子娘の働き世代となると、絶えず親を見守ることはできません。詐欺犯もわかっていて、同居している子供がいない隙に、詐欺を行うケースもよくあります。

新型コロナ影響のなか、家族三世代の防犯の必要性

そこで今、必要なのが、家族全体で守るという三次元の防犯対策です。そのキーを握っているのが、お孫さんたちだと思っています。

実際に、お孫さんたちが、被害を防いだ事例は様々にあります。

スーパーのATM行こうとした祖母に…9歳の孫「それって詐欺じゃない?」被害を未然に防ぎ警察から感謝状 (東海テレビ)

今年2月に、三重県に住む小学3年生の孫が、「保険料が戻る」という詐欺の電話を受けて、スーパーのATMに行こうとした60代の祖母を呼び止めて、「もしかして詐欺じゃない?」と呼び掛けて被害を防ぎました。

3年前にも、神奈川県の住む70代の祖母のもとに、デパートの職員を騙る人物から「クレジットカードが不正に使われている」という電話があり、それを聞いた小学5年生の女の子が「これは詐欺だよ」と大きな声をかけて詐欺を防いだ事例もあります。

電話で暗証番号答える89歳祖母を制止 19歳孫が詐欺被害防ぐ (神戸新聞)

昨年も、電話で暗証番号を伝えようとした祖母を孫の大学生が止めています。

こうした、三世代防犯は、詐欺を防ぐための要(かなめ)になってきています。

どうしても、詐欺の当事者になってしまうと、高齢者の方は、注意をしていても我を忘れてしまいがちです。

それに対して、お孫さんたちは、スマホなどを通じてネットの情報に通じていて、高齢者の方よりも最新詐欺の情報を持っており、冷静になって状況を判断できます。また、消費者教育も学校で行われていて、詐欺や悪徳商法への意識も強く持つ子供たちも多くいます。

家族間で詐欺などに気をつけようと話し合うことで、格段にその防犯態勢は高まることになります。

特に、子供たちは、家族の気持ちや気配を察することに敏感です。これはまさに、家族の異変に気づくセンサーの感度が抜群であることを意味しています。

家族と同居する人以外の一人暮らしや高齢者のみの夫婦世帯にも、息子、娘だけではなく、お孫さんたちからの電話などでの積極的な声掛けも行い、何気ない日々の会話から、詐欺の異変を感じ取れば、被害を防ぐことにつながります。

祖父母の代わりに、お孫さんたちがその杖となり、手となる。これは小さな力かもしれませんが、間違いなく、詐欺犯にとっての大きな脅威となるはずです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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