アイラヴミー、NHK“みんなのうた”「答えを出すのだ」人気を紐解く
●いまの時代こそ聴いてほしい楽曲
2020年=答えなき時代。数ヶ月先、いや数週間先も読めない現在。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で“コロナ以前〜コロナ以後”と一気に世界は変わってしまった。
テレビからは不安を煽るニュースばかりで気が滅入る毎日……。そんななか、総理大臣は星野源がオープン公開した動画とコラボして“友達と会えない。飲み会もできない 〜。”とSNSへ投稿。官房長官は定例会見で、その“いいね”数に価値を見出した。まるでSF映画のようなワンシーンだ。
しかし、音楽業界はもはや“友達うんぬんや飲み会”どころではない。2月末以降、政府の要請を受けていち早く自粛を余儀無くされた大小様々なコンサートは延期や中止となり、ライブハウス廃業のニュースが続き、音楽テレビ番組生放送やフェスの中止が発表され、ついにはメジャーメーカーのCDリリースまでも延期となりはじめ、商売道具の機材を売り、仕事を失う人も増えてきた。これまで時間をかけて築き上げてきたシステムが崩れつつあるのだ。
問題の根本へ立ち返ろう。敵はウイルスだ。重症化を抑えるワクチン、抗体の研究が急務だ。しかし、まだまだ時間がかかりそうだという。そんななか、先が見えない戦いの最前線に立つ医療従事者には頭がさがる思いだ。
音楽にできることとは何だろう。
いまの時代こそ聴いてほしい楽曲があるので紹介したい。アイラヴミーが2月にリリースした「答えを出すのだ」をご存知だろうか。NHK『みんなのうた』へ書き下ろした作品であり、今年の2月〜3月に全国放送でオンエアされ話題となったナンバーだ。
<ツイッターでの反響>
アイラヴミーとは、作詞作曲を手がけるシンガーさとうみほのを中心に、ギタリスト野中大司、ベーシスト井嶋素充が結成した3人組バンド。その最新作「答えを出すのだ」で、詞曲を手がけたさとうみほのは学生時代を回想する。
●私が私に問題を出して 私が私に答えを出すのだ
「答えを出すのだ」アイラヴミー
作詞作曲:さとうみほの 編曲:アイラヴミー/THOM HAWKE
この季節になると思うんだ もう先生なんていないって
問題を出してくれる人 正解をくれる人はもういない
ひとり歩く坂道で 戻りたくなる日もあるんだ
「頑張れ」って呟いたため息が 白く滲んだ
私が私に問題を出して 私が私に答えを出すのだ
怖くても不安でも 勇気を持ってひとりで決めなくちゃ
なりたい自分や行きたいところが あるから自分を信じて行くんだ
答えを出すたび光る 未来が大きく動き出す
※歌詞より抜粋
たゆたうビートへ物語るように想いを馳せる歌声。体温を感じるギターの音色。やわらなか音像の拡がり。答えなき時代のいま、本作が胸に突き刺さったのだ。
聴後感に残るのは、他人事ではなく自分ごと。
2月末以降、世の中の状況は一変し、歌詞が持つ意味に付加価値が生まれた。今こそ選択の権利を持つこと、声を上げること、意思を持って決定すること。もちろん、過ちを犯すことだってあるだろう。人間だもの。そんなときは再び考えて、新しい答えを自らの決断で導き出すことが大事だ。
「答えを出すのだ」は、もともと学生人気の高かったナンバー。高専塾のYouTubeチャンネルや朝日小中学生新聞でもそれぞれ取り上げられ、大学生によるCRJ-Tokyoカレッジチャートにも上位にランクインした。
さとうみほのによる言葉は、心に痛みを持ったリスナーに寄り添い勇気を与えてくれる。自分を責めがちな、怒られることが苦手な若い世代ならではの葛藤を見事に描ききっている言葉がすごい。それは、自宅待機学習で学校に通えなくなった学生、受験生からの反響も多い。入学早々に在宅を余儀無くされた新入生にも、内定を取り消された新卒生、もちろん学校を卒業した大人へも届くことだろう。
●揺れ動く心を感情を音楽のチカラで導いてくれる
あらためて、音楽にできることは何だろう。
それは“いま”の時代をあらわす音を鳴らすこと。自分の言葉を持って表現すること。アイラヴミーはそれができるアーティストだ。
「答えを出すのだ」にはそのすべてが込められている。そもそも創作活動に答えはないかもしれない。選ぶべき思想だって自由だ。楽曲から受け止める答えはリスナーそれぞれだと思う。それでいい。時代のカナリアとなり、“気づき”をいち早く伝えてくれるプロフェットのようなメッセンジャー、それがポップスターが創出する価値だと思う。
いまだステイホームな現在。「答えを出すのだ」は、揺れ動く感情を音楽のチカラで包み込んでくれる。ポップミュージックが解き放つ処方箋、ひとりでも多くの迷えるリスナーに届いて欲しいナンバーだ。そして、それぞれが輝ける未来へと通じる答えを選択することを望みたい。
アイラヴミー オフィシャルサイト