日本初! 名店ラーメンが24時間買える自動販売機が登場! 売り上げ8割減の製麺所の挑戦
「昨年春の緊急事態宣言後、度重なるキャンセル・返品により、売り上げが8割減になりました」
そう話すのは大田区にある製麺所・丸山製麺の取締役・丸山晃司さん(33)だ。
丸山製麺は昭和33年創業の製麺所で、中華麺・蒸し麺・そば・うどんなどの麺をオーダーメイドで作っている。新型コロナウイルスの影響による飲食店の休業・時短営業により、麺のオーダー数が激減。1日5〜6万玉出ていた麺が1万玉にまで減ってしまった。飲食店が厳しいことは言うまでもないが、食材の生産者をはじめとする取引業者や流通業者のダメージも甚大だ。
コロナが落ち着き、景気が戻るまで待っていたら会社が持たない。売り上げ減の大打撃を受けて、丸山製麺は素早く新たな取り組みに乗り出した。大学卒業後、ITの道を歩んできた晃司さんがそのスキルを活かして実家の製麺所の立て直しを図っている。
名店のラーメンを通販で販売
昨年4月に1回目の緊急事態宣言が出ると、すぐに通販事業を本格化した。
一昨年の11月からテストで作っていた通販サイトを急ピッチで仕上げ、麺と小袋のスープをセットにして発売した。インフルエンサーがTwitterで広めたことで火がつき始め、月に数千円だった売り上げが20万円まで伸びていく。
5月からは名店の通販ラーメンの取り扱いをスタートさせる。ラーメンイベントなどで知り合ったラーメン店に声をかけ、冷凍の具材とスープ、丸山製麺の麺をセットにして販売した。二郎系や濃厚系のラーメンが特に人気で、ネットでも話題になる。
Twitter、LINEの強化
丸山製麺の取引先は駅そばや食堂がメインだったので、SNSには力を入れていなかった。しかし、通販ラーメンを本格化することをきっかけに、TwitterとLINEを一気に強化する。
通販ラーメンを買ってくれたユーザーの投稿に「いいね」をし、リツイートしていく。ど真ん中の営業活動では大手の製麺所にはなかなか勝てないが、ネット上でユーザーとマメに繋がっていくことで少しずつファンを獲得していった。当時約1000だったTwitterのフォロワー数は現在18000超まで増え、LINEのお友達も2000を超えているという。
「直売所」のスタート
度重なるキャンセルや返品で、麺が大量に余ってしまうという問題があった。
そこで、昨年5月から毎月最終日曜日に本社前で「直売所」をスタートさせた。本来廃棄になってしまう麺をスープとセットにして販売し、地元客との接点を作っていった。初回から200人が訪れ、毎月末の恒例行事になっている。創業から60年間、BtoB(企業を相手にする商売)のみだった丸山製麺が地域と繋がるきっかけになった。
日本初! 名店の冷凍ラーメンが24時間買える自動販売機「ヌードルツアーズ」
今年3月には名店の冷凍ラーメンが買える自動販売機「ヌードルツアーズ」を開発し、丸山製麺本社前に設置した。通販で取引のある名店の冷凍ラーメンを自動販売機で買えるようにしたのだ。
「ヌードルツアーズ」の自動販売機は、サンデンホールディングス株式会社が発売しているアイスクリーム用の自動販売機を応用したもの。コンビニやスーパーマーケットに買いに行く感覚で手軽にラーメンを買えると大好評だ。
「無人で、しかも24時間買うことができて、コロナのご時世もあり大変好評です。3人家族で3つ買っていただくとおよそ3000円。ジュースの自販機に比べ客単価が非常に高いのが特徴です。設置したいという問い合わせも毎日たくさん来ております」(丸山さん)
種類も豊富なので、フードコート感覚で家族でそれぞれ好きなラーメンを選ぶことができるのも楽しい。SNSにも強く、「ヌードルツアーズ」設置後2週間でTwitterのフォロワー数が3000も増えているという。
「ずっと同じことをしていてもダメで、いつかやらなければならないことだったんだと思っています。コロナによってその時期が早まったんだという感覚です」(丸山さん)
依然として売り上げは苦しいものの、数々の新たな施策で活路を見出す丸山製麺。ニューノーマル時代に合わせて、製麺所のあり方も変わっていく。
※写真はすべて筆者による撮影