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AチームとBチームの差を埋められるかは、森保監督次第 【ウズベキスタン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:松尾/アフロスポーツ)

上々のプレーを見せて勝利したBチーム

 首位ウズベキスタンと2位日本が対戦したアジアカップのグループF最終戦。最終的に2-1で勝利を収めたことで、日本の首位通過が決定。これにより、森保ジャパンはラウンド16でグループEの2位サウジアラビアと対戦することとなった。

 まず、ウズベキスタンのスタメンは、前の試合から5人を変更。GKを含めたセンターラインを残し、サイドの選手を入れ替えて日本戦に挑んでいる。果たして彼らがどこまで勝ち進むことを目標にしているのかは定かではないが、失礼を承知で言わせてもらえば、決勝までの7試合を想定して戦っているとは思えない。

 そう考えると、2試合目でスタメン2人を入れ替え、勝ち抜けが決まったなかで迎えたこの3戦目でスタメンを5人程度の変更で済ませたことは、人数的に自然に見える。しかも最初の2試合では3枚の交代カードをすべて使っているため、敢えてウズベキスタンがこの試合でスタメンを総入れ替えする必然性は見当たらない。

 一方の森保ジャパンは、予想通りの大幅変更を行った。オマーン戦では北川が怪我の大迫に代わってスタメン出場を果たしたため、2戦目からは計10人の変更となったわけだが、実質的にはメンバーを総入れ替えして戦ったと言っていい。

 要するに、森保監督が描くベストメンバーがAチームだとすれば、このウズベキスタン戦のスタメンはBチーム。選手交代枠を残して戦った昨年10月の国内親善試合2試合(パナマ戦、ウルグアイ戦)を想起させる起用法だが、あれはあくまでも親善試合の2連戦。優勝を目指している今回のアジアカップは、決勝を含めると7連戦になる。

 このままいくと、おそらく次のサウジアラビア戦はAチームで戦うことが濃厚と見られ、今後日本は残り4試合をAチームで戦い抜くことが予想される。確かにこの試合で主力を休養させることはできたが、ラウンド16を勝ち上がったとしても、準決勝あたりは相当に厳しくなる。特にここからは延長戦もあるため、そう考えるのが自然だ。

 とりわけ気になるのは、AチームとBチームのメンバーをミックスさせて戦うことができないまま、一発勝負に挑まなければならなくなったことだ。

 世代間の融合は、森保監督がよく口にするフレーズだが、ここまでAチームとBチームの融合はない。スタメン編成はもちろん、昨年11月のキルギス戦の終盤約30分以外に、両チームの選手をバランスよくミックスしたことがないのだ。負傷者、出場停止など、代えの効かない選手を失ったときの準備としては、コンビネーションも含めて大きな不安を残したままとなっている。

 結局、この試合の日本の最大のテーマは、勝利して首位通過を目指すことよりも、主力の休養に重きを置いていたと見ていい。裏を返せば、最初の2試合で交代枠を3枚しか使わなかったため、長丁場を乗り切るためにはそうせざるを得なかったと言うこともできる。森保ジャパンの台所事情は、思っている以上に苦しそうだ。

 果たして、お互いがどこまで勝とうとしていたのか微妙な試合は、前半40分にウズベキスタンが先制した。しかしその直後の43分に武藤が同点ゴールを決めたことで、後半は勢いのついた日本のペースで試合が進むことになった。

 特に効果的に見えたのが、伊東のスピード溢れる縦への突破だった。そこが、過去2試合でAチームが見せた戦い方とは大きく違っていた点だった。サイドを広く使って、深いところからクロスを入れる。Aチームでは主にサイドバックがその役割を担っていたが、Bチームでは右ウイングの伊東がそれを担ったことで、よりシンプルでスピーディーな攻撃が成立した。

 また後半は、それによって青山から中央への効果的な縦パスもよく入った。ボールを収めたのは主に武藤。ゴールを決めたことでリズムをつかんだのか、プレーに硬さがなくなった武藤は、ライン間で正確にボールを受けて相手を引き寄せ、またそれによって日本はサイドに生まれたスペースを有効に使うことができていた。

 中央に偏ってしまうAチームと比べ、サイドを有効に使えているのがBチーム。国内の親善試合でも見て取れた傾向だが、両チームが異なるスタイルのサッカーを見せている以上、森保監督が意図的にそれを指導しているとは思えない。「臨機応変」、「柔軟性」、「対応力」という森保監督お得意のフレーズにあてはまるのは、現状、どちらかと言えば皮肉にもBチームだと言える。

 残念なのは、森保監督がAチームの11人で決勝トーナメントを戦い抜こうとしていることだ。おそらく、この試合で上々の出来だった伊東や武藤は攻撃的に出るときのジョーカー役にとどまることになるだろう。

 せっかくBチームが逆転して気運も上がっているにもかかわらず、次からはAチームにバトンタッチ。それだけで、この試合の収穫を終わらせてしまうのが惜しいところだ。

 動きは遅かったものの、この試合では3枚の交代カードを終盤に使い切って逃げ切りに成功した森保監督。しかし、もしこれがAチームにBチームの選手を投入するパターンの戦術的交代を求められたとき、果たして同じようなベンチワークを見せることができるのか。

 指揮官のAチームへの信頼度と、Bチームへの信頼度の差を埋められるかは、もはや選手ではなく、森保監督自身の考え次第となってきた。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミット・ダニエル=5.5点

前半40分の失点シーンで、ポジショニングが悪くニアを射抜かれてしまったのがマイナスポイント。それ以外は、後半のビッグセーブも含めて上々のパフォーマンスだった。

【右SB】室屋成=6.5点

序盤は不安定さが目立っていたが、前半43分に武藤のゴールをアシストして以降はパフォーマンスが上がった。後半58分の塩谷の逆転ゴールも、室屋のフィードが起点だった。

【右CB】三浦弦太=5.5点

失点シーンも含めて、立ち上がりから槙野との距離間、連携がいまひとつだった。全体的に安全第一を心がけたプレーが目立ち、もう少し積極的なフィードがあってもよかった。

【左CB】槙野智章=5.0点

ショムロドフのスピードに完敗して裏を取られ、失点を献上。守備面も不安定で、ビルドアップ時の工夫も見られず。トルクメニスタン戦に続いて厳しい内容に終わった。

【左SB】佐々木翔=5.5点

守備に重きを置くプレーに徹したのか、乾との絡みも含めて攻撃面における貢献度が低すぎた。ただ、1点リードした後の試合終盤にはゴール前で持ち前の守備力を発揮した。

【右ボランチ】青山敏弘=5.5点

後半は効果的な縦パスを前線につけることができたが、ミスが多かった前半のパフォーマンスはマイナスポイント。全体的にトップフォームの出来とはほど遠い印象は否めない。

【左ボランチ】塩谷司=6.5点

慣れないボランチでユーティリティ性を発揮。豪快なミドルで逆転勝利の立役者となった。逆に守備面では不安定さがあり、失点場面も含めてポジショニングや判断に課題を残した。

【右ウイング】伊東純也=6.5点

スピードを生かしたドリブルで何度も相手を脅かした。シュートやクロスなど、プレーの精度は改善の余地があるものの、今後はスーパーサブとしてチームの武器となるだろう。

【トップ下】北川航也(90+3分途中交代)=5.0点

後半82分の決定機のシュートミスは痛恨。試合を重ねるごとに内容は少しずつ上がってはいるが、武藤とのコンビネーションも含めて周りとの連動性の部分を磨く必要がある。

【左ウイング】乾貴士(81分途中交代)=5.0点

気持ちが空回りしてしまった感は否めない。立ち上がりから積極的にボールを受けて起点になろうとしたが、結論の見えないプレーが多かった。後半は疲労が出て原口と交代した。

【CF】武藤嘉紀(85分途中交代)=6.5点

失点直後に値千金の同点ゴールを決めた。それまでは決して内容はよくなかったが、後半は前線でボールを収めるシーンが急激に増えた。今後は途中出場の機会が増えそうだ。

【MF】原口元気(81分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。1点リードした状態の終盤に、乾と代わって左サイドでプレー。与えられた守備の役割をしっかりとこなしていた。

【MF】遠藤航(85分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。逃げ切り策として、武藤に代わって出場。ボランチでプレーし、代わりに青山が1列前に移動した。

【DF】冨安健洋(90+3分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。相手のセットプレーのタイミングで、北川に代わって出場。空中戦対策も含めた守備強化の役割を担った。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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