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仙台で14年ぶりの“遅い満開” 原因は暖冬?

小杉浩史気象予報士 / ウェザーマップ所属
満開の発表された仙台管区気象台のソメイヨシノ(撮影:乙藤亮平気象予報士)

きょう9日(火)、仙台管区気象台からソメイヨシノの満開の発表がありました。昨年に比べると9日遅くなったものの平年に比べると4日早い満開です。では何が「14年ぶりの遅い満開」なのかと言うと、開花から満開までのペースが14年ぶりの遅さなのです。

仙台管区気象台の標本木の推移 気温が高い日が続いたにもかかわらず咲き進むペースは遅かった(筆者撮影)
仙台管区気象台の標本木の推移 気温が高い日が続いたにもかかわらず咲き進むペースは遅かった(筆者撮影)

仙台管区気象台の標本木は今月2日(火)に開花が発表されています。平年であれば開花から満開までは5日、早い年ではわずか3日程で、まさに「3日見ぬ間の桜かな」という年もあるのですが、今年は開花発表後もなかなか咲き進みませんでした。私自身、何度も足を運びましたが、標本木の上の方のつぼみはいつまでたっても花開かず、満開が発表されるまでに1週間を要しました。

過去にも開花から満開までに1週間以上かかったことはありますが、直近であったのは2010年なので“14年ぶりの遅さ”ということになります。しかも前回の2010年は、開花直後に強い寒気が流れ込んできて「寒の戻り」があったために開花ペースが遅れたのですが、今年はこの1週間気温の高い状態がずっと続いていました。

仙台の過去1週間の気温 平年より気温の高い状態が続いたにもかかわらず桜が咲き進むのは遅かった(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)
仙台の過去1週間の気温 平年より気温の高い状態が続いたにもかかわらず桜が咲き進むのは遅かった(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)

それにもかかわらず咲き進むのに時間を要したのは、暖冬が原因の可能性があります。

寒さが足りずに“芽覚め”が悪かった?

ソメイヨシノは前年の秋に花芽を作った後、一度休眠状態に入ります。その後、冬の寒さにさらされることで休眠打破が起こり、春の暖かさを受けてつぼみが膨らんでいきます。

約1か月前のソメイヨシノ標本木の花芽(先月8日 筆者撮影)
約1か月前のソメイヨシノ標本木の花芽(先月8日 筆者撮影)

ただ今シーズンの東北地方は記録的暖冬でした。それゆえ休眠打破がうまくいかず、1本の木の中でもつぼみによって成長具合にバラつきが出た可能性があります。既に鹿児島の標本木などは「一斉に満開!」にはならずに「咲いては散って、咲いては散って…」を繰り返す年も出てきており、もしかしたら今年の仙台においても同様の事態が起こったのかもしれません。

2023年12月~2月の気温平年差 仙台などでは過去1番の暖冬になった(気象庁HPより)
2023年12月~2月の気温平年差 仙台などでは過去1番の暖冬になった(気象庁HPより)

標本木の大きさの影響も?

ただ同じ東北地方であっても、お隣の福島では開花から4日で満開になっていますので暖冬だけが原因とも言い切れません。仙台市内でも、標本木より先に満開を迎えていたソメイヨシノの木もいくつも見られました。

7日(日)仙台市青葉区花京院のソメイヨシノ 気象台の標本木に先んじて満開になっていた(筆者撮影)
7日(日)仙台市青葉区花京院のソメイヨシノ 気象台の標本木に先んじて満開になっていた(筆者撮影)

もう一つ満開までに時間がかかった原因として考えられるのは木の大きさです。仙台管区気象台の標本木は既に樹齢が70年くらいになっているそうです。もちろんまだまだ現役で花を咲かせているのですが、木の高さは10m近くあるのではないかという立派な木になっています。

開花から3日後の標本木 後ろの人や車と比較すると大きさが分かる(筆者撮影)
開花から3日後の標本木 後ろの人や車と比較すると大きさが分かる(筆者撮影)

高さが変われば気温が変わります。地表に近い下の方の枝は地面付近の熱をより多く受け取るので咲き進むのが早く、上の方の枝はその反対でなかなか生長しなかったという可能性があります。暖冬でつぼみの芽覚めにバラツキが出たことに加えて、木の大きさがゆえにさらに生長に差が出て、開花から満開まで日数を要したのかもしれません。

開花から5日後の標本木 下の方の花は開ききっているのに対して上の方のつぼみはまだ開いていない(7日 筆者撮影)
開花から5日後の標本木 下の方の花は開ききっているのに対して上の方のつぼみはまだ開いていない(7日 筆者撮影)

次世代の標本木も

ちなみに仙台管区気象台では、現在の標本木が高齢であることを鑑み、次世代の標本木を同じ敷地内で育てています。まだ表皮も若々しい若木ではありますが、こちらは現在の標本木より一足先に満開を迎えていました。いずれは標本木の世代交代が起こるのかもしれません。

次世代のソメイヨシノ標本木(7日 筆者撮影)
次世代のソメイヨシノ標本木(7日 筆者撮影)

気象予報士 / ウェザーマップ所属

東京都出身。大学卒業後、会社員やフリーターなどを経て、2012年に気象予報士を取得。2015年からミヤギテレビにて気象キャスターとして出演中。趣味はバイクに乗ること、目標は「宮城の天気と言えばこの人!」と言われること。南東北の北東から、天気の怖さと面白さをお伝えします。

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