【ホンダ「REBEL(レブル)250/500」試乗記】 “ちょうどいい“を目指した若者向けクルーザー
先日開催されたホンダ「REBEL250/500」国内メディア試乗会から、モーターサイクルジャーナリストでWebikeニュース編集長、ケニー佐川のインプレッションを動画付きでお伝えしたい。
「ちょうどいい」を目指し2つの排気量を設定
レブルは「モーターサイクルのある生活の楽しみ、喜びを、もっと多くのお客様へ」を目的に、主に北米において「ジェネレーションY」世代に向けて開発した新型クルーザーモデルである。
ちなみにジェネレーションYとは米国において80年代~90年代に生まれたエコブーマーとも呼ばれる若い世代のこと。開発においては、若者層の感性を刺激するクールなスタイリングと気軽に楽しめるサイズ感で「ちょうどいい」を目指したという。
また、グローバルモデルとして世界各地のニーズに対応できるよう、共通のプラットフォームに250/300/500ccの異なる排気量のエンジンを用意することで、体格や経験、様々な使い勝手に対応。国内では250ccと500ccの2つのラインとしてリリースされる。
カスタム前提のシンプルかつローなデザイン
デザインコンセプトは「SIMPLE」&「RAW」(未加工の素材)とし、特徴的なフューエルタンクやくびれのあるナロースタイルのフレームボディ、ワイド&ファットサイズの前後タイヤ、ブラックアウトした各部パーツの採用により、タフでクールなイメージとともに、自由な発想でカスタムして楽しめるスタイルとしている。
こうしたデザインは世界的なムーブメントとなっている“ボバー“の流れを汲むもので、レブルもその旬なイメージを取り入れている。
エンジンはレブル250が単気筒、レブル500が並列2気筒だが、ともに低回転域でのトルクフルな扱いやすさ、高回転まで気持ち良く伸びる出力特性を実現。
エンジン内部のギヤの仕様やマフラー内部構造を最適化することで、あえてメカニカルノイズを強調するとともに、心地よいパルス感を演出するなど、乗り味にもこだわっている点もポイントだ。
米国で人気のモデルが31年ぶりの「フルチェンジ!?」
レブルというネーミングには懐かしい響きを感じる人も多いはずだ。同名の旧モデル、レブル250は空冷2気筒エンジンを搭載する軽快なアメリカンモデルとして85年にデビュー。
国内では20年近く前に生産終了となっているが、なんと米国では2016年に新型の300cc版が発売されるまで、現役モデルとして活躍していた。つまりホンダとしては今回31年ぶりのフルモデルチェンジとなるわけだ。
ホンダの開発者の話では、米国でレブルは免許取得者のための教習車両としても利用されるなど知名度も高く、若者を中心に高い人気を誇るモデルとのこと。
米国でモーターサイクルと言えば、ハーレーダビットソンの独壇場と思いきや、ストップ&ゴーの多い混雑した都市部では、むしろ軽快なレブルのようなモデルが好まれるそうだ。
見た目からして親しみやすさ満点
▲レブル250
▲レブル500
第一印象は“気立ての良いボバー”といった感じ。赤や黄色のピュアな色使いや、いわゆるアメリカンクルーザーとしては格段にスリムでコンパクトなサイズ感からも、初心者ユーザーに寄り添った扱いやすさがにじみ出ている。
そして、250か500かは、ちょっと見ただけではまず見分けがつかない。というか車体に関しては、外装はもちろんフレームから足まわり、タイヤサイズまでまったく同じ。
エンジン部分の隙間の少なく、みっちり詰まっているほうが500とかろうじて分かるぐらいだ。
元気のいいエンジンで軽快に走るレブル250
まずはレブル250から試乗してみた。軽くてコンパクトで、ひと言で乗りやすい。690mmのシート高は足着きも抜群で、これなら小柄な女性でも何のストレスもなく乗りこなせるはずだ。
250のエンジンはCBR250Rの水冷単気筒DOHC4バルブがベースということで、シングルらしい細かいパルス感を伴いながら高回転まで吹け上がる元気の良さが魅力。
吸排気系の見直しにより低速域のトルクを立ち上げるなど、より普段使いに適したアジャストがなされているが、基本的にはスポーティな味付けと言っていいだろう。
回しても楽しい稀有な“アメリカン”である。
タイトコーナーの切り返しや交差点の右左折など、何気ない動作の中にも250ならではのヒラリ感がある。
前後ともにディスクタイプを備えるブレーキも軽量な車体と相まって良く効くし、正立フォークとツインショックという伝統的な前後サスペンションも適度なストローク感があり安心できる設定だ。
ハンドル位置はけっこう高く遠めにセットされているため、低いシートと合わせると腕が水平に伸びる独特のフォームになるのだが、それ以外は普通のネイキッドモデルのような感覚で自在に操れるはずだ。
重厚感のある走りとサウンドが楽しめるレブル500
対するレブル500のエンジンは、CBR500シリーズがベースの水冷並列2気筒DOHC4バルブで、レブルに見合った出力特性とするために、吸排気系のみならず吸気側のバルブタイミングまで見直され、低中速域でのトルクフルな扱いやすさを高めているのが特徴。
250同様サウンドにもこだわり、あえてプライマリーギヤの打音を残すことで、迫力ある排気音とともに独特のメカノイズもスパイスとして加味されている。
走り出してみると、排気量も倍近く(471cc)あるのでトルクの太さがまず違う。発進加速での速度のノリやスロットルを開けたときの弾け方はやはり500ならでは。
明らかに図太く低い排気音と一層高鳴るメカノイズなど、乗り味にも重厚感がある。
実際のところ、車重も250に比べて20kg増量している。しかもその大部分がエンジン単体によるものなので、低い重心位置とも相まって、いい意味でドッシリとした安定感がある。
新型レブルはエンジンを剛体の一部として利用する構造のため、特に500ではエンジンハンガーにも相応の強度を持たせているらしく、ハンドリングにもしっかりとした剛性感が感じられる。
タイヤサイズは250と共通の前後16インチで、フロント130/リヤ150という小径かつワイドな設定なのだが、バンクするに従ってタイヤの接地点がずれながら路面を「ゴロッ」と転がっていく独特の旋回フィールが、車重と車体剛性によってより明確に感じられる気がするのも500のほうだ。
スラント角でクセのないハンドリングを実現
新型レブルはディメンションにもひと工夫がある。アメリカンクルーザーらしい優雅なスタイルを演出するため、フォーク角は30度と適度に寝かしてあるが、スラント角をつけることで実際のキャスター角は28度に抑えてある。
簡単にいうと、ステアリング軸とフォークの角度を意図的にずらすことで、トレール量を最適化し、クセのないハンドリングを実現しているのだ。
実際のところ、フォークが寝たモデルにありがちな極低速でのハンドルの切れ込みなどがないため、Uターンなども普通にやりやすいことは、軽量な車体とともに大きなメリットだろう。
使い勝手のレブル250、所有感ではレブル500
レブルの250と500だが、日本では免許による区分などはあるが、総じて馴染みやすく、誰でもすぐに乗りこなせる懐の広いモデルだった。
それでいて、それぞれに明確な個性があり、ユーザーの趣味嗜好に寄り添ったモデルと言える。
街乗りも含めて普段の足ととして多目的に使いこなしたい人は250、ロングツーリングも視野に入れた乗り味や所有感を求めたいなら500をおすすめしたい。