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「娘がターボ癌で治療費が500万円かかる」反ワクチン界隈を狙った募金詐欺が発生?

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
問題の投稿。現在はアカウント削除済み。Twitterより。筆者キャプチャ

 「中3の娘に新型コロナウイルスのワクチンを打った結果、ターボ癌なる肝臓癌になり、肝臓移植手術に最低でも500万円かかる」と訴えるTwitterアカウントが現れ、募金詐欺ではないかと騒ぎになっています。

新規アカウントが「娘がワクチンのせいで体調不良→癌だった」と訴え

 問題のTwitterアカウントは2022年11月に作られたばかりの新規アカウントで、11月20日に「中3の娘がワクチンを打ってから学校に行けなくなりました」と突如として訴え始めました。

 続けて「打ったのは4回目のオミクロン対応型ワクチン」、「(娘は)体にしびれがあるらしくうまく歩けない」、「イベルメクチンってやつを買ってみます」、「重曹とクエン酸は買ってきたから、今から娘に飲ませてみる」などなど、反ワクチン界隈が喜ぶようなツイートを投稿。

 そして最初の投稿から8日後の11月27日からは「病院で診断したところ、肝臓癌だった。ターボ癌ってやつらしく、進行が早い」、「肝臓移植に最低でも500万」、「高額療養費制度を使って500万円」と話は進行し、主に反ワクチン界隈で「だからワクチンは危険だ!」と話題となりました。

謎の病気「ターボ癌」トレンド入り

トレンド入りした「ターボ癌」。Twitterより。筆者キャプチャ
トレンド入りした「ターボ癌」。Twitterより。筆者キャプチャ

 ここまでなら反ワクチン界隈だけの話ですが、「ターボ癌」という謎の病気に対して医師系アカウントから「聞いたことがない」とツッコミが多発。

 そして12月8日、「ターボ癌」のキーワードがTwitterでトレンド入りし、問題のアカウントが「PayPayを送って支援してくれた人、ありがとう」とも投稿していたことから「反ワクチン界隈を狙った募金詐欺か」と炎上しました。

 結果として「ターボ癌」を訴えていた人物はアカウントを削除し、いまは実際どういうことだったのか全然わからないというのが現状です。

「ターボ癌」は反ワクチン界隈によるデマの病気

 ちなみに今回の「ターボ癌」は反ワクチン界隈で話題になっている病気というかデマで、ワクチン接種後から異常に進行の早い癌が見つかる(という根拠のない話)→「これはターボ癌だ!」という考えから生まれているようです。

 進行が早いという理由から「ターボチャージャー」の「ターボ」を持ってきて名付けたのだと思われますが、「turbo」はラテン語で「竜巻」、「渦」といった意味なので早さは全然関係ありません。

 これだけで少なくとも医師が作った言葉ではないことが窺えます。

高額療養費制度の利用で500万円請求だと治療費1億5千万円

 また、もうひとつの「高額療養費制度を利用して治療費が500万円かかる」というのもおかしな話です。

 高額療養費制度を利用した場合、自己負担限度額以上の支払いは免除されるのですが、株式会社カカクコムが提供しているシミュレーターを利用すると自己負担限度額が500万円を超えるには、保険診療の費用のみで1億5千万円ほどの支払いが必要です。

価格.comのシミュレーターによる計算。ざっくり1億5千万円の医療費。筆者キャプチャ
価格.comのシミュレーターによる計算。ざっくり1億5千万円の医療費。筆者キャプチャ

 おそらくですが、これは「肝臓移植 費用」で検索してトップに出てくる日本移植学会の案内ページ「肝移植にはどのくらい費用がかかりますか?」に書かれている「支払額は500万円程度になります」をそのまま持ってきたものだと思われます。

肝移植にはどのくらい費用がかかりますか?

一般的に、3割負担の場合、支払額は500万円程度になります。

移植の費用|肝臓|臓器移植Q&A|一般の方|一般社団法人 日本移植学会

 実際にはこの請求に対して高額療養費制度を利用でき、その場合の支払いは57,600円~410,847円です(支払額は年収によって異なります)。

SNSでPayPayの募金を集める行為は規約違反

 最後に、今回はPayPayでQRコードが“送られてきた”という話なので若干違いますが、SNSなどにPayPayの送金受け取り用QRコードを公開して募金や投げ銭を集める行為はPayPayでは禁止されています。

 こうした募金の呼びかけを見た際は注意してください。

募金詐欺かどうかは結局のところわからない

 とまあここまでいろいろと書きましたが、結局のところ、募金詐欺かどうかは不明です。

 問題のアカウントは反ワクチン界隈で話題になることを狙っているとは思うのですが、確認できるかぎりでは今回の事例では話題に出しただけで自身のPayPayの受け取り用QRコードは(まだ)公開していません。

 また、高額療養費制度についても単純に勘違いだった可能性もありますし、「ターボ癌」については医者に診断されたわけではなく「俺がそう思っただけ」ともあります。

 この件をどう取り扱えば良いのか難しいところですが、新規アカウントがとんでもないことを言い出したときはまず最初に“釣り”じゃないかどうかを疑い、情報を鵜呑みにしないようにしましょう。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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