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『キングオブコント2024』で「野球ネタ」が相次いで撃沈、優勝ネタは「ジュビロ磐田のサポーター」

田辺ユウキ芸能ライター
優勝したラブレターズ(出典:『キングオブコント2024』公式サイトより)

ラブレターズ(塚本直毅、溜口佑太朗)の優勝で幕を閉じた、コント師のナンバーワンを決めるお笑い賞レース『キングオブコント2024』の決勝(10月12日開催/TBS系)。

そんな『キングオブコント2024』で目立ったのが、「野球ネタ」の重複だった。

ファイヤーサンダー、ニッポンの社長、cacaoが「野球ネタ」をチョイス

10組が争ったファーストステージでは、6組目に登場のニッポンの社長と、8組目のcacaoがどちらも高校野球部を舞台にしたコントを披露。ニッポンの社長は、プレーは上手いが声が小さい1年生部員にいらだつ監督が、その部員をバットで殴りつけたり、ベンチに投げつけたりするネタだった。使用したバットやベンチが次々と破壊されていく展開に、審査員の小峠英二は「椅子とかが壊れていくのがおもしろい」と高評価。一方、cacaoは部員数が少ないためグラウンドが使用できず、部室のなかで練習を積み重ねる野球部を演じた。室内の窓ガラスが割れたりしないように集中して練習することで、メキメキとプレーが上達するというものだった。ただ、ニッポンの社長、cacaoはどちらも468点(7位)でファーストステージ敗退した。

ファーストステージの上位3組が進出したファイナルステージでは、ファイヤーサンダーが「野球ネタ」で勝負した。ニッポンの社長、cacaoと同様、物語の舞台は高校野球部。甲子園を目指す弱小チームと、その頑張りをからかう生徒の不思議な関係を描いたネタだった。ファイヤーサンダーは、ファーストステージではロングコートダディ、ラブレターズと1点差ながら1位通過を果たした。しかしこの「野球ネタ」でまさかの失速を喫し、最終順位は3位となった。

優勝したラブレターズはファイナルステージで、外国人風男性が海でナンパした女性の本性に翻弄されるネタを披露した。その女性は熱狂的なジュビロ磐田のサポーターで、チームの勝利を願って坊主にしているほど。

ラブレターズのサッカーを織り込んだ内容が、ファイヤーサンダーの「野球ネタ」を上回ったのがなんとも皮肉的である。

2020年大会は「音楽ネタ」が多かった

『キングオブコント2024』で披露された合計13本のネタのなかで、3本の“野球ネタかぶり”があった。

お笑いの賞レース出場者や、賞レース経験者に取材したとき、よく聞く話が「できれば“ネタかぶり”はしたくない」ということ。そのため、大会前にはライバルがどんなネタをするのか探りを入れて、ネタがかぶらないようにすることも。“ネタかぶり”を避ける理由はいくつかあるが、やはり1つの大会に同じような衣装、キャラクター、物語の舞台が出てくると新鮮味にかけてしまうからだろう。

お笑いの賞レースではたびたび、そういった“ネタかぶり”の現象が起きる。顕著だったのが『キングオブコント2020』だ。同大会のファーストステージでは、ジャルジャル、ニッポンの社長、ニューヨークが「音楽ネタ」でかぶった。このときはジャルジャルがファイナルステージへ進出し、優勝した。ちなみに前年の同大会では、どぶろっくが「音楽ネタ」で優勝を飾っていた。

そういえば『キングオブコント2023』では、優勝したサルゴリラがファイナルステージで、野球部を題材にしたネタを披露して栄冠に輝いた。そして今回は「野球ネタ」が3本。高いレベルを誇るコント師が集まって自信のネタを見せるので、前年優勝者のネタとの因果関係はほぼないと考えられる。それでも偶然で片付けるには出来過ぎでもある。それだけ「音楽」も「野球」も私たちに馴染みが深いものであり、コントの題材としても使いやすいのだろう。

ファイヤーサンダー、ファイナルステージの「野球ネタ」は不利だった?

ただ今回、ファイヤーサンダーがファイナルステージで「野球ネタ」を持ってきたことは、やや不利に働いたようにも思えた。と言うのも、前出のニッポンの社長、cacaoの「野球ネタ」があまりにも強烈だったからだ。2組の「野球ネタ」の破壊力に比べると、ファイヤーサンダーのネタはおもしろかったものの、どうしても印象が弱く映った。さらにファイヤーサンダーはネタ終わりに「審査員さんの野球嫌いが大丈夫かな」と、ニッポンの社長、cacaoが「野球ネタ」で下位に沈んだことを引き合いに出して危惧。その言葉が現実になったのか、点数を伸ばせなかった。この日に限っては、審査員5名に「野球ネタ」は合わなかったのか、もしくはニッポンの社長、cacaoの「野球ネタ」の印象が多少影響したのかもしれない。

お笑いファンはご存知のことだが、『キングオブコント』の決勝はあらかじめ申告したネタを出番直前に変えることはできない。『M-1』などの漫才の賞レースであれば、“かぶり”があれば臨機応変にネタを変えることも可能だ。しかし『キングオブコント』は、セットが組まれたり、小道具が用意されたり、準備が進められるため変更は不可能なのだ。そのため“ネタかぶり”が起きやすい大会でもある。

もちろん、ストーリー展開や笑わせ方はいずれもまったく違うので、“ネタかぶり”があってもおもしろければ勝ち抜ける。それでも斬新さや意外性も勝敗を分けることを考えると、やはり題材的に「誰もやっていないもの」「見慣れていないもの」で勝負するに越したことはない。

今回の“野球ネタかぶり”を見て、あらためて『キングオブコント』の難しさが感じられた。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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