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中野麟太朗、アジアパシフィックアマ優勝ならず悔しい3位も大きな収穫、「すっきりしてきた」 #ゴルフ

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権は10月3日から6日の4日間、太平洋クラブ御殿場コースで開催され、昨年の日本アマ覇者で早稲田大学3年生の中野麟太朗は第2ラウンドを終えて単独首位へ浮上。松山英樹、金谷拓実、中島啓太に続く4人目のチャンピオン誕生に日本のゴルフファンの期待が膨らんだ。

悪天候による中断と日没サスペンデッドが続く不規則進行の中、中野は必死の粘りを見せていたが、最終日の朝にプレーした第3ラウンドを終えた時点では、首位を走る中国のウェニー・ディンから2打差の3位タイへ後退。粘ってはいたものの、流れは悪くなりかけていた。

最終ラウンドでも前半に2ボギーを先行させ、首位との差は6打まで広がった。

だが、後半は10番から3連続バーディー、15番でもバーディーを奪い、首位に2打差まで詰め寄って、逆転優勝の可能性に迫った。

しかし、中野の16番、17番はパーどまり。一方で、首位を走るディンは17番でバーディーを奪い、中野との差は3打差へ広がった。

最終ホールの18番(パー5)。わずかな望みにかけ、「やるしかない」と意を決した中野は、前下がりで左下がりの複雑な傾斜地から2オンを狙った。池越えとなったそのショットは、出だしから低弾道で、グリーンをヒットしたとしても、まず止まらないかに見えていた。

しかし、「思った以上に止まったのには驚きました」。

グリーン際から拍手が沸き上がった圧巻のセカンドショットには中野の意地とプライド、そして勇気とやる気が漲っていたが、イーグルパットは決まらず、バーディー・フィニッシュ。中野は通算10アンダー、単独3位で4日間を終えた。

最終ホールをきっちりパーで収めたディンが通算12アンダーで優勝。1打差の通算11アンダーで回った中国のズィギン・ゾウが単独2位となった。

今大会は、優勝者に来年のマスターズと全英オープンの出場権が授けられる。言い方を変えれば、出場選手全員が優勝だけを狙っていたと言っても過言ではなく、もちろん中野も今大会で優勝することを「2024年の目標」に掲げていた。

単独3位は立派な成績だが、優勝できなかったことは悔しい結果だった。しかし、ホールアウトから小1時間が経過したころには、「何か、すっきりしてきた」と胸の内を明かした。

今年は日本の男子ツアー(JGTO)の大会も含め、「本当にサスペンデッドが多かったので、そこは、ちょっと慣れたのかな」。

そして、もう1つ。中野は今大会で感じ取った大きな収穫として「海外の選手たちがいる場所でも、ビビらなくなったと感じたこと」を掲げた。

昨年も今年もニュージーランドに自主留学し、今年はニュージーランドオープンに自力出場も果たした。さらに今夏には米国のアマチュア界のビッグ大会であるウエスタン・アマチュアや全米アマチュアにも挑み、「外国人が一緒でも回りやすくなって、気持ちも楽になった」。

そして、同組で回って優勝したディンは「さすが、世界アマチュアランキングでトップ5に入る選手だけのことはあった」と潔く勝者を讃え、「自分はまだまだ。こういう場所に来ないとわからないことです」と謙虚に振り返った。

自分の立ち位置、そして自分が進んでいる道の方向性を確認できたことは、中野にとって何よりの大きな収穫だった。

「海外」をより一層意識したと思ったところで、大会側から嬉しいサプライズがあった。優勝ではなくても、3位までには「来年の全英アマ出場権をもらいました」と嬉しそうに明かした。

「何か、すっきりしてきて、来週は日本オープンだなあって感じです」

明るく潔く、謙虚なグッドルーザー。そんな中野麟太朗への期待は、これから、ますます膨らんでくる。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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