【EXILE ATSUSHI+AI】時代性を持ちながらも“大人でも聴けるヒット曲”とは?
日本のポップミュージックの新人アーティストのデビュー法則に疑問を感じていた。まず第一に年齢を気にし、最低でも22歳以下という若さを重視する業界慣習の不思議。その枠から飛び出る事を恐れるレコード会社の新人発掘チーム。しかも、ここ数年のデビュー・アーティストを見ていると、どうしても短期目標で考えられターゲットを絞られた、奇をてらった作品が多いことが気になった。もちろん、リスナー嗜好が細分化した現代と言われているのでフック重視の作品展開は仕方ない面もあると思うが、本当にそうなのだろうか?
時代を代表するヒット曲が生まれづらい昨今。年齢だけでなく、“大人でも聴けるヒット曲”を生み出す事が、いまの音楽シーンにとって重要なのではと思ったのだ。理想は、“大人でも聴けるヒット曲”が、若い層も巻き込んで広がっていく事と仮定したい。結果的に、シーンの底上げとなり、音楽好きを増やす事につながれば音楽業界にとってプラスとなるだろう。その逆は、なかなか難しいのでは? ここ数年のシーンを見渡しているとそんなことを思ったのである。
イギリスの音楽シーンは、年齢が若くとも定期的に大人でも聴ける楽曲を歌うアーティストが誕生し、世界的なヒットを生み出している。グラミー賞を席巻した、レトロ・ポップなソウル系歌姫、エイミー・ワインハウスやアデル、サム・スミスといった歌心あるアーティストの存在。
そんな時にふと耳に入ってきたのがEXILE ATSUSHI+AIによるコラボレーション楽曲「Be Brave」だった。これまでロックやダンスミュージック好きな筆者としては、EXILE ATSUSHIのソロ作品にはまったく興味がなかったのだが(失礼)、本作は、ゴスペル風なエモーショナルさで、まさに世代を越えて語り継がれる歌心を感じるナンバーだと感じたのだ。
しかも、7年ぶりのコラボとなった、子供が生まれたばかりというAIとの共演が良い相乗効果を生み出している。歌詞に描かれている命の尊さや愛の力、勇気があれば道が開けるといったシンプルなメッセージから伝わる「Be Brave」という楽曲の深み。不安定な時代だからこそより響くメッセージ性が持つ音楽のチカラ。
EXILE 本体で8月19日にリリースされた「24 karats GOLD SOU」というバキバキのダンスミュージックをリリースしているなか、AIとの歌心あるデュエットというソロとしての良い意味でのギャップ感にも魅力を感じた。
カップリングに収録された「So Special-Acoustic Ver.-」も、AIとEXILE ATSUSHによる歌声が溶け合う疾走感を感じるせつなポップなバラードも秀逸だ。幅広い世代の心を揺さぶる、時代性を持ちながらもオーセンティックなセンスある“大人でも聴けるヒット曲”という存在に、今後も注目していきたい。