現場到着まで8分30秒、病院収容まで39分18秒…救急車による傷病者搬送の現状(2014年)
需要増加、遅滞が進む救急搬送
先日総務省消防庁から発表された2014年版消防白書によると、2013年中において119番通報を受けてから対象患者を病院に搬送するまでの全国平均時間は8分30秒、病院収容まで合わせると39分18秒であることが明らかになった。過去のデータも含めた、「救急自動車による現場到着時間平均と病院収納時間平均」の推移は次の通りとなる。
「現場到着時間」とは通報を受けてから現場に着くまで、「病院収容時間」とは通報を受けてから現場に到着し、対象患者を収容して病院に収容するまでの時間。いずれの時間も年々増加の傾向にある。
もっとも「病院収容時間」には「現場到着時間」も含まれることから、今グラフでは違いが今一つ分かりにくい。そこで「現場到着時間」と、「現場到着後・病院収容までの時間」を逆算して積み上げグラフにしたのが次の図。各年の赤と青によって構成された棒全体の長さが「病院収容時間」となる。
現場に到着するまでの時間も、そしてその後病院に収容されるまでの時間双方とも少しずつ、だが確実に伸びている。また「現場に到着するまで」「現場に到着してから」双方が伸びていることが、収容されるまでの時間伸張の原因であることが分かる。どちらか一方のみを原因とするものではない。
進む高齢化、不必要案件の呼び出し、進むオーバーフロー状態
「病院収容時間」などの時間が伸びている原因はいくつか推測でき、白書でも問題点として指摘している。そのうちの大きなものが「軽症患者、あるいは救急搬送が不必要な事例による出動が増え、救急活動がオーバーフロー気味となっている」「高齢者の呼び出しによる出動回数の増加」。
まずは傷病程度別運搬人員の状況で、その実情を確認する。取得可能な最古の1998年分と、直近の2009年~2013年のデータを比較したもの。軽傷者比率はほぼ横ばいで、中傷者比率が増加、重症者以上が減退している。
ただしこれは全搬送者数に対する比率。1998年当時は約354万人だった搬送者も10年後の2008年には約468万人、そして直近の2013年では約534万人にまで増加している。その上で比率に変化がないことから、搬送者数は大幅に増加していることが分かる。
ケガにしても病気にしても本人自身ではその重度が判断しにくい。「軽傷に思えるのなら救急車は呼ぶな」との意見に正当性は無い。しかし同時に、数字の上ではこのようなデータが出ている事実を認識しておく必要はある。
もう一つは年齢階層別区分。消防庁でもこの問題については近年注視しており、2008年以降からデータを用意している。
明らかに高齢者の比率が上昇しているのが確認できる。また直近の国勢調査(2010年実施)の人口比も併記したが、高齢者の搬送比率が人口比よりはるかに多いのも一目瞭然。
病状の悪化やケガの発生比率を考えれば、高齢者搬送比率が人口比率より高いのは当然の話。しかし一方で「高齢者人口3296万人で過去最多、総人口比は1/4超に」などにもあるように、人口比率の変移と比べても非常に高い上昇率を示しているのが気になる。あるいは「高齢者」(65歳以上)区分の中でもよりリスクの高い年齢層の比率・絶対数の増加により、必然的に搬送人数が増えていると見た方が妥当かもしれない。
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