夏の甲子園決勝は、センバツ初戦敗退校同士! 京都国際に突如現れた左腕が「化学反応」を引き起こした!
夏の甲子園は、関東一(東東京)と京都国際が決勝に勝ち残り、23日に初優勝を懸けて戦うことになった。関東一はセンバツ準優勝の経験はあるが、夏の決勝は初めてで、東京勢としては、日大三以来13年ぶりの優勝を狙う。また京都勢の選手権優勝は、昭和31(1956)年の平安(龍谷大平安)以来なく、夏の決勝は4連敗中。68年ぶりに、古都に深紅の大優勝旗をもたらすことができるか。
関東一は神村の左腕に6回まで無安打
準決勝はいずれも1点を争う伯仲の展開となり、関東一は9回、神村学園(鹿児島)のあわや同点かという本塁突入を好返球で阻止し、2-1で辛くも逃げ切った。4回に神村が6番・上川床勇希(3年)の適時打で先制。神村のエース左腕・今村拓未(3年)に6回まで無安打に抑えられていた関東一は7回、5番・越後駿祐(2年)がチーム初安打を放つと、7番・熊谷俊乃介(3年)が適時二塁打(右翼手の失策で三進)で追いつく。さらに8番・市川歩(3年)が前進守備の二塁手の横を抜いて(記録は失策)一気に逆転した。
4回に先制許した中堅手が土壇場でビッグプレー
守っては、今大会初登板の右腕・大後武尊(3年)が5回を1失点にまとめ、6回からは満を持してエース・坂井遼(3年)を投入。9回には、中堅手の飛田優悟(3年)のストライク返球で、1点のリードを死守した。米澤貴光監督(49)は4回に、間一髪で生還を許した飛田に対し、「怖がらずもっと詰めていいぞ」とアドバイスし、土壇場での飛田の好チャージがビッグプレーに結びついた。準々決勝で好投の左腕・畠中鉄心(3年)を温存でき、米澤監督は「大後がよく投げた。6回から坂井と決めていた」と会心の継投に満足そうで、「最後までブレることなくやっていきたい」と、決勝でも、堅守に支えられた自慢の継投策で頂点を狙う。
京都国際は青森山田のエースを攻略
センバツ1回戦の再戦となった京都国際と青森山田の準決勝第2試合は、初回に山田が、京都国際のエース左腕・中崎琉生(3年)から、4番・原田純希(3年)の適時打など、速攻で2点を先取。しかし、山田のエース・関浩一郎(3年)が登板した6回表、春のリベンジに燃える京都国際打線が目覚める。1死から連続安打と死球で満塁とすると、5番・長谷川颯(2年)が同点適時打。さらに次打者の投ゴロを関がはじく間に、ワンチャンスで逆転した。守っては、5回から中崎を救援した同じ左腕の西村一毅(2年)が、2安打しか許さず、3-2でセンバツの雪辱を果たした。準々決勝までの4試合、中崎と西村が交互に完投していたが、継投での勝利は今大会初めてとなる。
好救援の西村に、先輩エースが涙で感謝
両校のセンバツでの対戦は、9回に山田がサヨナラ勝ちという幕切れだったが、春との違いは、西村の出現だ。西村がいなければ、京都国際がこの試合をモノにできたかどうか。それくらい今大会の西村は調子がいい。2回戦の新潟産大付、準々決勝の智弁学園(奈良)をいずれも完封。さらに準決勝での好救援も合わせ、今大会23回無失点とまさに無双状態で、決勝でも優勝の行方を最も左右する存在になりそうだ。後輩の助けで命拾いしたエースの中崎は試合後、「西村には『ありがとう』と言った。次につないでくれたという思い。とても2年生とは思えない。次は自分が助けたい」と、涙が止まらなかった。
西村の出現でチームが激変した
京都国際の小牧憲継監督(41)は「選手たちが短期間で成長し、ベンチで感動しながら見ていた」と控えめに話していたが、前評判の高かった近畿勢で唯一、勝ち残った。今春の近畿大会で初めて優勝し、これまで「新鋭」の域を出なかったチームに箔がついたことも、自信につながっている。
センバツ後の西村の出現で、チーム全体が化学反応を起こしたかのようだ。「能力の高い選手はいない」と小牧監督が言うように、今チームは例年より打線が小粒で、センバツまでは中崎の投球に支えられてきた。それが中崎と西村の相乗効果によって一気に打線もつながるようになり、チームは激変した。毎年、近畿のチームは秋からずっと見ているが、これだけ短期間で強くなったチームは初めてだ。
悔しさをバネに、センバツ1回戦敗退校同士の決勝
決勝は、奇しくもセンバツ1回戦敗退同士の対戦となった。関東一は開幕戦に登場して、八戸学院光星(青森)にタイブレークで惜敗。京都国際は先述の通り、青森山田にサヨナラ負け。両校とも、その悔しさをバネに、切磋琢磨してきた。「甲子園の借りは甲子園でしか返せない」。これが高校野球の神髄でもある。試合のポイントは、お互いの投手の出来。極言すれば、最後に投げる投手に懸かっている。チーム力、チーム状態は全くの互角。終盤の1点勝負は間違いない。
関東一の坂井、京都国際の西村は救援待機か?
関東一は、エースの坂井に託すはずだ。展開にもよるが、中盤まで畠中や大後が踏ん張って、互角の状態で後半勝負に持ち込めれば勝機が出てくる。準々決勝で自己最速の151キロをマークし、準決勝は直球に頼りすぎた感はあるが、「守備がいいので助けられた」と坂井本人も自覚しているように、関東一の要所での守備力は際立っている。一方の京都国際は、球威のある西村を準決勝同様、ベンチに置いておく方が得策か。小牧監督も、雪辱に燃える中崎の意気を感じているはずで、劣勢になればすぐにスイッチするだろう。優勝の瞬間のマウンドに立っているのは誰か?甲子園100年の大会にふさわしい、スリリングなファイナルを期待したい。