ノートルダム大聖堂再建。40回目の「ヨーロッパ文化遺産の日」の最新情報
パリのノートルダム大聖堂の再建については、これまで度々ご紹介してきました。
2023年9月現在、大聖堂の周りに設置された足場は日に日に高くなってきていて、尖塔が再びそびえる状態に近づいています。
ところで、9月16日17日は、毎年恒例の「ヨーロッパ文化遺産の日」でした。1984年、フランスの文化大臣ジャック・ラングのイニシアティブのもとで始まった「ヨーロッパ文化遺産の日」は、9月の第3週末に文化施設を一般に公開するというもので、今年で40回を数えます。普段は足を踏み入れることができない場所、例えばフランス大統領官邸(エリゼ宮)なども一般公開されます。
パリのノートルダム大聖堂でも、「ヨーロッパ文化遺産の日」にちなんだイベントが開催されました。大聖堂の中にはさすがに入れませんが、大聖堂前の広場では、再建に携わる職人たちがそれぞれの技を披露し、多くの人々で賑わいました。
当日の様子はこちらの動画で詳しくご紹介していますので、どうぞご覧ください。
大工、石工のダイナミックな仕事ぶりをはじめ、彫刻家、ステンドグラス作家、さらには石を洗浄する人々の細かな仕事など、伝統の技が今もしっかりと受け継がれていることがよくわかります。
筆者にとって意外だったのは、職人さんに若い人や女性が多く、さらに言えば、イケメンやチャーミングな女性が多かったこと。動画をご覧になると、きっと共感していただけるのではないかと思います。
2019年4月15日に起きたノートルダム大聖堂火災のショッキングなニュースは、文字通り地球を駆け回りました。「ヨーロッパ文化遺産の日」に現地で配られたパンフレットによると、再建を願って、150カ国3万4000人から8億5000万ユーロ(1ユーロ160円換算でおよそ1360億円)の寄付金が集まったそうです。
パンフレットには、再建作業がこれまでどのような段階を経てきたかの説明もありました。
まず、火災直後から2021年の夏までは現場の安全性の確保。具体的には、瓦礫の除去と、火災の前から尖塔の周りを覆っていた足場の撤去。同時に、再建が可能かどうかの調査が行われました。
2020年夏、元来の素材を用いた再建方針が決定されました。天井は石、屋根の骨組みは樫の木、屋根の板は鉛を用い、火災前の状態に復元されることが決まりました。
安全性が確認され、再建可能となった2021年からは具体的に再建作業が開始されました。堂内のパイプオルガンが修復され、壁や装飾、ステンドグラスの洗浄・修復も進められてきました。また、中世の創建時と同じく、屋根の木組みに樫の木が使われることが決まると、フランス各地の森で木の選定と伐採作業が行われました。
大聖堂の内側が今いったいどうなっているのか。それは外側からは全く計り知れません。けれども、「ヨーロッパ文化遺産の日」イベントの会場で、再建プロジェクトのトップに立つフィリップ・ジョスト氏に尋ねると、「内部の再建はほぼ終わっています」という答えが返ってきました。なんとも嬉しいニュースです。
ところで、再建プロジェクトのトップといえば、火災の翌日にマクロン大統領から特命を受けたジャン=ルイ・ジョルジュラン将軍でした。コワモテの、ジャーナリストもちょっと怯んでしまいそうな威厳を持ったその将軍のもと、驚くべきスピードで再建作業が進められてきたのです。
ところが、今年8月、将軍が慣れ親しんでいたピレネー山脈の山歩き中に急死するという悲報が飛び込んできたのです。
大統領の特命を受けた大物、ジョルジュラン将軍の後継は誰になるのか。これはかなり難しい人選だったようですが、結局、プロジェクトの最初から将軍の右腕として仕事をしてきたジョスト氏がトップに立つことになりました。再建の方向性がこれまでと変わらないということで、作業に関わる人々は安堵したことでしょう。
9月の快晴の週末、揃いのポロシャツに汗を滲ませながら、興味津々の人々に応対する職人さんたちの顔はいかにも晴れやか。2024年12月に大聖堂再開という、当初は無謀に思えた公約に向かい、誇りを持ちつつ仕事をする人々が、筆者にはとても頼もしく、好もしく思えました。
これからも、ノートルダム再建の様子を逐次お伝えしてゆきたいと思います。どうぞお楽しみに。