【土浦市】「つちうらネル」で淹れる一杯はアロマ豊かで冷めてもおいしい。自家焙煎専門店「ニコニコ珈琲」
土浦には、おいしいコーヒーを淹れてくれる喫茶店やショップが点在しています。中でもこだわりの一杯を楽しめるのが「ニコニコ珈琲」。近年では希少といわれる「ネルドリップ」で抽出したコーヒーが味わえる隠れた名店です。
松本さんの淹れる一杯を求めてコーヒー好きが足繁く通う店
土浦駅から車で約6分。「霞ヶ浦医療センター」正面入口のはす向かい、「土浦調剤薬局」の隣に「ニコニコ珈琲」があります。コーヒーカップが描かれたオレンジ色の看板が目印です。
店内に入ると、仕入れたばかりのコーヒーの生豆が入った大きな袋が出迎えてくれました。縦長の店内にはお店で焙煎したコーヒー豆のほかに、オーナーご夫妻がセレクトした輸入菓子なども所狭しと並んでいます。
「いらっしゃい」と迎えてくださったのは、松本正さん。「ニコニコ珈琲」のオーナーであり、焙煎士も担っています。その日、その時期、お客様の気分に合ったコーヒーを松本さん自らが心を込めて淹れてくれます。
メイドイン土浦のフィルター「つちうらネル」を使用
松本さんがコーヒーを淹れているところにちょうどお邪魔したのですが、よく知るコーヒーの淹れ方となにやら少し違うような・・・。
「ネルドリップでコーヒーを淹れているところなんですよ」と、松本さん。
そう、「ニコニコ珈琲」では「ネル」と呼ばれる布のフィルターを使って抽出したコーヒーを味わえるのです。
喫茶店やコーヒーショップでは、紙のフィルターを使ってコーヒーを抽出するのが一般的ですが、「ニコニコ珈琲」ではネルドリップにこだわっています。
ネルドリップの「ネル」は、「フランネル」を略した言葉。ネルは、生地表面の繊維に針や突起物でつついて毛羽立たせた加工技術のことで、やわらかな手触りが特徴です。
片面が起毛した生地を縫い合わせて作ったフィルターは、その立っている毛をつたってコーヒーの旨みが通過して、雑味のない奥行きのある味わいを生み出します。
ペーパーフィルターよりも丸みと深みがあり、袋状になっているのも特徴のひとつです。
「ニコニコ珈琲」では、「つちうらネル」というオリジナルのネルフィルターを用いています。
「起毛が非常に長い生地を用いることでしっかりと味を出すことに成功しました。深さは安定した抽出を行え、お湯を注いでいるときに粉が暴れない縫い付け方にもこだわりました」(松本さん)
試行錯誤を繰り返し、松本さんが4年の歳月をかけて完成させたフィルターは、市販されているネルよりも毛先が長く、プロが使用しても十分に通用するような仕上がりです。
サイズは、1人用、3人用、5人用の3種類があり、お店で購入することできます。
ネルフィルターの製作には、土浦市の福祉支援施設「つくし製作所」なども協力しています。
「つちうらネル」を取り付けるフレームも手作りです。「1本作り」という1本のステンレスに少しずつ熱を加えて曲げながら作り、それをワイヤーで締めていきます。手間暇のかかる作業のため、1日に3本作るのが精一杯です。手にしてみると、機械では表現が難しい手に沿うような曲線、堅牢さを確かめることができます。
「今、何が旬?」そんなコーヒー豆の買い方、選び方が楽しめる
店内の棚にはこんがりと焼き上がったコーヒー豆がずらりと並んでいます。
「ニコニコ珈琲」の店内には焙煎機があり、毎日コーヒー豆をローストしています。ローストする豆の種類は、その日の気候や湿度、もちろん季節によっても変わります。どの豆をどれぐらいの量で煎るのかは焙煎名人・松本さんのなせる業。生豆を芯まで煎ることで特有の酸味やえぐみが払しょくされて、冷めてもおいしい味わいが楽しめます。
取材に訪れたその日は、旬を迎えてベストな味わいが楽しめるというブラジル産の生豆が届いたばかりでした。
「ブラジルは旬が4回あります。縦に長い国なので、収穫時期も違えば、旬を迎える豆の種類、味の特徴も変わります」(松本さん)
旬を捉える、季節を感じられる一杯が味わえるのも「ニコニコ珈琲」の魅力のひとつです。
海外から入手した生豆は、日本の季節に触れると、原料のその季節の味わいに変わっていくといいます。つまりは、日本でなければ味わえないコーヒー。
ネルドリップは、その旨み、深さを表現しやすいと松本さんは話します。
焙煎したコーヒー豆は、使用しているコーヒーメーカーやドリップ方法などに合わせて挽いてくれます。
「今、何が旬かしら?」と八百屋さんにおいしい野菜を訪ねるように、今一番おいしい味わいコーヒー豆を確認して購入していくお客様も多いそうです。
1杯でもOK!その場で淹れてくれるネルドリップコーヒー
「ニコニコ珈琲」では、注文を受けてからネルドリップ方式で1杯ずつコーヒーを淹れてくれます。
焙煎したコーヒー豆を1杯分だけミルで挽きます。この状態でもかなり豊かなアロマが楽しめます。
ガスコンロでお湯を沸かしていきます。
お湯を沸かすポットの注ぎ口がユニークな形をしていますが、これは松本さんが使いやすいように加工してもらったというオリジナル。おいしいコーヒーを淹れる上でポットの使いやすさや形にこだわることもとても大事なことなのです。
こちらのネルフィルターは使ったら煮沸して乾かしてを繰り返し、1か月使用したもの。1枚のネルフィルターで3か月は十分に使用できるそうです。
サーバーの上にネルフィルターを取り付けて準備は完了です。
ここからいよいよドリップが始まります。
松本さんの経験から淹れる時間は「2分」がベストとのこと。2分ぴったりに淹れるようにすると、後味や口当たりもよくなるというから不思議です。
腕時計で時間を測りながらじっくりと。それでいて2分の中でしっかりと抽出できるように淹れていきます。
淹れている時の松本さんの姿勢がとてもかっこいいのです。実は姿勢の良さもおいしい一杯を作る上で欠かせないポイント。背筋を正して、脇を閉めて。集中力も欠かすことなく。
ハンドドリップのコーヒーは、回しながら淹れていくのが基本だと思っていましたが、松本さんの淹れ方は回さずに、2分間同じ位置にお湯を注いでいきます。中心部分に熱だまりを作って、外側に熱を逃がす。そうやって「溶かして」いくことで、甘みが引き出されるそうです。
このぽってりとしたフォルム。豆と会話をしながら淹れることで、おいしい一杯へと昇華します。
かりかりとぷりぷり食感がたまらない、フレンチドックも大人気
「ニコニコ珈琲」では、コーヒーメニューだけでなく「フレンチドッグ」(450円)というフードメニューも楽しめます。
つくば市の人気ベーカリーショップ「ブーランジェリー アンキュイ」のバゲットに山形から仕入れたソーセージを挟んだホットドッグは、さくさくでかりかり。ソーセージのぷりっとした食感とほどよい塩気が合わさって格別の味わいです。
プラス50円でチーズをトッピングできますが、これは絶対にオーダーすべき最強コンビ。
フレンチドッグとコーヒーでパリのカフェを訪れたような旅気分が楽しめました。
「ニコニコ珈琲」のコーヒーやフードメニューは、席数は少ないですがイートインが可能で、テイクアウトもOKです。ホットドッグは、焼き上がるまでに時間を要するので事前に電話で注文しておくのがおすすめです。
おいしいコーヒーの淹れ方を教えてもらえるコーヒーセミナーも開催中
「ニコニコ珈琲」では、初心者でもコーヒーの基礎や淹れ方を学べるセミナーも開催しています。講師は松本正さん。ペーパーフィルターでコーヒーを淹れる一般コースから、ネルドリップを本格的に学びたい方向けの基礎コースは、初級・中級・上級まであります。上の写真は松本さんが作成した基礎コースの初級編の評価表。
セミナーは、最大でも1回3名までという少人数制で松本さんがほぼマンツーマン指導。細かな点をチェックしてくれて、アドバイスもしっかりしれくれます。
基礎知識の上級編はプロを目指す方向けのコースということもあって1回5000円ですが、それ以外のコースは1回3000円とお手頃。
おいしくなる理論や技術が分かるとコーヒーの奥深い世界にもっと浸ることができそうです。
話題の「ゲイシャ」や土浦市公認「つちうらブレンド」も!
店頭には、焙煎後すぐにミルで挽いて1杯分をパックしたコーヒーも販売しています。
その時期に旬を迎える産地のコーヒーを挽いたもののほかに、ブームになっている「ゲイシャ」も気軽に試してみることができます。松本さんがブレンドした「ニコニコブレンド」や、土浦をイメージしてブレンドした「つちうらブレンド」は、お土産にもぴったり。
フランスから空輸したポテトチップスも絶品!
「ニコニコ珈琲」は、松本さん夫妻が大好きなパリのカフェをイメージしたお店です。店内にはコーヒーだけでなく、輸入雑貨やお菓子もたくさん。
特に人気があるのがフランスから直輸入(空輸)したポテトチップス。カマンベール味やポルチーニ味など、風味豊かでハマる味わいです。
カラフルな色彩のお菓子たちに心が弾みます。
小さなお店なのに置いてあるものすべてが気になるものばかりで、ついつい長居してしまいます。知識が豊富でコーヒーへの愛にあふれる松本さんとの会話も楽しいですよ。
淹れたてのコーヒーを求めて訪れてみませんか。
<店舗情報>
ニコニコ珈琲
住所:茨城県土浦市下高津1-21-50 MAP
電話番号:029-823-0415
営業時間:11:00~19:00
定休日:土曜
ホームページ:http://nico-coffee.com/
Instagram:nico_nico_coffee