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大江アナ結婚に私たちが感じるモヤモヤ

五百田達成作家・心理カウンセラー

女子アナは心をかき乱す存在

見た目や知性、仕事ぶりだけでなく、恋愛や私生活まで何かとつっこまれがちな女子アナウンサー。アイドルばりの人気があり、芸能人やスポーツ選手との熱愛や結婚も多いので、がぜん注目は集まります。

ところが、男性から人気のある女子アナは女性からは「媚びてる」と批判される運命で、さらには、知名度・好感度が上がれば、同じように嫌いな人も増えるのもまた運命。

周囲からの扱われ方はまるで芸能人のようなのに、本人たちはことあるごとに「私たちはサラリーマンだ」と主張。「なるほどね」と納得しようと思ったころに、きらびやかなニュース(有名人との結婚や高収入ぶり)が飛び込む……。

このように女子アナとは、なんとも中途半端?というか、和洋折衷?というか、水陸両用?というか、とにかく「普通の人」の心をかき乱す存在です。

ひとり違う土俵で戦う大江アナ

そんな女子アナの世界で、ひとり全く違う土俵で戦っているようにみえるのが、テレビ東京の大江麻理子アナ(35)。

大江アナは、2001年にアナウンサーとしてテレビ東京に入社。報道・情報・バラエティなど、さまざまなジャンルの番組に出演し、「出没!アド街ック天国」や「モヤモヤさまぁ〜ず2」などでも大活躍している、女子アナ界の宝です。

圧倒的な気品と清潔感を持ちながら、セクハラトークも軽く受け流す余裕と落ち着きも兼ね備えます。美人なのに、天然で飾らない人柄は老若男女問わず人気があり、とくにおじさん達の心をわしづかみに。

「好きな女性アナウンサーランキング」では常に上位ランクインするにもかかわらず「嫌いな女性アナウンサーランキング」には決してランクインすることはない、じつに希有な存在です。そういう意味では、冒頭に挙げた「人気者の宿命」から、ひとり解き放たれていたわけです。

彼女に対しては、普段毒舌な独身女子も、口さがないおばさんたちも、手放しで応援していて、だからこそ男性たちも安心して「大江さん、好き」と言うことができました。

結婚報道に日本中がモヤモヤに包まれた

そんな大江アナは2013年4月、NY支局へ赴任するため、惜しまれつつ担当番組を降板してしまいます。そして涙、涙の別れのたった1年後、「ワールドビジネスサテライト」のメインキャスターとしてさっそうと帰国。

「みんなの大江アナ」は、気づくと「テレ東のエリート」として成長。なんとなく自分たちの手を離れてしまったような寂しさをおぼえていた視聴者も多いはずです。

そこへとどめを刺したのが、先ごろtwitterで発表された結婚です。

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あの大江アナが結婚! それだけでもショックなのに、やはりというか、意外にというか、相手が「普通の人」じゃなかった。

芸能人でもスポーツ選手でも、社内結婚でも普通の人でもない、マネックスグループ代表取締役社長CEOの松本大氏(50)。新聞では、「月収1億円以上、資産総額100億円超え」「バツイチ再婚」「年の差婚」「玉の輿婚」などと騒がれます。

「一緒に町歩きもしてくれそう♪」という視聴者の甘い妄想をおよそ1年あまりで完全に打ち消し、これで完全に手の届かない雲の上の人になってしまったような大江アナに対して、やっかみとも、悲しみとも言える反応が続々。

twitter上でも「おめでとう」「お幸せに!」など祝福の声があがる一方で、「いやだ」「終わった」「ひきこもる」など男性たちの悲鳴、そして「野球選手や芸能人、あるいは文化人と結婚されるよりもショック。」「結局金か。。。」「100億円と結婚か」など、彼女の結婚を消化しきれないツイートが飛び交いました。

とはいえ、大好きだった大江アナなので、一方的に非難するのも違うし、心からやっかみたいわけでもない。不完全燃焼というか、どう反応すればいいんだろう? と思っているうちに、さらにモヤモヤを加速させる事件が。

やさしくかばったさまぁ〜ず・三村

「モヤモヤさまぁ〜ず2」で共演していた、さまぁ〜ず・三村は、番組でも大江アナを好きだと公言していたファン代表。

彼女の結婚に向かい風が吹きかけた矢先に、twtterでやんわりと苦言を呈し、一連の報道に終止符をうちます。

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自分から言い訳するのではなく、以前の番組共演者が上手にフォローしてくれる。これもまた、大江アナの人徳のなせるワザ。

このおかげで、多くの人が吐き出しそうになっていた言葉を飲み込み、それまでうすうす感じていた「ここで非難したら、かっこわるい」「やっかんだら、自分の品位が落ちる」という気持ちを再確認することになります。

そしてなにも言えなくなった

もちろん、ひとりの大人の女性が誰と結婚しようが自由ですし、当然相手の魅力が金だけじゃないことは誰もが理解しています。

しかし、これだけ愛された女子アナ(近年結婚をこんなに惜しまれた人がいたでしょうか?)の、ツッコミどころ満載の結婚報道に、あーだこーだ言いたい気持ちが湧き上がるのも、ある意味当然。

それでも押しも押されもせぬ人気者さまぁ〜ず・三村に、嫌みなくこう言われてしまうと、人々は「ですよね……」と、ただただ黙るしかないのです。

アラサー・アラフォー女子もショックを受けた

今回、特にショックを受けたのはアラサー・アラフォーの独身女性たちでしょう。女性にとって35歳というのは、とても微妙な年齢。多くの女性が、これからの生き方に惑い、悩み、人生の決断を下すタイミングです。

大江アナはまさに35歳で、大きな選択をしました。

本来であれば共感し、応援し、(無理は承知で)自分に重ねたい35歳前後の女性にとって、今回のニュースはどこか、肩すかしを食らったというか、裏切られたというか、「えー、そこ行く!?」というような感覚。

彼女たちのリアクションは一様に、「ごにょごにょ」「ぐむむ…」と、実に煮え切らないものでした。

あれこれ言いたい、でも言いたくない。でもやっぱり言いたい、けれど言えない。

この何とも言えないモヤモヤ感こそ、今回の結婚報道に対する違和感の正体でしょう。

この気持ちは恋する者の運命

もちろん、これだけの人気者ですから、今後も新婚生活に関する報道が週刊誌などを賑わし続けることでしょう。それらを目にするたびに、私たちは、間違えてなにかを飲み込んでしまったような、微妙な表情になってしまうはず。

「どうやっても嫌いになれない」のが、彼女に恋をしてしまった私たちの運命なのです。

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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