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輸送密度2000人超の「小樽―余市」廃止なら全国の鉄道が消えかねない 山形県議団が北海道余市町を視察

鉄道乗蔵鉄道ライター
「余市駅を存続する会」メンバーと意見交換する山形県議団(写真:守山明)

 2024年9月3日、山形県議会の「ふるさと振興議員連盟」に所属する県議会議員3名が北海道余市町を来訪。「余市駅を存続する会」のメンバーと余市駅エルラプラザで意見交換を行った。

 「ふるさと振興議員連盟」代表の木村忠三県議は、「いまなぜ鉄道が必要なのか学ぶため」に余市町を来訪したという。山形県では、奥羽本線の福島―山形―新庄間を新幹線の乗り入れができるように線路幅を在来線サイズの1067mmから新幹線サイズの1435mmに改軌した最高時速130kmのミニ新幹線、山形新幹線が運行中であるが、山形県ではこれを時速260kmで運行できるフル規格新幹線に格上げするべく要望活動を行っている。山形県では、フル規格新幹線が実現した場合には並行在来線問題が生じることや、2年前の豪雨災害で運休が続いているJR米坂線の問題を抱えている。

 「余市駅を存続する会」では、「小樽―余市間の1日の輸送密度は、胆振東部地震のあった2018年11月という閑散期の調査でも2144人。これは山形県ならJR羽越本線の鶴岡―酒田間の幹線路線に匹敵する輸送密度」であると説明。北海道新幹線の札幌延伸を巡る現状については、2030年度末とした開業目標がトンネル工事の難航で数年単位での開業遅れが見込まれていること、バス会社各社が運転士不足で「鉄道代替バスの引き受けは困難」と協議会の場で表明したこと、改正地域公共交通活性化再生法の施行により沿線自治体が鉄道廃止に同意した時と状況が大きくかわったことなどから、会としては「もう一度、第三セクター鉄道もしくは上下分離方式で鉄道の存続を議論してほしい」との考えを示した。

 山形県議からは「バス会社が難色を示している以上、協議をやりなおす好機だ。道としての考え方を改めて示すべき」という考え方が示された。また、「山形県で鶴岡―酒田間を廃止するなんてありえない話。余市でもし鉄道が廃止になるのなら、ほかの地域でも追随するおそれがあり、ひとごとではない」と述べ、危機感をあらわにした。小樽―余市間が廃止となれば、全国的な鉄道路線のドミノ廃線ともなりかねない。

国内の地方鉄道では小樽ー余市間の輸送密度を下回る路線が大半だ(資料:中川大)
国内の地方鉄道では小樽ー余市間の輸送密度を下回る路線が大半だ(資料:中川大)

 なお、筆者は以前、富山大学の中川大特別研究教授より、全国の第三セクター鉄道と地方私鉄の輸送密度と運行本数を示した散布図をもらっているが、この表が示すように小樽―余市間の鉄道路線が廃止という前例が出来てしまうと、全国の大半の第三セクター鉄道と地方私鉄が廃線になりかねない危険性をはらんでいる。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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