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直近20試合で打率3割7分3厘6本塁打21打点!打撃復活の筒香嘉智が尚もメジャー再昇格が困難なワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
3Aでようやく打撃が復活した筒香嘉智選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【明らかに打撃復活した感がある筒香選手】

 7月7日にドジャースの40人枠から外され、傘下3Aのオクラホマシティに在籍している筒香嘉智選手がここ3週間、すっかり彼本来の打撃を取り戻しているのをご存知だろうか。

 直近の20試合に限ると、打率.373(67打数25安打)、6本塁打、21打点と抜群の成績を残している。本塁打のみならず2塁打も6本放っており、長打率も.731を記録。まさに筒香選手らしい長打力を披露している。

 6月9日に右ふくらはぎ痛で負傷者リスト(IL)入りし、同17日から3Aでリハビリ出場を続けていたが、リハビリ出場期間の3週間を経過してもシーズン開幕から続いていた打撃不振を克服することができず。ルール(リハビリ出場期間が終了した時点で26人枠に復帰させない場合はアウトライト・ウェーバーにかけなければならない)に従い、前述通り40人枠から外されていた。

 その後3Aに帯同しながらも、7月10日時点で打率が.119まで降下するなど苦しい時期が続いていたが、7月11日の試合で5打数2安打、1本塁打、2打点の活躍を見せると、そこから一気に勢いに乗り、現在も打撃好調を維持し続けている。

【40人枠に47人と余剰人員を抱えるドジャース】

 すっかり筒香選手らしい打撃を取り戻せたことを考えれば、近い将来のメジャー再昇格を期待したいところだ。だが話はそう簡単ではない。筒香選手の調子だけでなく、チーム事情が大いに関連してくるからだ。

 筒香選手がメジャー再昇格するには、その前提条件として40人枠に復帰しなければならない、だが現在のドジャースは40人枠に余裕がなく、むしろ余剰人員を抱えている状態なのだ。

 今シーズンのドジャースは投手、野手ともにケガ人が続出し、頻繁に26人枠の入れ替えを行うしかなかった。筒香選手がレイズからトレードされたのも、主要外野手にケガ人が出たための緊急補強だった。

 筒香選手のみならずアルバート・プホルス選手らを獲得するなど、チーム外からの補強を続けることで、40人枠の入れ替えも余儀なくされた。そのため現在は60日間のIL入り選手を加え、40人枠に47選手が入っている状態なのだ。

【すでに主力野手陣はすべてケガから復帰】

 さらに筒香選手にとって不運なのは、現在もケガ人が多い投手陣とは裏腹に、野手陣でIL入りしているのはギャビン・ラックス選手、エドウィン・リオス選手の2人だけ。ようやく主力野手陣が全員揃っているのだ。

 元々筒香選手がドジャースに移籍した当初からメディアの間で、主力野手が復帰してきた後の処遇について疑問が持たれていた。ケガ人さえでなければ、ドジャースの野手陣の選手層はMLB屈指だからだ。

 しかも筒香選手が3Aでようやく打撃が改善し始めた7月21日に、ドジャースは新たに外野手のビリー・マッキニー選手をメッツからトレードしているのだ。これでますます筒香選手が割り込む隙がなくなってしまった感がある。

 もし筒香選手の打撃復活があと1週間早ければ、マッキニー選手のトレードはなく筒香選手がメジャー再昇格を果たしていたかもしれない。タイミングといってしまえばそれまでだが、本人の実力だけでなく運が作用してしまうこともあるのだ。

【ロースター枠拡大のルール変更でさらに窮地に】

 このまま筒香選手が3Aでシーズン最後まで打撃好調を維持し続けたとしたならば、以前なら9月1日からロースター枠が拡大されるため、筒香選手も40人枠に戻れればメジャー再昇格できるチャンスが残されていた。

 だが昨年からロースター拡大のルールが変更になり(昨年はコロナ禍でルール変更は適用されなかった)、9月1日以降でも各チームの拡大枠は2名に制限されるため、最大28選手(ケガ人は除く)しかチームに帯同できなくなってしまった。ドジャースの現状を見る限り、筒香選手を40人枠に戻してまでロースター拡大枠に入れるとはやはり考えにくいだろう。

 ただあくまでこれは可能性の話であり、絶対はあり得ない。今後ドジャースに何が起こるか分からないし、再び筒香選手の力が必要になる機会が巡ってくるかもしれない。

 とにかく筒香選手は、現在の打撃を維持し続けていくしかない。そしてどんなかたちになるにせよ、本人が納得するかたちでシーズンを締めくくって欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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