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NY金10日:ドル全面高で、代替通貨の金は売られる展開に

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

COMEX金4月限 前日比6.40ドル安

始値 1,165.60ドル

高値 1,169.60ドル

安値 1,153.80ドル

終値 1,160.10ドル

ギリシャ債務不安で反発することに失敗し、ドル高連動で反落した。

前日はギリシャ債務不安を蒸し返す形で強含みの展開になったが、本日はアジアタイムから戻り売り優勢の展開に。アジアタイム後半から株安傾向が目立ったが、それ以上にドル高傾向が続いていることが嫌気され、金相場はドル高連動で値位置を切り下げる展開に。米株式相場が大きく下げて始まったことを受けて買いを入れる場面も見られたが、1,160ドル台後半までの戻りで精一杯であり、引けにかけては改めてマイナスサイドに沈んでいる。

ギリシャ債務問題については11日に再協議が行われる予定になっているが、為替市場でドル高傾向が強くなっていることが、ドル建て金相場のダウントレンドを決定付けている。欧州中央銀行(ECB)の量的緩和が開始される一方、先週発表された2月米雇用統計を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ着手の時期は近いとの見方が強まる中、ドルは主要通貨に対して全面高の展開になっている。対メキシコ通貨ペソなどでは過去最高値を更新しており、ドルに対する資金シフトの動きが、代替通貨・安全通貨としての金相場の上値を圧迫している。

急激なドル高が金融市場の動揺を誘い始めており、このまま株安が進むと一定のサポート要因になる可能性はある。ただ、米経済環境に何か大きな問題が発生している訳ではなく、ドル建て金相場の戻り売り基調を崩すのは容易なことではない。3月入りしてからは、金上場投資信託(ETF)市場でも換金売りが目立ち始めている。まだ1月に買われた一部が売却され始めた段階に過ぎないが、裏返せば今後もETFの売却圧力が続くリスクがあるということであり、金相場の下値不安は大きい。

アジア地区の現物需要も勢いを欠いており、次は1,150ドル割れでどこまで「価格低下→現物需要拡大」のフローが見られるのかが焦点になる。ギリシャ債務不安、株安などの動向によって一時的に反発するリスクがあることを確認した上で、ドル高連動で下値切り下げを模索する展開を想定したい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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