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ロシア軍、安価な民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込む「神風ドローン」に

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍はここ数か月間くらい、小型の民生品ドローンから爆弾を投下して地上のロシア軍の戦車などを攻撃して破壊している。ドローンで撮影した上空からの攻撃シーンやロシア軍の戦車を破壊する動画もよく公開している。

そして2022年10月にはロシア軍が使用していた数万円で購入できる小型民生品ドローン(Diatone Roma F5)に爆弾を搭載して、標的を見つけたら突っ込んでいく、いわゆる「FPV神風ドローン」が攻撃に失敗した場面を公開していた。

FPV(ファースト・パーソン・ビュー)とはドローンに搭載されたカメラの視点から見えている風景を操縦者が見れること。標的に撃墜していく様子を撮影して操縦者が確認することができる。

ロシア軍はロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」のほかに、最近ではイラン政府が提供して軍事ドローン「シャハド136」でウクライナ軍を攻撃している。これらも標的を検知すると突っ込んで行き攻撃を行う「神風ドローン」だが、軍用の攻撃目的で最初から開発、製造されている。

軍事用に生産された攻撃ドローンはコストもかかるが、民生品ドローンは安価で操縦も簡単である。そのためロシア軍もウクライナ軍も小型民生品ドローンを活用して攻撃を頻繁に行っている。小型民生品ドローンなので搭載できる爆弾や手榴弾の量には限りがあるが、上空から投下したり、標的に突っ込んで行くので殺傷力もある。

攻撃ドローンは「Kamikaze drone(神風ドローン)」、「Suicide drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンの名前に「神風」が使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン(Kamikaze Drone)」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」は一般名詞となり定着している。

ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記されるが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースでもよく登場している。安価な小型民生品ドローンでも爆弾を搭載して標的に突っ込んで行けば「神風ドローン」である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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