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退職金への課税ルール(退職所得控除)が変更されるとiDeCoへの影響はある?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
写真はイメージです(写真:イメージマート)

政府が終身雇用を前提とした退職金の課税ルールを、見直す検討に入っているというニュースがありました。何が問題で、今後どのようになるのでしょうか。特に、退職所得控除の課税ルールが変更されると、企業の福利厚生制度として退職一時金および年金、確定拠出年金への影響も出てくる可能性があります。

■退職所得控除とは

日本ではお金を受け取ると何らかの税金が課されます。退職金の場合は、所得税法上の退職所得という分類になり、金融所得や給与所得とは異なるルールで税額が計算されます。

現在は勤続20年未満と20年超で計算方法が異なり、長期継続勤務をするほど所得税額の計算上有利になる仕組みとなり、会社にとって従業員の定着に役立っているとされています。終身雇用が前提となり、退職金制度があるのが前提ですが、短期間で転職する場合との公平性に欠けるという指摘があります。

具体的には、勤続20年未満の場合勤続年数1年ごとに40万円の退職所得控除があり、勤続20年を超えると、1年ごとの退職所得控除額が70万円に増加します。

■制度変更の2つの方向性

勤続20年未満の控除額を、勤続20年以上に揃え一律70万円に統一するのが減税となる制度変更です。

反対に、勤続20年以上の控除額を、勤続20年未満に揃え一律40万円とするのが増税となる制度変更です。

間をとるという考えもあるかもしれませんが、今の国家の財政事情を考えると、増税となる可能性が高そうに感じられます。

■増税の場合に影響が出る人

勤続20年以上経過している人や、退職時に勤続20年を超えそうな人は、納税額が増えることで手取りが減ります。公務員や大企業に勤め続ける人には影響が出そうです。

■増税となっても影響がない人

数年ごとに転職する働き方の場合には、勤続20年を超えなければ影響はありません。また、そもそも退職金がない人、退職金があってもそれほど多くない人には影響が無さそうです。

■iDeCoへの影響は?

iDeCoは、拠出時に所得控除の対象となり課税所得を減らすかわりに、まとまった一時金を受け取る時に退職金として課税します。iDeCoでの資産形成が上手に進み、退職所得控除を超える資産形成ができた場合に不利になりますが、iDeCoでの資産形成額が退職所得控除内であれば、変更でも影響はありません。なお、企業型確定拠出年金も同様です。

■年金受け取りの場合は?

退職所得控除は、退職金を一時金としてまとめて受け取る際の税金の計算に含まれます。年金として受け取る際は、公的年金等雑所得という分類になり、直ちに影響は無さそうですが、退職所得控除と一体として見直される可能性もあります。

■今後の動き

今回の制度変更の検討は、今後の退職金制度そのものを揺るがすことにつながりそうです。退職金規定自体が、長期勤務をした人に対して報酬を多く支払う仕組みにしている企業が多いため、日本企業の退職金制度が大きく揺らぐ可能性があります。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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