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「サーカス」化が予想されるゴルフのメジャー大会、全米プロにフィル・ミケルソンは本当にやってくる!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今季2つ目のゴルフのメジャー大会、全米プロ(5月19日~22日、米オクラホマ州サザンヒルズ)の出場者リストが正式に発表され、そこには今年のマスターズ覇者スコッティ・シェフラーらとともに、タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソンの名前も掲載されている。

 タイガー・ウッズは昨年2月の交通事故で重傷を負った右足がマスターズ4日間を戦った際には「痛みがある」「腫れ上がっている」状態となったため、全米プロに出場するかどうかは定かではなかった。だが、自らエントリーしたことは、右足の回復の度合いが少なくとも悪くはないと考えられる。

 エントリーした以上は、自身が取り下げない限りは、出場リストに名前は掲載される。だからウッズの名前は正式に出場者リストに載っているのだが、心身の状態次第では直前の棄権もありうる。

 そして、まったく同じことが、ミケルソンにも当てはまる。

 ミケルソンは全米プロのみならず、6月の全米オープンにも、そしてゴルフ界を騒がせているグレッグ・ノーマン率いる「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」の初戦にも、エントリーしており、ミケルソンのエージェントは「エントリーは、可能な選択肢をすべて用意しているにすぎず、必ずしも出場することを意味しているわけではない」という声明を、全米プロにエントリーした時点で、すでに出している。

 昨年大会を史上最年長の50歳で制覇し、今年はディフェンディング・チャンピオンとして出場する権利も資格も有しているミケルソンがエントリーすれば、大会側はそれを拒否したり拒絶したりする権利も理由もなく、だからミケルソンの名前が出場者リストに載るところまでは、いわば当然の流れだ。

 とはいえ、彼の名前が出場者リストに正式に載った今でも、彼が本当に出場するかどうかには、依然としてクエスチョンマークが付いていると考えられる。

 ミケルソンは昨年11月に米国人ゴルフライターによる1対1のインタビューに応じたのだが、その際にミケルソンが発した言葉の一部が、今年2月に同ライターによって突然公表され、その内容やミケルソンの言葉の選び方が社会的な批判を受けて大騒動へ発展。

 瞬く間にミケルソンは、ほぼすべてのスポンサー契約を失い、「しばらく休養したい」という言葉を残して、ツアーから離れ、姿を潜めている。

 最後にPGAツアーの試合で戦ったのは1月下旬のファーマーズ・インシュアランス・オープン。その翌週、ツアー外の競技であるサウジ・インターナショナルに出場。その2週間後に彼の発言が公表され、「渦中の人」となったため、その後は試合には1つも出場していない。

 そんなミケルソンが全米プロに出場するとなれば、メジャー大会の会場は「まるでサーカスのような騒ぎになる」と米ゴルフ関係者は口を揃える。米メディアのみならず世界各国のメディアがミケルソン取材に押し寄せ、ギャラリーも詰め寄せることが予想される。

 その「サーカス状態」に耐えうるかどうかを、大会を主催するPGAオブ・アメリカのセス・ウォウCEOは、すでにミケルソンと数回、話し合ったという。

「フィルとは何度か話をした。フィルは自分が戦線復帰する適切なタイミングはいつなのか。あの騒動から、どのぐらいの時間を置き、どのぐらい待てば、自分は再び試合に出て戦うことができるのか、そのための最適なタイミングを彼は模索している。そして、それはゴルフ界も同じことで、彼を受け入れるための適切なタイミングを私たち大会主催者側も模索している」

 そう語ったウォウCEOが最も懸念しているのは、メディアの取材攻勢にミケルソンが耐えられるかどうかだという。

「フィルが実際に会場にやってきたら、月曜と火曜はメディアの取材が嵐のようになる。それにフィルが耐えられるのかどうかが心配だ。しかし、それを乗り切ることができて、大会初日の木曜日を迎えたら、そこから先は、フィルも他の選手たちもゴルフのプレーそのものに集中できる状況になるのではないだろうか。そうするためのあらゆる努力と協力を私たちPGAオブ・アメリカは惜しまない」

 大会側はミケルソンを受け入れ、「サーカス」に対応する覚悟と準備はできているということ。しかし、ミケルソンは何でも強気で発言し、強気で行動する一方で、彼のメンタル面はびっくりするほどナイーブだ。そんな彼の性格や人柄をよく知る「20年来の付き合い」のウォウCEOだからこそ、ミケルソンの戦線復帰を心底、心配している。

 果たして、ミケルソンは本当にサザンヒルズに姿を現すのか。「サーカス状態」にミケルソンの心が耐えうるかどうかがカギになる。耐えて、乗り切り、全米プロ連覇に挑んでほしい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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