【富山市】富山で250年続く老舗菓子店。ベストショップコンテストでサイン・景観賞を受賞「竹林堂本舗」
富山商工会議所が主催する「ベストショップコンテスト」は、今回で77回目の開催を迎えました。富山市内の3年以内に新規オープンまたはリニューアルした店舗を対象に、ショップの魅力をさまざまな観点から表彰しています。コンテストの受賞店を巡るこのシリーズの第7回として、サイン・景観賞を受賞した「竹林堂本舗」をご紹介します。
代表の山崎ゆかりさんにインタビューを行い、再スタートまでの道のりや看板商品の「甘酒まんじゅう」の作り方へのこだわりについてお話をうかがいました。
富山の伝統ある文化を背負って再出発した「竹林堂本舗」
2024年2月、富山市内で250年の歴史を誇る老舗和菓子店「竹林堂本舗(ちくりんどうほんぽ)」が、休業前と同じ中央通り商店街にリニューアルオープンを果たしました。
定番の「甘酒まんじゅう」に加え、石川県出身の世界的パティシエ・辻口博啓シェフが監修した新商品もラインナップし、あたたかい光が通りに溢れるよう美しい店内で県内外から訪れるお客さまを迎えています。
コロナ禍による休業の背景には、建物の老朽化、機械の故障、従業員の高齢化による退職などの課題がありました。お店の存続が危ぶまれる中、一時は休業を余儀なくされました。しかし、「富山の歴史ある文化を残してほしい」という地元の皆さんからの声が日々寄せられ、山崎さんも「もう一度お店を開けなければ」という強い思いに突き動かされたと振り返ります。
お菓子の製造を支える有力な職人さんの協力や、石川県出身の世界的パティシエ・辻口シェフが商品の監修に加わるなど、再出発への後押しもあり、一時休業から2年の月日を経てついにリニューアルオープンの日を迎えました。
竹林堂本舗の「甘酒まんじゅう」は、江戸時代から続く看板商品です。「朔日饅頭(ついたちまんじゅう)」とも呼ばれ、無病息災を願う縁起物として、毎年6月1日に富山市の日枝(ひえ)神社で開催される春季例大祭「山王まつり」で販売されます。ときには1,000人ほどが列を作るほどの人気ぶりです。
そんな「甘酒まんじゅう」は、昔ながらの製法に現代の衛生基準を取り入れ、試行錯誤の末に生み出された一品です。自家製の甘酒に小麦を加え、発酵させて作る生地は、ふわふわ感と少し硬さもある絶妙な食感。この生地とあわせる滑らかなこし餡が持つほのかな酸味を引き出すのは、とても難しいといいます。
「新しくも懐かしい味」を目指し、工場環境を刷新したことで、麹菌の育成から製法を再構築。職人の感覚を大切にしつつも、データ管理を取り入れて味を安定させる取り組みも進めています。また、季節ごとに異なる材料の状態を見極め、細やかな調整を重ねることで、一年を通して安定した味わいを提供しています。
竹林堂本舗の第二章を彩るふたつのブランド
竹林堂本舗の新たな出発と同時に販売がスタートしたのは、辻口シェフプロデュースの新ブランド「善次郎」の商品です。「善次郎」の名は、安永2年(1773年)の創業以来、創業者・善次郎へのリスペクトから継承されてきました。
「甘酒まんじゅう」を現代風に昇華した「善次郎まんじゅう」と、しっとり食感の「糀フィナンシェ」。富山の老舗と世界的パティシエの出会いで生まれた新たな富山銘菓は、今後さらに浸透していくことでしょう。
竹林堂本舗のオリジナルブランドの「立山クランベルク」は、酒粕を用いた発酵生地のクッキーが立山連峰をイメージしたお菓子。クリームとチーズの風味を加えたホワイトチョコレートが、まるで雪のよう。カラフルなドライフルーツが、季節によって変化する立山連峰の多彩な表情を表しているようです。
今年の夏、私の周囲でも飲んでいる人をよく見かけた「甘酒スムージー」についても聞いてみました。「もっと気軽に竹林堂本舗の甘酒を楽しんでほしい」との思いから、山崎さんの娘さんお二人を中心に企画された商品だそう。甘酒を加えた柔らかく爽やかな味のスムージーは、街歩きのお供にぴったりです。
秋ごろからは、あたたかい「ホット甘酒」の提供をスタート。「はちみつレモン甘酒」「生姜甘酒」の2種類を用意しています。お菓子はもちろん、飲むスタイルでも竹林堂オリジナルの味を楽しめるのが嬉しいです。
ベストショップコンテスト2024 サイン・景観賞の受賞を受けて
さいごに、受賞を受けた感想をうかがうと、山崎さんは「とても嬉しく思っています。2年間休業していた間もお店のことを覚えていてくださった方々がいらっしゃることに、感謝と喜びが込み上げてきます」と喜びを語ってくれました。
今後の抱負については、「商品数を増やすなど挑戦したいこともありますが、欲張らずに、まずは今あるものをより多くの方に知っていただくタイミングだと考えて営業を続けていきたいです」とのこと。また、「おしゃれな店内で、ご年配の方がスムージーをほほえみながら飲んでいる姿を見るたびに、胸がいっぱいになる」と、営業中の微笑ましいエピソードをお話ししてくださいました。竹林堂本舗の第二章は、いま始まったばかりです。
【詳細】竹林堂本舗
住所:930-0044富山県富山市中央通り1丁目5-2
電話:076-423-8424
営業時間:10:00〜18:00
休日:火曜・水曜(祝日の場合は営業)、元旦、臨時休業あり
可能な支払い方法:現金、PayPay
この記事では、#富山ジャーナリスト の岩井ななが休日に行きたくなる富山市内のショップやイベントをご紹介しています。今後の情報発信もお楽しみに!