ムネリンは帰って来るべきだ
川崎宗則の2015年シーズンが終わった。本人は、来季の帰国に関し含みを持たせるコメントを出しているようだ。一部スポーツ紙では、「オリックスが獲得に動く」との報道もある。あり得るかもしれない、と思う。この球団はとにかくビッグネームが好きだからだ。彼にとってオリックスがベストなチョイスかどうかは別にして、ぼくはそろそろ日本でプレーすべきだと思うし、メディアもそれを主張すべきではないか。
北米に渡って4年目の今季は、自己最少の23試合の出場に留まった。OPSも.598だ。これは、彼にとってのメジャー通算の.599とほぼ一致する。正直なところ、この打力では来季もマイナー契約以外は無理だろう。かといって、守備でも通算の防御点は-1だ。これは、ほぼメジャー平均レベル(正確には若干マイナスだが)でしかないことを示している。少なくとも打力の弱さをカバーできる水準ではないのだ。
私は日本や北米の多くのファン同様に川崎が好きだ。彼の海外においても積極的にコミュニケーションをとる姿勢は、多くの日本人ビジネスマンも見習うべきだと思っている。そのことはとても立派なのだけれど、彼はベースボールプレーヤーだ。賞賛を勝ち取るのは、そのプレーぶりであるべきだ。彼は故障者が出た際に昇格の声が掛かることはあっても、メジャーに常時帯同できる器ではないことは残念ながら事実だ。いかに人気者であっても、日本でトップクラスのスターであった彼が、そんな境遇に甘んじていいのか。
川崎に関する日本メディアの報道に私は疑問を禁じえない。「愛されキャラ」の部分を賛美するのがほとんどで、メジャーリーガーとして否定のしようがない限界については触れようとしない。今回のプレーオフでも「メンバーには入れなくても応援団長として貢献」と持ち上げる記事も目に付いた。高校野球でベンチいりから漏れた「白虎隊」ではあるまいし、プロをそんなことで褒めてどうする、と言いたい。
職業選択の自由は、基本的人権のひとつだ。北米でのマイナー暮らしを継続するのも帰国するのも彼の自由だ。しかし、35歳になる来季の出場機会確保は一層苦しくなるはずで、「衰えてしまう前に川崎帰るべし」というのがまずは正論だ。それを踏まえてこそ、彼独特の野球観や人生観に対する議論が意味を持つのだと思う。張本勲氏ならずとも、このような主張がもっとメディアに出てくるべきだと思う。