上林誠知「イチローバット」で放った逆転満塁ホームラン!
カニザレス、江川にも一発
8月11日、2軍戦。ホークス打線はタマスタ筑後で3本の特大アーチを掲げてタイガースに圧勝した。
【8月11日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 2,541人】
阪神 000030001 4
ソフトバンク 00011045× 11
<バッテリー>
【T】守屋、小嶋、●高宮(0勝1敗)、石崎――小宮山、小豆畑
【H】笠原、○加治屋(4勝3敗1セーブ)、S星野(2勝2敗4セーブ)――斐紹
<本塁打>
【H】カニザレス8号、上林9号、江川10号 【T】ペレス9号
<戦評>
ホークスが3連戦を勝ち越した。試合終盤に打線が猛威を振るった。1点を追う7回、2死満塁から上林が逆転満塁本塁打を放った。8回には打者一巡の攻撃。牧原が満塁走者一掃の三塁打と江川の右越え10号2ランで大量5点を加えた。
反撃体制も一発からだった。5回、カニザレスが左中間へ会心の8号ソロを放った。打線全体で15安打と活発。塚田が3安打をマークした。
先発の笠原は3回までパーフェクトも途中3点を失い、6回3失点だった。
阪神は5回に俊介の2点タイムリーなどで一時逆転したが、中継ぎ陣が誤算だった。 (了)
上林誠知「満塁ホームランは”あれ”以来」
まるで野球漫画のような劇的な逆転満塁ホームランだった。
1点を追う7回裏だった。2アウト満塁、カウント3ボール2ストライク。打席の上林誠知は「7割方外のストレート、残りの3割はスライダーに張っていました」と振り返った。
来たのはど真ん中のストレート。
「反応で打ちました」
ライト後方の防球ネットに鋭く突き刺さる、特大の逆転グランドスラムとなった。
「満塁ホームランは“あれ”以来ですかね」
昨年8月25日のロッテ戦。1打席目にプロ初安打をマークしたばかりのこの試合、6回裏の第3打席で衝撃の逆転満塁プロ1号を放ったのだった。あまりの鮮烈な活躍に鷹ファンは明るい未来を感じずにはいられなかった。
「こだわりはないけど、いっぱい打ちたい」
今年はさらなる飛躍を期待されるも苦しんだが、8月はこれで3本塁打目だ。3日の広島戦(由宇)では推定130mの特大アーチを放っている。
「ホームランにこだわりはないけど打ちたいっすね、いっぱい」
声のトーンも軽やかだ。
この満塁ホームランの次の打席でも、一塁線を鋭く破る二塁打を放った。この長打を放った2打席のみ、これまでと違うバットを使ったという。
わずか5インチに込められた思い
「形は同じなんですが、通常の34インチではなく33.5インチのものを使用しました」
短くなれば遠心力はその分働かなくなるが、「それでも飛びましたね」とご満悦。「最近少し(タイミングが)遅れていた」こともあり、短いバットを使用することを思いついたという。
「満塁ホームランの打席で初めて使いました。そして、二塁打を打った、本当にあの2打席だけなんです」
それに……、
「3半(33.5インチ)は、イチローさんと同じなんですよ」
同じ背番号51の大打者にあこがれ続けて歩んできた野球人生だ。「僕はずっとイチローさんに憧れて野球をやってきました。だからホークスで背番号51をもらえて嬉しかった」。
勝負の3年目は、まだ終わっていない
イチローが当時日本記録のシーズン210安打を放ったのが、現在の上林と同じ入団3年目のことだった。上林はスター選手の入り口で立ち止まったままかもしれない。だが、この男にはそれを歩むにふさわしい、どこか華を感じるのだ。
「夏に強いのか分からないです。(高3夏の)甲子園は打っていないし。でも、体が勝手に動いてくれる」
終盤戦に、またファンを興奮させるプレーを見せてくれるのではないか。そんな予感を漂わせた、本当に気持ちのよい一発だった。