都議選千代田区はサッカー対決
サッカー日本代表が応援に
秋の衆議院選の前哨戦と位置づけられている東京都議選。小池百合子都知事の全盛期に行われた前回の都議選とは異なり、今回の都議選では都民ファーストの会の苦戦が伝わっている。とりわけ頼りにすべき小池知事が体調不良で、6月22日夜から入院中。週明け後もしばらく復帰の見込みはなさそうだ。
そのような都民ファーストの会の候補にとって危機ともいえる状況の中、ひときわ華々しくスポーツ新聞などで報じられたのが、千代田区で出馬している平慶翔氏の出陣式。なんと平氏の姉でタレントの愛梨氏の夫であるサッカー日本代表DFの長友佑都選手が現れたのだ。義理の兄の応援に感涙した平氏だが、長友氏の登場はあらかじめメディアに伝わっていたようで、ツーショットの写真とともに各紙が大きく報じている。まるで“サッカー=平候補”といわんばかりだ。
9歳からのサッカー人生
しかし自民党から出馬している内田直之氏も、実は9歳からサッカーに親しんできた。内田氏は「小学校の時はキャプテンを務め、中学では副キャプテン。高専でもキャプテンを務めました」と、サッカー三昧だった青少年時代を振り返る。
中学時代には県内の先鋭プレーヤーが集まった“熊本選抜”にも選ばれた。トステム株式会社(現・株式会社LIXIL)に入社した後も、7年間サッカー部のキャプテンを務めている。
35歳で社会人サッカーを引退した後は、趣味でサッカーやフットサルなどを楽しんでいたが、2011年に千代田区議に当選後に千代田区サッカー協会を作り、体育協会にも加盟した。
千代田区にサッカーを
しかし当初の発起人はわずか3名。しかも互いに顔を知らなかったため、最初に会う時はすぐにわかるように鹿島アントラーズの赤いユニフォームを目印にしたという。
「そもそも千代田区は野球の発祥の地ですが、サッカーは盛んではありませんでした。サッカーをするにも、場所を貸してくれるところが少なかったのです」
そこで使用後にはきれいに掃除をするなど、理解を得られるように気を遣った。また天候に影響されずスポーツができるように、区立九段小学校などで校庭の人工芝化を実現。「おかげ様で“人工芝議員”とあだ名が付けられました」と内田氏は微笑む。
スポーツを私物化しないために
こうして設立された千代田区立サッカー協会は、2020年に一般社団法人格を取得。スポーツ協会が一般社団法人格を取得するのは非常に珍しいが、「当時は日大アメフト部の悪質タックル事件や女子レスリングのパワハラ告発問題、体操界でのパワハラ問題が報道された頃でした。組織を作るとどうしても私物化しやすい。そこで一般社団法人として独立性を持たせることで、自分への戒めとしたのです」と内田氏は説明する。
とりわけサッカーは倫理に厳しく、政治に敏感な国際サッカー連盟(FIFA)などは、2018年にはクロアチア代表DFのドマゴイ・ビダ選手がSNSで「ウクライナに栄光を!」と発信した件で、ビダ選手に注意を与えたほどだ。「スポーツの政治利用はいけない」と強調する内田氏の言葉は、現役のサッカー選手の義兄の選挙応援を得た平氏への批判と見ることができる。
平氏にべったり一緒の樋口区長
その平氏には、都民ファーストの会で同期当選した樋口高顕区長がべったりと選挙活動に随行。告示日である25日には自分の支持者を平氏に引き合わせ、翌26日は神社で共に茅の輪をくぐり、27日には一緒に蕎麦をたぐっていた。
千代田区議会は定数25(現在欠員1)のうち、千代田区議会自民党会が13名を占め過半数を制しているが、身内に過剰に入れ込んでいてはこの後の区政運営が困難にならなか。
告示日の25日前に千代田区にやってきて空中戦を行っている平氏と、内田家に婿入りした時から千代田区の未来を考え地上戦を展開する内田氏。千代田区ではその他、共産党の冨田直樹氏と無所属の浜森香織氏が立候補している。7月4日の投票日に日本の中心に住む5万4000人の有権者は、果たして誰を選ぶのか。