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ホテル客室【隣や上の騒音】あなたはどうする? 注意したら逆ギレされるかも-ホテルマンのナイスな采配

瀧澤信秋ホテル評論家
(写真:Paylessimages/イメージマート)

都内の某ホテル5階の客室、4月中旬、時刻は20時半。1時間ほど前から階上よりドン!ドドン!!と歩いているのか走っているのか頻繁に響く音が伝わってくる。こうしたシーンでまず浮かんでくるのが、子連れファミリーで子どもが走り回っている場景だろうか。

まぁいつもの家とは違った非日常の楽しさで、テンションアップな子どもの姿というのは理解出来る。きっとしばらくすれば疲れて寝てしまうだろうから少しの辛抱かと構えているも一向に止む気配はない。ホテルによっては壁が薄いなど建物そもそもの問題があるケースも想起することも。いずれにせよ、騒音についての感じ方、寛容度は人それぞれだろう。

身近な記憶としてはとある飲食店でのことが思い浮かぶ(コロナ禍前の話です)。そのグループは積もる話もあるようで、盛り上がっているのはある種微笑ましい光景。とはいえ、人が集まって飲食すると気付かぬうちにかなり声が大きくなっていることは自身の体験でも思い起こされる。そうした状況があまりに過度となり周囲のお客も困惑しているような場合、あなたならどうしますか?

店員さんに伝えて注意してもらう、というのはセオリーかもしれない。ただ、店員さんも大変だなぁと思うのは、逆ギレされたり、このご時世SNSでお店や店員個人への悪口を書かれたりという可能性も否定出来ないことだ。かといってお客自ら注意するというのはあらぬトラブルを惹起せしめることになりかねない。

黙ってガマンするというのもアリだが、やはり気になって食事の味もわからなくなりそうだ。たとえば、ご近所・隣人問題であれば、末永い長いお付き合となかなか言い出しにくいこともあるだろうが、飲食店で偶然居合わせたば相手は知り合いでもないし、ここだけの関係と旅の恥は掻き捨て的に注意しようなん人もいるかもしれない。その飲食店では特に店からも何らかの対応はなかったが、筆者が退店する時もまだまだ盛り上がりトークは続いていた。

閑話休題。結局階上の騒音は22時55分まで続いた。翌朝、ホテルの人にそれとなく伝えたところ「そういう時はご一報下さい」と教示いただいた。「空室があればルームチェンジもできますので」とのこと。騒音時にもちろんそれも考えたが、すぐに止むと思っていたし、夜が遅くなっていくにつれ何より荷物をまとめたり片付けたりするのが面倒ということもあった。

ちなみにそういう時のために「たとえ満室の予約が入っても予備の客室を準備しておく」という話を聞いたことがあるが、とあるビジネスホテルの支配人は「以前勤めていたシティホテルではそうでしたが、いまのホテルでは全て埋めてしまいます」と話してくれた。でもそういう時はどうするのですか?と問うと「さぁどうしましょう…」と黙り込んでしまった。

結局この日は23時近くまで足音が鳴り響いた(筆者撮影)
結局この日は23時近くまで足音が鳴り響いた(筆者撮影)

別のホテルで知り合いのスタッフとこのことについて聞いてみた。ルームアサイン(客室の割り当て)の際に、子連れファミリーと想定できる場合や団体などまとめて階下にするなど臨機応変に対応するという話をしてくれた。

そうした予防的方策にもかかわらず、騒音問題が発生した場合、某ビジネスホテルの支配人によると「お客様から直接苦情を伝えるのはトラブルを誘発するので絶対やめてほしい」と話した。「フロントに伝えてくれればホテル側から注意することもある」という。でも「下のお客様から苦情がありまして-」と伝えられたとしたら、逆上されたりと結果同じようなものかとも思ったが、なるほどという話をしてくれた。

他のお客様から苦情がありましてとは伝えず、館内を巡回してましたところ-とさりげなく伝えるという。実にナイスである。と、いまこんな原稿を飛行機内でキーボードにタッチしつつ書いているが 隣席や前後の方に迷惑になってはいけないと、飛行音にうまくかき消されるようそおっとそおっと打っている。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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