ポケモンGOの日本サービス開始後に注目すべき3つのバトル
ポケモンGOがアメリカでメチャメチャ盛り上がっているようです。
何しろ、アプリのアクティブ利用者が2000万超えてあっさりツイッターを抜いてしまったり、アプリのセールスランキング1位に世界最速でいきなり入ってきて任天堂の株価が一週間で50%もあがったとか、いわゆる「位置ゲー」と呼ばれるゲームの歴史どころか、スマホゲームの歴史を一気に塗り替えていっています。
なにしろ米最大のスマホゲームに上り詰めてしまったというからスケールがデカイです。
■「Pokemon GO」米最大のスマホゲームに ユーザー数、史上最多
特にアメリカの盛り上がりを見る限り、これは社会現象と呼んでも良いレベルのブームと言って良いでしょう。
そうなると、とにかく日本人として悲しいのは、このポケモンGOが未だに日本ではプレイできないという現実。
私自身、昨年のポケモンGOのイメージ動画を見てから、リリースの日を今か今かと半年以上心待ちにしていた人間なので、先週の米国での先行リリースから毎日のようにタイムラインにポケモンGOの記事があがってくるたびに、正直、日本でプレイできない現実にどんどんイライラが募る日々が続いています。
まぁ、13日には48時間以内にリリースされるという噂がかけめぐったり、土曜日に開催されるイングレスの大規模イベント終了まではリリースされないんじゃないかとか、7月下旬にポケモンGOプラスが発売される予定だからその前にはリリースされるだろうとか、サイトの2016年7月サービス開始予定の表記から7月が消えたから7月は絶望的だとか、いろんな情報が錯綜していますが。
日本で実際にリリースされたら、私自身ポケモンGOの世界に旅だってしまって帰って来れなくなるぐらいハマってしまい、ポケモンGOに批判的なことを書けなくなるのは想像に難くないので、日本リリース前にあえて少しネガティブなことを書いておきたいと思います。
既に米国でも、いろんな物議を醸し始めているようですが、個人的にはポケモンGOが日本でリリースされた後に、大きく3つのテーマの議論が激しさを増すのではないかと思っています。
それがこの3点です。
■現実社会のルールとポケモンGOのユーザー行動とのバトル
■ポケモンGOをどう子ども達に楽しんでもらうかのバトル
■従来のスマホゲームのアイテム課金の常識とのバトル
一つずつ紹介しましょう。
■現実社会のルールとポケモンGOのユーザー行動とのバトル
これは米国でもすでに様々な騒動がおこっているようですが、イングレスにおいても発生したもので「位置ゲー」の宿命とも言える現象でしょう。
ポケモンGOは、現実世界にゲームの仮想世界を重ねることで移動しなければプレイできないゲームです。
そのためプレイヤーは、レベルを上げたりアイテムを入手するために、仮想世界上にある様々な場所に行くために実際に現実世界のスポットに行く必要があります。
で、当然それは現実世界のルールと違うので衝突するんですよね。
これはこれで、だからこそ仮想世界でスポットになったお店に実際にお客さんがたくさん来るみたいなポジティブな効果も生むわけですが、一方で深夜に私有地にプレイヤーが入り込んだり、公共の場所にゲームをプレイしている人が多数集まることで、普段の活動をしている人たちからすると薄気味悪かったりという現象が起こるわけです。
米国では現在のところ問題はありつつも、総論はポジティブに受け止められているようですが、日本はAirBnBにしてもUberにしても新しいイノベーションに対して保守的に批判する傾向が強い印象がありますので、深刻なトラブルが発生した場合にメディアがどのように取り上げるかというのが注目点かなと思います。
例えば日本では「歩きスマホ」を危険な行為として、交通機関や公共機関が禁止とは言わないまでも注意勧告をしはじめているのに対して、ポケモンGOは基本的に歩きスマホが前提となるゲームです。鉄道の駅でポケモンGOで事故でも起ころうものならメディアの見出しを飾るのは想像に難くありません。
これがLINEとかFacebookをスマホでしていて事故したなら「スマホ操作中の事故」となりますが、ポケモンGOをしていて事故をしたら直近は確実に「ポケモンGOで事故」という記事タイトルになりますからね。
それによって、駅でのポケモンGOは明確に禁止になってしまうとか、駅のポケストップが全部強制消去されるとか、ありえないわけではないわけです。
ま、これはこれだけでいくらでも議論できるんですが、とりあえずこの辺にするとして。
■ポケモンGOをどう子ども達に楽しんでもらうかのバトル
次に個人的に特に注目しているのが、もともと子供向けのゲームであるところのポケモンの位置情報ゲームであるポケモンGOは、子供達にどういう遊び方を提案するのかという点です。
現時点ではポケモンGOを遊ぶにはスマホが必須。
となると、スマホを持っていない子供が親にスマホ購入をねだる、という絵が容易に想像つきます。
当然子供にスマホを持たせるということには様々な議論がありますから、スマホを買ってもらえない子供は遊べない、という問題が出てくるわけです。
きっと、この家庭内バトルは熾烈を極めるでしょう。
我が家でも仮に私が息子とポケモンGOを楽しもうと思っても、妻がその為だけに息子にスマホを買うのを許可するとはとても思えません(苦笑)
ポケモンGOは大人向けのゲームなんだからスマホ必須で良いじゃ無いかと言っている人もいるようですが、ポケモンGOの開発元のナイアンティックの川島さんはポケモンGOの予告編が公開された際にGoogle+に「この(イングレスの)体験を子供の世界へとさらに広げていくことという挑戦に、岩田さんは、力強く頷いてくれた。」と明確に書かれています。
参考:やっと発表することができた。岩田さんが逝去された時も、公にメッセージを書いたりできなかった。
つまりポケモンGOはイングレスが証明した、ゲームの力で家に閉じこもっていた人々を外の世界に連れ出せるという体験を、子どもの世界に拡げていく挑戦、として最初から位置づけられているわけです。
その為の一つの手段がポケモンGOプラスというオプション製品ということになるはずです。
ただ、今のところ海外のポケモンGOのプレイレポートを見る限り、やはりポケモンGOプラスがあってもほとんどの操作はスマホが必須と言うことは変わらないようですから、仮に親と一緒に子どもがポケモンGOプラスでプレイしたとしても、子どもにとっては不十分な体験になりそうな印象です。
そういう意味で、子ども向けの本丸であるニンテンドーDSもしくは次世代機で子ども向けポケモンGO対応ということがありえるのか、もしくはポケモンGOフォン的な専用端末が出てくるのか、というあたりが非常に気になるところです。
■従来のスマホゲームのアイテム課金の常識とのバトル
これは前述の子ども向けというところと密接に関連するテーマですが、従来のスマホゲームは基本的にゲーム自体は無料でプレイできるが、特別なアイテムやゲーム内の通貨を買うために課金が必要という「アイテム課金」という手法が中心です。
これに対して従来のポケモンは定額のゲームを購入すれば全ての要素をプレイできるという「パッケージ課金」でした。
一見、アイテム課金の方が無料でプレイできるわけですから子どもにとってハードルが低いように見えますが、実はアイテム課金は、その特性上お金を持っている人が強いという構造になりがちです。
パッケージ課金であれば、最初に数千円が必要でも後は公平な条件でプレイできます。
子どもの場合は通常はパッケージを買うのは親や祖父母ですから、誰かに買ってもらいさえすればあとは無料。その後は、自分達の知恵や努力で強いポケモンを育て、ライバルと工夫しながら戦っていくというのがポケモンの基本的な世界感です。
一方でアイテム課金は、どうしても課金アイテムはお金を持っている大人の方が自由に購入できますから、当然大人が有利になりがちです。
でも、金持ちが勝って当然という世界感は、子ども達はもちろん、純粋なポケモンファンや任天堂ファンからすると、確実に違和感を感じるポイントになります。
この点に対してはポケモンGOの発表会で石原社長も明確に「本当に多くの人が薄く広い課金によって皆がフェアに遊べるような課金方法を考えていきたい。具体的には言えないが少数の人間が射幸心高く、課金するという方向とは間逆の仕組みを考えていきたい。」と発言されています。
参考:ポケモン×イングレスな『Pokemon GO』発表会 リアルタイムレポート
つまりポケモンGOは、現在のスマホゲームの課金システムの常識に対する宣戦布告も行っているわけです。
残念ながら実際にまだプレイしていませんので、この課金システムとゲームバランスが具体的にどうなっているか本当のところは分かりませんが。少なくとも他のスマホゲームにありがちな、お金をつぎ込んでガチャを回し続ければレアなポケモンがゲットできるという金持ち無双な射幸性が強いシステムは、明らかにポケモンGOは選択していないようです。
それやれば間違いなく短期的には儲かるんですけどね。ポケモンがそれやったら終わりなわけです。
これをみなさん当然だと思うかもしれませんが、基本無料でアイテム課金型のオンラインゲームとか、長い時間かけてレベルアップしたキャラが、高額アイテムでフル装備になってる初心者にアッサリやられる、みたいなの結構普通にありますからね。
そうでもしないと普通はなかなか無料でプレイできるゲームに課金をしてもらえないわけです。
今回、ポケモンGOがそれにもかかわらず、アプリの売上ランキングでいきなりトップに入ってきたのは凄いことと言えるでしょう。
ポケモンGOは収益と子ども達の夢の維持の両立ができるか
ただ一方でこういった記事が出るように、今後収益性に対する投資家からのプレッシャーは当然高まることになります。
参考記事:「ポケモンGO」大ヒット、任天堂どれほど利益得るか
ポケモンGOは順調な課金のスタートを切っていますが、任天堂が本業で苦戦していることを考えると、今後は、よりポケモンGOによる利益確保のプレッシャーが高まることは容易に想像されます。
まぁ、そもそもポケモンGOとイングレスを運営しているナイアンティックはGoogleを要するアルファベットグループの一企業ですから、ある意味実験的な取り組みとしてそれほど課金はガツガツせずに、ここまで伸ばすことができてました。
ただ、だからこそイングレスがスマホゲームの課金ランキングのトップ争いで見かけることはほとんど無い印象です。
(一方でイングレスはB2Bのスポンサーをいくつも獲得しているので、広告モデルの収益がありますから、ポケモンGOも同様の事業は当然視野に入れているでしょう。)
一般的にはポケモンGOやイングレスのように射幸性が低いゲームというのは、ユーザーの課金という意味での収益率は低い、ということを意味するわけです。
そもそも、任天堂が鳴り物入りでリリースしたスマホゲームであるMiitomoが初期の話題の盛り上がりに比べると一気に失速してしまったという現実もありますから、現在の課金ランキングのトップ入りは、試し買いによるご祝儀みたいなものである可能性もあるわけで、引き続き高い課金率が維持されるかどうかはまだ未知数なわけです。
そういう意味で個人的に注目したいのは、この収益と子ども達の夢を壊さないというバランスを、ポケモンGOが今後も維持・拡張していくことができるのか、それによりスマホゲームにおいて「薄く広い課金」という新しいビジネスモデルが確立できるのかという点です。
これが難しい議論であることは間違いありませんが、いくつものゲームメーカーが、儲からない据え置き型のゲームから収益性の高いスマホゲームに軸足を移している中、据え置き型ゲームの元祖である任天堂とポケモンとナイアンティックが、どうやってこの難しい議論の答えを出しているのか。
非常に注目したいポイントになるわけです。
実際にはポケモンGOの運営元は任天堂でもポケモンでもなくナイアンティックなので、ユーザー課金や企業向けメニュー提供だけでなく、任天堂としてはポケモンGOが盛り上がることで関連グッズやニンテンドーDSのゲームが売れるようにする、という選択肢もあるわけで、ブレストのテーマとしては非常に面白いテーマになるでしょう。
ポケモンGOは米国のゲーム?日本のゲーム?
まぁ、いずれにしても、実は個人的に一番ショックだったのは、日本発のポケモンを元にしたポケモンGOだから当然のようにサービス開始は日本からだと思い込んでいたら、あっさりスルーされてしまって、米国スタートでイライラしているうちに海外のプレイヤーがどんどんレベル10とか11とかあがっていてレベルアップバトルに負けている上に、日本が米国とのポケモンGOの生みの親バトルにあっさり負けてしまったということなわけです。
もう明確に「ポケモンGOは米国のゲーム、日本は後回し」とか言われちゃってますからね。
腹がたつわけですよ。
しかも言ってる人が知り合いのトトさんだったりするから、余計にイライラするわけですよ。
日本のポケモン20年の歴史をなめるなと言い返したいわけですよ。
本当ならこっちも負けずにポケモンGOをやりこんで、このゲームバランスは任天堂の魂がなければ作れなかったとか、米国人だけではこの世界観は作れない、とか、せめて米国のゲームと言わずに米国と日本のマリアージュとか言ってくれとか、言い返したいわけですけど、何しろ実際にプレイできてないわけですから全ては想像です。
反論しようにも反論させてもらえないわけです。
いや、私がしたいのはポケモンGOのバトルであって、言論のバトルではないわけですが。
文字通りのジャパンパッシングに、悲しみが止まりません。
ということで、まだまだ言いたいことはたくさんあるのですが、異様に長くなってしまったので今日のところはこの辺で。
フタを開けたら三連休が開ける前には日本でポケモンGOがプレイできていた、というオチになることを心の底から祈りながら週末を迎えたいと思います。