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台風15号は雨台風 下層暖湿流がもたらす豪雨

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
上空約500mの暖湿流と風の予測(31日明け方)。赤が濃いほど熱と水蒸気が多い。

台風15号は、30日現在、東シナ海を九州に向かって進んでいます。

最大風速は18メートル。17.2メートルを下回ると「熱帯低気圧」にランクダウンするので、ぎりぎり台風として残っている状況です。ただ、今回の15号は崩れても、豪雨のリスクは減りません。

15号は雨台風

気象を伝える仕事をすると、「雨台風や風台風という言葉は、台風が近づいている時は使わない」と教えられます。雨台風と聞いて、「風はそれほどでもない」などと思い込まれないようにするためです。当然、台風ですので、どちらも強いわけです。

今回の15号も、広範囲での台風らしい暴風雨はないものの、風は各地で強まり、波も高まります。ただ、それを考慮しても、今回は雨台風としての面が強い台風です。

豪雨の原材料、大気下層の暖湿流

台風15号は、このあと少し持ち直す可能性もありますが、九州に近づく頃には、台風としての形が崩れた状態で、その後、秋雨前線に取り込まれます。

ただ、形が変わっても、熱帯から運んできた大量の熱と水蒸気は、急には減りません。その大気下層の暖湿な気流が、豪雨の原材料となります。

最近の予測手法では、上空500メートルなど、より大量の水蒸気が含まれている地表に近い所の空気の流れに注目しますが、今週末は、九州~東北北部の広範囲に、大量の水蒸気が流れ込む状況です。特に、秋雨前線に近い日本海側で、豪雨の危険度が高まります。

また、それだけの水蒸気があれば、前線から離れていても雨雲は急発達することは十分ありえます。太平洋側でも、天気の急変に気が抜けません。

「全国的に」のジレンマ

台風の接近で、すでに週末のイベントの中止を決めた所もあるようですが、「そこは中止にしなくても大丈夫なのに…」と感じる所もあります。

たしかに、広範囲で影響は出るので我々も全国的に警戒を呼びかけます。ただ、対象の全域で荒天ということはありません。一方で、警戒情報を伝える時に「●●の地域は大丈夫です」と伝えるのは難しいというのが、悩ましいところです。

詳細に見ていけば、台風や前線の影響が、ほぼない地域もあります。警戒が必要かもしれない状況と把握しつつ、必要であればピンポイント的な予報や天気の個別相談を活用してください。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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