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【全国高校駅伝前日】ルイジアナ州立大留学予定の澤田は1区に。特徴はアフリカ選手のような大きな動き

寺田辰朗陸上競技ライター
日本陸連の認定するダイヤモンドアスリートに選ばれた澤田結弥(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 全国高校駅伝(12月24日:京都市西京極陸上競技場発着男子7区間42.195km、女子5区間21.0975km)の区間エントリーが、大会前日の23日に発表された。日本陸連の次世代アスリート強化育成プログラムであるダイヤモンドアスリート。現在高校生として認定されているのが女子の澤田結弥(浜松市立高3年)と、男子の永原颯磨(佐久長聖高3年)だ。澤田は女子1500mで4分12秒87の高校歴代2位を、永原は男子3000m障害で8分32秒12の高校記録を持つ。ともに1区にエントリーされた。

 大会前日に浜松市立高の杉井將彦監督に、澤田の走りの特徴を聞いた。

澤田の特徴は「長い距離を走らない」(杉井監督)こと

 澤田の走りの特徴は「アフリカ選手のようなダイナミックな動き」(杉井監督)にある。昨年のU20世界陸上の決勝だった。800 mを2分08秒で通過した。1500mに換算すると4分00秒のハイペースだ。「経験がなかったからよかったのかもしれません。澤田はそれに付いて行ってしまいました。後半はダメかな、と思ったのですが、なんとかこらえて4分12秒でゴールしてくれました」

 そのレースの澤田の動きが、杉井監督の目には「脚の動きがアフリカ選手とシンクロしていた」と映った。

「股関節を使った大きな動きです。上半身は少し硬くてブレがあるのですが、下半身についてはアフリカの選手と同じ。すごく興味深く見ていました」

 その動きを澤田が、どうしてできるようになったのか。中学ではバスケットボールを行っていたことも一因だろう。だが一番は「長い距離をやっていないから」と杉井監督。

「ドリルも同じですけど、長い距離をやればやるほどバネのない動き、小さい動きになっていく選手が多い。ペース走は6000mくらいしかやりませんし、ビルドアップもそのくらい。長くても8000mです。インターバルだったら1000m2本と400m2本とか。レペも2000m1本と400mとか。そのくらいしかやりません。常にダイナミックな動きが引き出されることを考えてのメニューです」

 今年8月の世界陸上女子やり投金メダルの北口榛花(JAL)や、同大会男子100mで2大会連続入賞のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)ら、日本陸連がダイヤモンドアスリートに認定した選手たちが、近年シニアの世界大会で活躍している。所属チームの頑張りが大きいが、日本陸連が海外留学や座学で、選手の意識を高く持たせていることも成長を後押ししている。

 杉井監督は日本陸連強化委員会のU20担当シニアディレクターでもある。高校卒業後の澤田は、米国ルイジアナ州立大に留学予定だ(日本陸連サイトの本人コメント)。高校生ながら澤田は、世界で戦うことを意識した強化の流れに身を置いている。

杉井監督は「区間賞は甘くない」と釘を刺すが…

 澤田の出場区間は1区(6.0km)。報道では澤田自身は区間賞を目標にしているが、杉井監督は「そこまで甘くないのでは。長い距離は走っていませんから」と楽観論に釘を刺す。

 実際のところ、今季は好調とは言えないシーズンだった。疲労骨折があり8月のインターハイを欠場。10月の国体も9位に終わった。静岡県高校駅伝(11月4日)は貧血の影響もあって5区に回り、区間賞は取ったが16分46秒と記録的にはよくなかった。

 同26日の東海高校駅伝は1区で区間賞、タイムは19分47秒だった。全国大会とコースが違うので単純比較はできないが、全国大会の区間記録は18分52秒(05年。新谷仁美・積水化学)で、昨年の区間賞は19分20秒(水本佳菜・エディオン)だ。

 トラックの5000mは数えるほどしか出場していない。1区6kmを走り切れる明確な根拠は、レース実績でも練習実績でもない、ということになる。

 だが、今年の高校駅伝各地区大会の1区区間賞は東北が19分59秒、関東は19分43秒、北信越も19分43秒、近畿が19分32秒、中国は19分44秒、四国は20分04秒、九州が20分14秒。これも単純比較はできないが、タイムだけを見れば澤田が区間賞を狙って不思議ではない状況だ。

 澤田の潜在能力が高いのは関係者の共通認識だろう。昨年のU20世界陸上のように、後半で粘りを発揮する可能性もある。澤田が区間賞争いをしても不思議はない。

陸上競技ライター

陸上競技専門のフリーライター。陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の“深い”情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことが多い。地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。座右の銘は「この一球は絶対無二の一球なり」。同じ取材機会は二度とない、と自身を戒めるが、ユーモアを忘れないことが取材の集中力につながるとも考えている。

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