値上げが続くたばこ 「たばこ」による税収の推移を振り返る(2024年公開版)
たばこはこの数年、毎年のように値上げしており、現在主力銘柄の「メビウス」(20本入り)は580円となっている。しばしばたばこ税の増税によって値上げされる雰囲気のあるたばこだが、喫煙者は漸減していることが各種調査によって明らかにされている。それではたばこ販売による税収はどれぐらいなのだろうか。各種公開資料を用い、税収の実情を確認する。
たばこの販売そのもので得られる税収は、「たばこ税(国税)」「たばこ特別税(国税)」「たばこ税(地方税)(都道府県税と市町村税から構成される)」の3項目から成るたばこ税、そして消費税で構成されている。
このうちまずは「たばこ税」の推移を確認したのが次のグラフ。国税および特別税は財務省の公開資料から逐次会計年度の確定値を抽出。地方税は総務省の公開資料の中から逐次確定値(都道府県税と市町村税を別途確認した上で合計する)などを抽出していくことになる。
「たばこ税の漸次引き上げにより税収は漸増」という話はよく見聞きするが、それは単なる想像上のものでしかなく、実際には前世紀末から、たばこ販売によるたばこ税の税収は2兆円強のままでほぼ横ばいとなっている。むしろたばこ消費量の減少により、2008年度あたりから税収も漸減。2010年度以降は2010年10月のたばこ税大幅引き上げにより、どうにか息を吹き返し、2兆円割れの懸念を振り払った形となっている。ただし2011年度をピークに再び税収は漸減の動きを示し、2018年度以降は2兆円割れ。2021年度でようやく持ち直した感ではある。たばこ税の一部銘柄における軽減措置が撤廃され、たばこ税そのものの引き上げが行われるのも、税収の実情を見れば納得ができる動き。
ちなみに次のグラフは日本たばこ協会のデータを基にした、同期間における紙巻たばこ販売本数の推移。前世紀末をピークに漸減、この数年は大きく下降傾向にあることがうかがえる。2013年度は前年度と比べてわずかに増加しているが、これは2014年4月の消費税率引き上げに伴い、3月までに駆け込み需要が発生しており、その影響を受けたものと考えられる。その分、2014年度は大きく減少している。2015年度の上昇分も、2016年4月からのJTによる主要銘柄の価格引き上げに伴う駆け込み需要が影響したのだろう。案の定、2016年度以降は大きな減少を示す形となっている。
なおたばこ税がかかるたばこには紙巻たばこ以外に、加熱式たばこやリトルシガーがあり、2020年度分から日本たばこ協会で販売データなどが公開されている。今記事で勘案されているたばこの税収には、加熱式たばこやリトルシガーからのたばこ税も加わっていることに注意が必要。
2017年度以降の本数の減少の仕方がやや大きめに見えるのは、加熱式たばこやリトルシガーなどにシェアを奪われているのが原因だと考えられる。
ちなみに、たばこ税と消費税とは換算方法など体系的に異なる部分があり、ひとまとめにするのにはリスクが生じるものの、たばこ関連の税金に、たばこにかかる消費税を単純に積み上げた結果が次のグラフ(紙巻たばこだけでなくリトルシガーと加熱式たばこも、販売金額が公開された2020年度以降について勘案)。
たばこ税と比べれば消費税による税収は大きなものではなく、全体の動向に変化を与えるものではない。消費税率が引き上げられ、引き上げ分の消費税額は増加したものの、販売本数が大きく減ったことでたばこ税は減り、税収の総額はむしろ減少する結果が出てしまっている(2020年度以降は値上げやリトルシガーと加熱式たばこの盛況ぶりで増加しているが)。
「たばこによる税収は時代の流れとともに漸増している」といった話は単なる憶測に過ぎず、税収そのものはおおよそ横ばいで推移しているのが現実。むしろ2008年度からの動きを見る限り、たばこの消費量の減少に伴いたばこによる税収の減少を危惧して、税率を上げているとすら思える。つまりたばこによる一定税収の確保のため、たばこ税率は引き上げられていると考えれば道理は通る。
無論「税率引き上げによりたばこの代金が上がることで、喫煙者の喫煙を抑えることができる」との健康面からの施策効果への期待も、たばこ税の引き上げの一因。しかし税収の実情の限りでは、大義名分に過ぎないような気がするのだが。
「高齢化の進展による社会保障関係費の増加等もあり、引き続き国・地方で厳しい財政事情にあることを踏まえ、財政物資としてのたばこの基本的性格に鑑み、たばこ税の負担水準の見直し等が行われました」
との記述があることを記しておく。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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