アメリカの小売りの現状、内食・中食・外食のボーダーレス化
アメリカスーパーのデリ事情
食品スーパーの売り上げはここのところ堅調な売り上げとなっている。
月別売上高2013年と2014年の比較 (億円)既存店ベース
好調な売り上げを牽引しているのは、生鮮3品によるところが大きいとされ、中でも惣菜の利益率は最も高い。
とはいえ、時代は急激に変化しており
「アメリカのスーパーを見ると、日本のたどる道が見える」
「見ておいた方がいい!間違いない」
ということで急きょ、アメリカのスーパー事情、その他、もろもろ把握すべく、一人視察。
ここでは今回、ホールフーズそしてWEGMANSを取り上げることにしました。
共通点
・オーガニック
・内食・中食・外食が一つの店舗で集約
・店舗内でのイートインスペースの充実
日本のスーパー
日本のスーパーの現状を見ると、業界再編はめまぐるしく,失礼を承知の上であえて言うと、そのためもあってか、多くの日本の小売り(スーパー)は統合が進むにつれ、売り場は金太郎飴と化している。従来の売り場に少し手を加えるだけであれば、当然のことながら、急劇な高齢化が進んでいる今、スピードについていけない。つまり社会のニーズと売り場との乖離が起こっているのだ。
アメリカのとりまく環境
日本は2010年から高齢化に突入、そのスピードは急激である。一方、アメリカは高齢化は65歳以上は増加してもそのスピードはゆるやかで2000年から2010年18歳未満は減少10年間で1%減少している(米国国勢調査)。年齢中央値もアメリカが37・2歳。日本は約10年近く高齢の44・7歳。年齢・総人口の年齢の中央値
しかも今後、移民受け入れからアメリカの人口は増加が予想。因みにアジア系は2012年から2013年で比較すると6%増。既にアメリカの人口は日本の約3倍、しかも人口密度は広大な土地もあって日本の10分の1。
食の状況
アメリカの2012年の食費に目を転じると、6599ドル。これを当時、ちょっと円高すぎて参考にならないのを承知の上、平均$80、82円(三菱UFJリサーチ&コンサルテイング参照)で換算すると527920円。100円で換算したとしても659900円。
一方、2012年日本の食費768690円(国勢調査)
あくまで単純計算であるが、日本はアメリカに比べ、食費が高い。
エンゲル係数についても、日本のエンゲル係数は約20%、対し先進国の中でアメリカは最も低く7・6%。
この2つ(人口、食費)の事柄のみで見解を述べるのは難しく、例えば、アメリカでは雇用の規制もない。仕入れの方法も違う。当然、バイヤーの役割、マネージメントもおのずと違う。
しかし、アメリカが日本ほど高齢化が進んでいない状況で、これほどまで外食・中食・内食の融合した売り場を見ると、日本のスーパーの多くは大丈夫なのだろうかとさえ思ってしまう。
ホールフーズ
ホールフーズは、オーガニック商品の品ぞろえの充実で売り上げNO1のウオルマートと違った立ち位置に君臨し、売り上げは全米14位(2014年の調べ)。オーガニックを扱うスーパーとしてこれほどまで成長したのには、2000年の「連邦オーガニック基準」の発効によるところが大きいとされる。これは州をまたいで認証オーガニックが販売可能となったのだ。これによりホールフーズの出店攻勢ははじまったと言える。勿論、日本と違い、アメリカの天候、土壌(日本は酸性)もオーガニック野菜にとって適用しやすいことも大きい。
今回、訪れた店舗の一つNew Yorkのど真ん中にあるコロンブスサークルにあるホールフーズ。
ニューヨークの地代は世界的にみても高いというのはご承知の通り。
しかし、コロンブスサークルのホールフーズは、ニューヨークの中心地で地下にあるこの店舗は6万平方スクエアー(約5500平方メートル)を構える。標準のホールフーズの売り場の倍の作りである。エスカレーターを降りると、パノラマのように生花、青果、生鮮が視界に入ってくる。
ホールフーズ 購入惣菜をその場で食べる日常化
壁面惣菜、中央にもゴンドラで惣菜が設え、そこには多人種でも対応できる惣菜商品、サラダブッフェが陳列している。野菜の30%はオーガニック。いずれの店舗も最大の面積を占めているのがいろいろな種類が選べる惣菜売り場である。
時間帯ごとに売り場の顔が変わり、朝は、玉子料理、パンケーキなどの朝食が揃い、昼前にはベーカリー、ペーストリー、サラダ、パスタ、ピザ、スシを含めたエスニック料理、肉、鳥料理などのブッフェのゴンドラが設えてある。日本のスーパーを時間帯別で見ると、昼食の弁当、夕食の品揃えが変わるとしても餃子、唐揚、とんかつなどのパック売りであり、イートインスペースも片隅に少しちょこっと。
さてホールフーズでは「おすすめは?」と聞くと、いくつかのサラダの中から従業員のおすすめをカップによそってくれ、試食サービス。説明が必要と思える高価値商品は対面販売となっている。イートインの近くにはスムージーがあり、大きなコップになみなみと野菜ジュースが注がれる。
ちなみにコロンブスサークルは250席の広さのカフェがあり、いつでも一人で食べても問題がない。
トレーダージョーズはホールフーズとは主要顧客は似ていることもあり、互いに「競合」と言っている。値ごろ感もあるトレーダージョーズはNew York州内に19店舗構える。
グルメ・健康な食品、飲料のPB商品は8割で占め、しかも低価格であることがここの強み。
次にBoston。
WEGMANS Chestnut Hill 店
中心地より車で10分。Boston郊外にあるWEGMANSChestnut Hill。 レジ近くにあるゴンドラ数台には、朝食に対応した熱々の商品、多様な人種を考慮したエスニック料理、中華などの惣菜、この他にサラダバー、温惣菜にはローストチキンなどがブッフェ式になっており、セルフでとれるようになっている。有機食品は3000品目。デザート、エスプレッソバーを1か所にまとめ、わかりやすい。ここでもホールフーズほどの席数はないにせよ、イートイン100席が設置されている。
すぐ近くにある自分の場所、それがスーパー
これまで日本のスーパーは、生鮮3品があることから、弁当専門店、コンビニには出来ない品揃えがあり、それが差別化となった。その後、コンビニのインフラ化に押され気味である。今後、生鮮産品の強みをいかしつつ、一つの店舗に朝食・昼食・夕食も店舗内で食べられ、半調理の商品、野菜の買い物でまでも出来る。その選択肢は内食・中食・外食にいった枠を外した提案で、顧客の行動範囲内にそんなスーパーがあることが求められる。なぜなら行動範囲が狭い、調理への煩わしさもある高齢者への囲い込みとしてカギになるからだ。言うのは易しですが・・・そして縦横無尽の売り場を作ったならば、コンビニとは違う立ち位置になりえる。勿論、雇用も大切で就業する前から学生アルバイトの奨学金制度を設け、スーパーに就職してもらうWEGMANSの仕組みは多いに参考となる。今回、WEGMANSに行くと、アットホームな温かいサービスと親切に直に触れ、レジでの丁寧な対応には感心したものだ。しかしこのような家族的な雰囲気を作るには、それなりの時間が必要であり、にわか仕立てでは出来ない。そしてこういった従業員の質の高さがあってこそ、ようやく外食、中食、内食のボーダレスな売り場が生きるのである。勿論、商品も大切で従来、ややもするとセレクト=開発というスーパー概念からの脱皮も必要で、商品化する上でジャッチ出来る知識力、開発力が求められる。地道に従業員の育成、そして仕組みを構築させることで、ようやく高齢化への対応策も見えて来ると思う。