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【泉佐野市】一体何が。「クリスマスケーキやめました」街のケーキ屋の12年目の決断に驚きと『感謝の声』

旅する日々の記憶と記録。matka08ライター(泉佐野市など)

2022年の暮れに大きな反響を呼んだ記事。

クリスマスシーズンに「バースデーケーキづくり」に奮闘する街の小さなケーキ屋さんをご紹介する記事でしたが、あれから一年、そのお店を営むご夫婦が”ある決断”をしたと知り、お話をうかがいに再び訪れました。

(取材日 2024年1月9日)

街の小さなケーキ屋さん「15:00(ジュウゴジ)」

南海本線「りんくうタウン」駅から徒歩5分。ハイセンスな佇まいが一際目を引く「15:00(ジュウゴジ)」は、街の小さなケーキ屋さん。(Googleマップ参照)

クリスマスシーズンも 「最も大切にしているのはバースデーケーキ」と、一年に一度訪れる大切な日のために「バースデーケーキ」を作り続けるご夫婦の姿に地域のみならず多くの人が感銘を受けています。

そんな「15:00(ジュウゴジ)」が昨年の暮れに “あること” をsnsで発表しました。

「クリスマスケーキやめました」

この“決断”を目にした時は、驚きと取材当時のご夫婦の姿を想い出し、胸に熱いものが込み上げました。

1年前(取材当時)は、「バースデーケーキ」を大切にしているとはいえ「クリスマスケーキ」のオーダーも受け付けていたはず。

オープンから12年目にして一体何があったのでしょうか。

店主の丸茂 秀樹さんと奥様の梨佐さんにお話をうかがいました。

「クリスマスケーキをやめる」と知り、とても驚きました。一体何があったのですか?

(秀樹さん)「正直、葛藤はありました。ケーキ屋にとってクリスマスシーズンは書き入れ時ですから。ですが、多くのケーキ屋がクリスマスシーズンに『バースデーケーキ』の予約を断る中、『15:00(ジュウゴジ)』はクリスマスシーズンも変わらず『バースデーケーキ』を作り続けてきました。

おかげさまで順調にケーキのオーダー数も増え、昨年の暮れは『クリスマスケーキ』約200個、『バースデーケーキ』約150個のオーダーをいただきました。でも、実は『バースデーケーキ』はもっとオーダーをいただいていたんです…」

急にお二人の顔が曇りはじめました。どうやら昨年末のある出来事が‶決断“ のきっかけとなったようです。

(2022年12月撮影)
(2022年12月撮影)

(梨佐さん)「昨年は、早い段階で『クリスマスケーキ』の予約でいっぱいになってしまい、12月上旬に『バースデーケーキ』の受付を締め切らせていただきました。ですが、その後も『バースデーケーキ』を求める方から多くの問い合わせがありまして…。二人で製作しているため、作る数にも限界があります。心を痛めながら断り続けた結果、何十件もの『バースデーケーキ』をお断りする事態となってしまったんです。毎年すべてのオーダーをお受けすることはできませんが、さすがにそんなにお断りしたのは初めてです」

「クリスマスケーキ」約200個、「バースデーケーキ」約150個をたった二人で製作することを思うと、お断りする状況も致し方ないとは思いますが…

「となりで作業中です。呼び鈴鳴らしてください」作業中も来客や電話の応対に追われる二人。定休日(火曜)も予約が入ればケーキを作る、といいます(2022年12月撮影)
「となりで作業中です。呼び鈴鳴らしてください」作業中も来客や電話の応対に追われる二人。定休日(火曜)も予約が入ればケーキを作る、といいます(2022年12月撮影)

(秀樹さん)「さすがに何十件もお断りしたことは僕たちもショックでした。そんな中、ある一人の女性が来店されました。“6歳になる息子のために『バースデーケーキ』をオーダーしたい”とのことでした。その男の子の誕生日は12月24日。どこへ行っても『バースデーケーキ』を作ってもらえず、今まで『バースデーケーキ』を諦めてきたそうです。ですが、もう『バースデーケーキ』の受付は終了しており、みなさんにお断りしている状況です。心苦しかったのですが、心を鬼にしてお断りしました。

『わかりました』と肩を落として帰ろうとする女性が再びこちらを振り向き切実な声でこう言ったんです。『どうしたらクリスマスにバースデーケーキを買ってやる夢を叶えられますか?』と。僕は呆然とその場に立ち尽くし、しばらく動くことができませんでした。その時、心の中で何かが弾けました。結果、僕はそのオーダーを引き受けることにしました」

(梨佐さん)「後日、その女性が息子さんと一緒に来店され、クリスマスケーキじゃない自分だけのバースデーケーキを見た瞬間の少しはにかみながらも目をキラキラさせてよろこぶ姿、『初めてなんです! 良かった!』と感動するお母さんを見て、モヤモヤしていた気持ちがパッと晴れたんです。その日、主人と二人で『クリスマスケーキは今年で終わりにしよう』と決断しました」

その後、お断りした方々への罪悪感に苛まれた、とお二人は話します。

『バースデーケーキ』を作ってあげていたら、最高の一日になったのに…と。

ケーキ屋さんは夢を与える仕事なのに、大人の事情でクリスマスを嫌いになる子どもを増やしてはいけない、売り上げ(商売)も大切だけど“*求められていることを選ぼう”と心に決めた、と涙ながらに話してくださいました。

(*「バースデーケーキ」を作り続けてきた「15:00(ジュウゴジ)」が求められていることという意味合い)

「実は、僕は5年程前から『クリスマスケーキやめたいなぁ』という想いがあったんです。 2022年は、すべてのオーダーを引き受けたことで心身ともに無理が重なり、お客様のご要望にお応えできなかった事例もありました。

ですが、妻は『クリスマスも年に一度の大切な記念日だから…』と、二人の間でもそう簡単には決断できませんでした。でも、今はこう思うんです。

『クリスマスケーキ』はどのケーキ屋でも作れる” と 」。

誕生日が「クリスマス」の人たち

(2022年12月撮影)
(2022年12月撮影)

世の中に誕生日が「クリスマス」、またはその前後という人はどれほどいるのでしょう。もし、自分の周りにそういう人がいても「なんか素敵だなぁ」と思うだけで、その人が抱えてきた悩みを推し量ることはできません。

(画像提供 「15:00」)
(画像提供 「15:00」)

一年に一度訪れる特別な日が、街の賑わいにかき消されてしまうどころか「バースデーケーキ」さえ断られてしまうやるせなさ。“人に打ち明ける悩み未満” なところも厄介です。

誕生日が「記念日」という現実

誕生日が「記念日」という現実を、わたしは「15:00(ジュウゴジ)」と出会うまで気に留めてもいませんでした。

たとえば、わたしの義理の母の誕生日は「1月1日」。

(イメージ写真)
(イメージ写真)

新年を迎える大切な日の朝に「あけましておめでとう。あ、お誕生日おめでとう」と言われる寂しさ。生きてきた年数分積み重ねてきた思いも強いはずです。

ちなみにわたしの誕生日は、いわゆる「夏休みのど真ん中」。

(イメージ写真)
(イメージ写真)

今でこそ、もう何も思わなくなりましたが、学生の頃は教室で祝ってもらえる友達を羨ましく思ったりもしていました。

「社会問題」未満「個人問題」以上の悩み

今回の取材を通して「社会問題」未満「個人問題」以上の悩みというものが、世の中に存在することを知りました。『誕生日』というハッピーオーラに包まれた記念日だけに、人には言いづらい状況が生まれるのかもしれません。

でも、想像してみてください。その寂しさや やるせなさが毎年訪れることを。

人々の心の機微に気づいてあげられるような、そんな優しい社会になるといいなぁと感じます。

最後にお二人にこんな質問をしてみました。

怒涛のような12月が過ぎて、すこしはゆっくりできますか?

「ゆっくりしたいところですが、月に300個~500個の『バースデーケーキ』や『記念日のケーキ』のオーダーをいただくので、そうゆっくりもしていられなくて。期日に遅れるわけにもいかず、今はインフルエンザやコロナ対策に必死です 笑」

毎月何回かに分けて届く 数百個の「ケーキ」の箱。あまりの多さに驚いた業者さんが視察に来たことも(2022年12月撮影)
毎月何回かに分けて届く 数百個の「ケーキ」の箱。あまりの多さに驚いた業者さんが視察に来たことも(2022年12月撮影)

絶対に遅れることが許されない宿題を12年間抱え続けているようなお二人。

疲れが見えるものの、相も変わらずお客様の様々なご要望に応えるべく、芸術作品のようなケーキを作り続けていらっしゃいました。

(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)
(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)

(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)
(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)

(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)
(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)

(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)
(写真提供 「15:00(ジュウゴジ)」)

素晴らしい! 関西ならではの “お好み焼きケーキ” 最高ですよね!

「『バースデーケーキ』を “贈りもの” として選ぶ方も増えてきましたね。出来上がったケーキを見てよろこんでもらうことが何より嬉しいんです。作って良かったなぁと思える瞬間です」と秀樹さん。

snsに届いた感謝の声

今回の発表を受けてsnsにはたくさんの “感謝の声” が寄せられています。

「うちの子も12月25日が誕生日。毎年『プレートだけでも…』とお願いしても断られてしまう。今年初めてプレートだけ書いていただき、娘はそれだけで大喜び。15歳にして初めての出来事でした」

「私は12月25日が誕生日で、いつもケーキにはモミの木とサンタがのっていました。子どもの頃、普通の誕生日ケーキがいいなぁと思っていたので、ほんまに良いなぁって思います」

「素敵なご決断だと思います。他のお店がやっていないことをするのは勇気がいること。これからもがんばって!」

「涙が…。いつも感動をありがとうございます!」

「本当に心うたれる言葉。想いが素敵すぎます」

街の小さなケーキ屋さんの12年目の決断は、人の心を温め、社会に優しさの輪を広げてくれました。

もし、みなさんの周りに “誕生日が記念日” という人がいたら、ちょっとだけ大きな声で叫んでみませんか?

「ハッピーバースデー!」って。

店主の丸茂 秀樹さん(写真右)と奥様の梨佐さん
店主の丸茂 秀樹さん(写真右)と奥様の梨佐さん

「バースデーケーキ」のお値段・予約の日数について

【予約までの日数】

キャラクタープリント/10日前までの予約

おまかせデコレーションケーキ/前日までの予約

特殊ケーキ/立体や、2段、3段、大きなサイズなど準備に時間のかかるケーキは1週間前までの予約

【お電話・ご来店の際のご質問】

お名前、お電話番号

①ご予約日

②ご来店時間

③ケーキのサイズ(上記参照)

④誕生日の方の名前(平仮名orローマ字)、年齢(つける場合)

⑤ショートケーキorチョコレートケーキ

*その他のケーキはその時にお問合せください。(アレルギー対応、別のケーキ土台、シフォンなど)

⑥ケーキのデザインは、インスタグラムの過去の写真または、他こんなケーキできますか?とお問い合わせください。

おまかせデコレーションケーキは、お誕生日の方の年齢や、好きなお色味などをご質問させていただく場合もございます。

【値段】
・キャラクター手書き
4号4500円~ 5号5500円~
追加キャラクターにつき、プラス料金がかかります。

・キャラクタープリント

4号4500円~ 5号5500円~

追加キャラクター3体まで無料

3体以上は要相談

*キャラに合わせてのデコレーションに変わります。

黄色アカウントの小さなチョコがたくさんついたゴテゴテなケーキをご希望の場合は、必ずスタッフにお伝えください。

*おまかせデコレーションケーキ

3号1900円~ 4号3200円~ 5号4300円~

*2段・3段のケーキ

7000円~

*ドレスケーキ

4号4500円~ 5号5800円~

*立体特殊ケーキ

7500円~

*donuts cake

5号4800円~
*料金すべて税込
*引き続きアレルギー対応の「クリスマスケーキ」はお作りいたします。
*「クリスマスカットケーキ」はショーケースに並ぶ予定です。

【基本情報】
店名:「15:00(ジュウゴジ)」
公式インスタグラム(外部リンク)
住所:泉佐野市松原2-5-33
Tel:072-424-5245
営業時間:11:30~17:00
定休日:火曜・不定休
駐車場:あり(2台)
取材協力 「15:00(ジュウゴジ)」店主 丸茂 秀樹 様、梨佐 様
*記事は取材当時のものです。
*営業日、営業時間の変更はインスタグラムでご確認ください。
*ご夫婦で営んでいるため、電話に出られない場合もございます。状況によってはすべてのオーダーをお受けできないこともご理解ください。

ライター(泉佐野市など)

大阪府泉南市・泉南郡・泉佐野市担当。 なんでもない日々を旅するように暮らす日常写真家。「ローライ35s」という小さなフィルムカメラでささやかな日常を記録しています。私たちのまちのちょっとうれしくなるあんなことこんなこと。みなさまの日常がもっともっと楽しくなりますように。 2023年2月、2023年5月、2024年9月MVA受賞

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