廃棄寸前、訳ありコスメの値引き販売が、ついに本格始動!不透明だった化粧品ロスの実態に、一石を投じる
化粧品の廃棄"年間約2万トン"は、1部に過ぎない
日本では年間約29億着の服が作られ、その半分以上となる15億着、約80万トンほどの服が廃棄されると言われる。またその7割近くがリサイクルもされず、ゴミとして焼却あるいは埋め立て処分されていくのだ。もちろん フリマサービスは拡大するばかりだが、それでも追いつかないほど、"作りすぎ"であるということ。
そういう意味ではコスメも同じ。「毎年約2万トン以上の化粧品が廃棄されている」との記事が出回っているけれど、この2万トンという数字に疑問を呈する声もある。この数字、正確には2021年の調査で「国内大手メーカー5社において廃棄されたバルブ(中身)だけで年間約2万トン」というもので、製品化されたものの廃棄分や小売店の在庫処分などは含まれていない。ましてや5社だけでこの数字、4000社を超えるとされる化粧品会社でひっそりと処分されている分を考えると、実際の廃棄量は想像もつかないほど。
化粧品ロスは、トレンドの変化やシーズンカラー、製品のリニューアルにも起因するが、そもそも「新製品しか売れない」から毎年たくさんの新製品を出さざるをえないという悪循環がある。
廃棄コスメの値引き販売に、大型店舗で初めて取り組むのが、あのルミネ
こうした事情で破棄される化粧品を少しでも減らせないか?との強い思いで立ち上げられたのが、訳ありコスメを特別価格で販売するプロジェクト。岸紅子さん主宰の「サステナブルコスメアワード」事務局と、あの「ルミネ」が手を組み、各化粧品メーカーに協力を仰いで、ディスコン製品や外装の汚れ等で廃棄寸前のコスメを値引き販売するという"化粧品のタブー"に挑戦し、いよいよ廃棄コスメ・ゼロへ向けて本気のスタートを切ったのだ。なおウェブ上での訳ありコスメの値引き販売は、大手メーカーのアウルアウトレットに加えて「シードット」などの通販サイトが既に存在するが、ルミネなどの大型店舗が販売に本格的に取り組むことに大きな注目が集まっている。
初の開催は、新宿ルミネのポップアップストア「COSME Re-Go-Round STORE」として、2025年1月13日と14日の二日間に渡って行われる。なお同時開催として、不要になった使用中のコスメを持ち込むと、300〜500円チケットと交換できる。(こちらだけ予約が必要)
"廃棄を認めたくない"のは、化粧品業界の美学
もちろんこれまでもコスメロスへの対策は様々な形で行われてきた。例えば2023年にアットコスメが立ち上げた「コスメバンクプロジェクト」は、シングルマザーなど困窮する女性世帯に化粧品や日用品をギフトする試み。この取り組みには多くの化粧品メーカーが賛同し製品を無償提供、2023年度は63,000件もの一人親世帯へのギフト実績がある。また使いかけ製品を回収し発展途上国へ送るNPOや、回収したカラーコスメを絵の具などのアート製品にリサイクルするプロジェク、日本ロレアル×東京ガスで、建築用の新建材にアップサイクルする計画も進んでいる。
それも化粧品のSDGsは、容器をサスティナブルな素材に変えたり、メーカー自らが容器の回収のシステムを整えたりという形で行われてきたが、素材も様々、多種多様の装飾などの問題もあって、 リサイクルが思うように進まないという事情もあった。
さらに言えば、化粧品には服のような派手な"セール"の慣習がない。自由価格はあるものの、値下げ自体はイメージを損なうという理由で避けられてきたのだ。加えて、化粧品の廃棄を認めたくないという、化粧品業界ならではの美学も邪魔をしたはず。
しかし化粧品がかつて"再販制度"に守られていたような時代とはもう事情が違う。いわゆるプチプラコスメや韓国コスメが低価格のまま高品質をクリアしている今、少なくともコスメロスを防ぐ努力として、既成概念にとらわれない未来思考も必要なのではないか。
そういう意味で、今回のイベントに参加予定の化粧品ブランドには"ある種の気概"を感じる。コスメキッチンのオリジナルブランドを始め、オーガニックコスメの新勢力、ロクシタンやボディショップ、オサジなどナチュラル系の主要ブランド、さらにはコーセーなども名を連ねている。
廃棄寸前だった正規品を、あえて求める心を持つこと、それが一人一人のエコ活動となるのではないだろうか。
● 2025年1月13日(月・祝)と14日(火)の2日間、
ルミネ新宿で「COSME Re-Go-Round STORE」開催