ニュースを受動的に読む人が多いのが日本? 英ロイタージャーナリズム研究所のリポートから
世界10カ国・地域を対象とした、デジタルニュースの利用についての調査で、日本はニュースをソーシャルメディアで共有したり、ウェブサイトにコメントを書く比率が他国と比べてかなり低いことが判明した。
英ロイタージャーナリズム研究所が毎年出している「デジタルニュースリポート」の最新版は、各国の市民がどのようにネット上でニュースを閲覧しているかをさまざまな角度から分析している。(その概要については読売オンラインにまとめている。)
調査の対象となった国・地域は、日本、米国、英国、ドイツ、フランス、デンマーク、フィンランド、スペイン、イタリア、ブラジル都市部。対象者は全部で約1万9000人。
ニュースをどのように利用しているかについて調べたところ、「ニュースの参加度」という点では日本の数字が極端に低い。これは前年もそうだった。以下はリポートの中の「国別参加度」の表である(上記リポートの73ページ目)。
左から、米国、英国、ドイツ、フランス、デンマーク、フィンランド、スペイン、イタリア、ブラジル都市部、日本の順だ。
項目は、上から「ソーシャルメディアでシェアする」、「電子メールでシェアする」、「記事を評価する・いいねをつける」、「ソーシャルメディアでコメントする」、「ニュースサイト上でコメントする」、「ニュースについてブログ記事を書く」、「ソーシャルメディアに写真をアップロードする」、「ニュースサイトに写真をアップロードする」、「オンライン投票をする」、「キャンペーンをオンラインで行う」、「オンライン上で友人にニュースについて話す」、「誰かと会った時にニュースについて話す」だ。
日本の項目を眺めると、ほとんどが一ケタ台で、「ニュースサイトにコメントを書く」は3%のみ。二ケタ台(14%)になったのは、「誰かと会った時にニュースについて話す」のみ。
逆に、非常に活発にオンライン上で活動をするのがブラジル都市部の市民だ(会った時にニュースについて話す人は44%、ソーシャルメディアで共有は42%、ソーシャルメディアでコメントが33%)。イタリア、スペイン、米国の市民たちもネット上でニュースについて盛んに会話を行っている。
リポートはなぜ日本で「ニュースの参加度」が低いのかについて、分析していない。ロイター研究所にはぜひこの点を解明していただきたいものだ。
自分自身の体験から言えば、自分あるいは自分の友人たちあるいはフォロワー同士の反応を見ると、面白い、興味深いトピックがあれば、すぐにシェアがあるので、こうした結果は必ずしもぴんとは来なかった。ただ、「一部の人が盛んにシェアしている・ニュースを広めている」という状況にある可能性もある。ほとんどの人が、いわばニュースを受動的につまり、ただ読むだけという場合が圧倒的なのかもしれない。少なくとも、このリポートはそんな読み手の姿を浮き彫りにしている。
英国とスペインを比較
日本の状況の分析はないのだが、その代わり、英国とスペインとの比較が出ている。
そのきっかけは、米国と英国のニュースの参加度を見たときに、母語が同じ英語であり、ネットの接続度も同様であるのに、米国市民のほうが参加度が非常に高いことだった。これはもしかして、「プライバシーやネット上の透明性について、異なる感覚を持っているからではないか」と思ったそうだ。
「英国人は自分の意見を表明したがらない傾向が(米国に比べて)強いのではないか」という仮説を立てた。そして、米国よりもいくつかの項目で参加度が高いスペインと英国とを比較した。
「ニューサイトにコメントを残したときに、実名を使ったか」では、英国が9%、スペインが21%。
「ソーシャルメディアで使うユーザーネームを使った(これで実名が分かる」は英国で8%、スペインが16%。
分析の結果、スペインの市民と比べたとき、英国市民は「実名を使うよりも匿名を好む」傾向があったという。
また、ニュースサイトにコメントを書き込むのは「若い男性」が主だという。英国の21-24歳の47%が、スペインの25-34歳の75%がコメントを書き込んだことがあると答えている。
リポートは、結論として、米バズフィートのようなサイトはどれだけトピックが広がるかで成功の度合いを測っているけれども、これからのニュースサイトにとって重要になるのは「いかに利用者に参加してもらえたか」だろう、と書く。
競争が激化する中で、「単にリーチや頻度で計測するのではなく、意味のあるエンゲージメント(従事度・没頭度)が鍵を握るだろう、と。エンゲージメントを高めるのは「コンテンツとブランドへの忠誠心」だという。平たく言えば、面白い・興味深い中身があることと、「このブランド=媒体=なら読みたい」と思う人を増やすことだろう。