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「頭では分かっているのに恋人と別れられない」 ダメ恋愛 なぜダラダラ続く?

五百田達成作家・心理カウンセラー
写真:beauty_box/イメージマート

「この人と付き合っていてはダメだ」「やめたほうがいい」自分でもわかっていながら、なぜその恋に依存してしまうのか。お金や恋愛にだらしないなどの理由で、周囲から評判も悪く、「別れたら?」と忠告されていても、交際を続けて固執してしまう。これはいったいなぜなのでしょうか? なぜ「やめたほうがいい」という理性は、「関係を続けたい」という感情にやすやすと負けてしまうのでしょうか?

あまりに普遍的で、あまりに語り尽くされたテーマではありますが、改めてわかりやすく説明してみたいと思います。ご自分の経験に照らし合わせながら、また、そうした恋愛のまっただ中の友人に自分だったらどう声をかけるかと考えながら、お読みください。

写真:アフロ
写真:アフロ

恋愛の第1ステージ:「好き」

そもそも、人が恋愛をする理由はなんでしょうか?

好きだからです。

好きな人から好きと言われる。大好きな人と両思いになる。これほど承認欲求を満たされることはありません。

チヤホヤされる、かわいい・かっこいいと言われる。一緒にいるとドキドキする、デートしていると幸せな気分になる。安心するし、誇らしい気持ちになる。手をつないで、キスをして……、とにかくもう楽しくてしかたない。

恋愛開始直後のこのステージでは、理性の出る幕はありません。多少「ん? この人大丈夫かな?」と違和感を感じたとしても、楽しさのほうが勝ってしまうので、別れるなんて思いつきもしません。

もちろん、周囲から「やめておきなよ」とアドバイスされても、まったく頭に入ってこないでしょう。

恋愛の第2ステージ:「情」

始まったばかりの恋のテンションがそのまま持続するカップルもたくさんいますが、次のステージに移行するカップルもいます。

次のステージは「情(じょう)」です。

それほど燃え上がっているわけではない。ラブラブなわけではない。それでも一緒にいるとラクだし、嫌いではない。安定した関係を崩してまでモメたくないし、他に好きな人もいないから、今のままでいい。

いわゆる凪の状態、惰性の恋愛なのでもはや本人としても好きなのかどうか、よくわかりません。中には「あんなダメな人を救ってあげられるのは自分しかいない」と悲劇の主人公気分にひたる人もいます。

徐々に興奮が収まり、楽しいばかりじゃなくなってきた恋愛のステージにおいては、これまで気にならなかった相手の欠点がちょこちょこと目につくようになってきます。ですがすでに「ま、こんなもんでしょ」「腐れ縁だからさ」とあきらめの気持ちで見過ごせるようになっているので、実際に別れるまでには至りません。

この時期に、周囲から「別れなよ」とアドバイスされても、「まあねえ」「そうなんだけどねえ」と苦笑いをしてごまかすこととなります。

恋愛の第3ステージ:「打算」

写真:アフロ
写真:アフロ

興奮した気持ちが冷め、おだやかな「情」もなくなってくると、まさに恋愛としては末期症状。相手の嫌なところばかりが目につく。ついひどいことを言ってしまう。連絡を取らない、会うのもめんどう。実際、そこで別れてしまうカップルも多いのですが、別れない理由があるとすれば「打算」です。

多いのは、結婚を視野に入れた打算。今別れてシングルになってしまうと結婚が遠のく。妥協して付き合っておけば結婚はできそう。そうした思考が働くので、なかなか別れられません(若い世代が比較的さくっと別れられるのは、この要素が少ないからでしょう)。

また、このステージに至ると「私のことを好きになってくれる人なんて他にいない。いい人が見つかるわけがない。もう一度イチから恋愛できる気がしない」というネガティブな想像も広がります。こうして自己肯定感が下がると「結局、こんな私にはあの人がお似合いなんだ」と勝手に思い込んでしまう。気づけばダメ恋愛沼から抜け出せず、無限ループに陥ってしまうわけです。

こんなメンタルの時に周囲から「別れたら?」とアドバイスされても、「どうせ私なんて」「私にはこの人しかいない」と拗ねてしまうことに。あるいは「ほっておいて!」と意地を張ってしまうことも。いずれにしろ、アドバイスに耳を傾けることはないでしょう。

理性が役に立たないのが恋愛

  1. 始まったばかりの時はノリノリなので、理性の出る幕はない。
  2. 落ち着いてくると情が湧いてしまうので、理性であっさりと別れることはできない。
  3. 終わりかけのころにはこじれてしまい、目の前の関係にすがろうとするので、理性で断ち切ることができない。

こう見ると、恋愛のどのステージにおいても、理性が感情に勝つ場面なんてないことがわかります。

ですから、「なぜ頭ではわかっているけれど別れられないのか」という問い自体が矛盾しているのであって、「頭で判断して別れられるなら、それはすでに恋愛ではない」とも言えます。心の底から愛想を尽かすような事件や、もっと好きな相手の登場といった、よほどのイベントが発生しない限り、自分の意志で終わらせることは難しいでしょう。

写真:アフロ
写真:アフロ

その時が来れば、その時が来る

「恋はするものじゃなく、落ちるものだ」という言葉がありますが、それにならって言うなら「恋は終えるものじゃない、終わるものだ」ということです。

周囲の友人としてはさぞかし気を揉むでしょうが、残念ながらどんなアドバイスも効果はないでしょう。「気が済むまでやれ。骨は拾ってやるから」と見守るしかありません。

以前、社内で何股もかけている男性を好きになってしまった女性が相談に来たことがあります。割り切りたい気持ちと嫉妬心に引き裂かれ、「ほんとうに辛い。いつになったらラクになれるのか」とぼやく彼女に「その時が来れば、その時が来ます」とアドバイスをしたことがあります。結局、スッパリと別れるまでに数年の時を必要としました。

結局のところ、時が解決してくれるのを待つしかないわけですが、その間、「仕事でがんばって評価される」「友人と充実した時間を過ごす」「趣味や習いごとで、できなかったことができるようになる」といった経験を積むと、自己肯定感がアップするので、負のループから抜け出しやすくなります(いっぽう「新たな恋」という特効薬は、根本的な問題解決にならないことが多いようです)。

恋愛に免許は要らない。が、自由には責任が伴う

恋愛に免許は要りません。誰がやってもいい。正解もルールもない。誰と付き合おうが何をしようがOKで、自他共に認めるダメ恋愛だって続けて構いません。自由です。

ですが、その自由には必ずリスクが伴うことを覚悟しなければいけません。

• 友人から信用を失う。

• 結婚・出産のタイミングを逃す。

• 膨大な時間とエネルギーを奪われる。

• ようやく別れたときにより傷つく。

• 心身に異状を来す。

• 仕事や社会的立場が損なわれる。

ダメな関係にはそういったリスクがあることを、いつも心に留める必要があります。

中高校生の恋愛ならいざ知らず、大人ともなれば、あとで後悔して「なんで止めてくれなかったんだ」と周囲にあたるようなことがないよう、自分の判断に責任を持つべきでしょう。

大人の恋愛は人生そのもの

大人の恋の悩みは、ただの色恋の問題にとどまりません。結婚や出産、仕事やキャリアと切っても切り離せないものです。

自分はどんなパートナーとどんな人生を歩みたいか? 何が自分にとって幸せか? そういうことを、恋に落ちている真っ最中にも自分自身に問い続けなくてはいけません。そういう意味では「恋愛とは生きること」とも言えます。

きちんと自分の人生と向き合ったうえで、それでも「関係を続ける!」と覚悟を決めるなら、それはもう立派な決断。胸を張ってその恋を貫いてほしいと願います。

写真:milatas/イメージマート
写真:milatas/イメージマート

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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