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デュピルマブとアトピー性皮膚炎 - 【結膜炎との関連性】を専門医が解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎患者に多い結膜炎】デュピルマブの副作用との関連性

アトピー性皮膚炎は、慢性的な皮膚の炎症を引き起こす難治性の疾患です。かゆみを伴う湿疹が全身に広がり、患者のQOLを大きく低下させます。近年、アトピー性皮膚炎の新たな治療薬としてデュピルマブが注目されています。デュピルマブは、IL-4とIL-13という炎症を引き起こすタンパク質の働きを抑える抗体医薬品です。

しかし、デュピルマブの使用により、結膜炎(目の炎症)のリスクが高まることが報告されています。アトピー性皮膚炎患者は、もともと結膜炎を併発しやすいことが知られています。デュピルマブは、涙液の粘度を保つ重要な役割を担うゴブレット細胞を減少させるため、目の乾燥や炎症を引き起こす可能性があります。

【デュピルマブの効果と副作用】23の臨床試験の解析結果

今回、23の無作為化比較試験(RCT)を対象に、デュピルマブと結膜炎の関連性を調べたメタ解析の結果が発表されました。解析の結果、デュピルマブを使用した患者群では、プラセボ(偽薬)群と比較して、有意に結膜炎の発症率が高いことが明らかになりました(リスク比1.89)。

ただし、疾患別に解析したところ、アトピー性皮膚炎患者ではデュピルマブ群の結膜炎リスクが高かった一方で、喘息や鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、好酸球性食道炎の患者では、プラセボ群との差は見られませんでした。アトピー性皮膚炎に特有の免疫応答の変化が、デュピルマブによる結膜炎の発症に関与している可能性が示唆されます。

【結膜炎の予防と対処法】眼科専門医との連携が重要

デュピルマブを使用する際は、定期的な眼科検診を受けることが大切です。結膜炎の症状が現れた場合は、すみやかに眼科専門医を受診しましょう。重症化すると、角膜の損傷や視力低下につながる恐れがあります。

軽度の結膜炎には、人工涙液や抗炎症点眼薬が処方されます。重症例では、デュピルマブの使用を一時的に中止することもあります。ただし、多くの場合、適切な眼科治療を行えば、デュピルマブの継続は可能とされています。皮膚科医と眼科医が連携し、患者の状態に応じた総合的な治療方針を立てることが重要です。

デュピルマブは、アトピー性皮膚炎患者のQOL改善に大きく寄与する画期的な治療薬です。一方で、結膜炎などの副作用にも十分注意が必要です。使用前には、眼科的な問題がないかチェックを受け、医師とよく相談しながら治療を進めていくことが大切といえるでしょう。

参考文献:

Lin, T.-Y. et al. (2023) Association between Dupilumab and Conjunctivitis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Pharmaceutics. 15(4), 1031. https://doi.org/10.3390/pharmaceutics15041031

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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