Yahoo!ニュース

「脳活」には「クロスワードパズル」!「昭和の娯楽」でボケを抑制【最新エビデンス】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

一流医学論文が証明したクロスワードパズルの「ボケ防止」力

「最近、モノ忘れが多い、歳かな・・・・」

あなたのまわりにそんな人はいませんか?

もしも思い当たる人がいたら、「クロスワードパズル」を勧めてあげましょう。タテヨコに交差した枠の中にヒントに従って単語を埋めていく、あのゲームです。昭和の時代にはたいていの雑誌に掲載されていたそうです。

いきなりこう言われても「はっ?」と思うかもしれませんね。でも「クロスワードパズル」には「脳トレゲーム」を上回る「ボケ防止」作用があるんです。きちんとした医学研究で分かりました。論文が載ったのは10月27日の「ニューイングランド医学誌エビデンス版」。「ニューイングランド医学誌」(NEJM)は世界トップクラスの医学学術誌です。まさに「鉄板」の医学情報をご紹介します。

信頼性の高い「ランダム化比較試験」で検証

研究を実施したのは米国コロンビア大学などの3施設。55歳以上で軽度認知障害の人たちが集められました。軽度認知障害というのはMCIとも呼ばれ、認知症の一歩手前です。おもな特徴は「物忘れ」ですが、日常生活への影響はほとんどありません(厚生労働省解説)。だからこそ逆に言えば、この時点で手を打っておきたいのです。

そしてその中から107人がくじ引きで2つの群に分けられ、片方は「脳トレ」ゲーム、もう片方が「クロスワード」パズルをするよう指示を受けました。「脳トレ」と「クロスワード」はいずれもウェブベースで提供され、どちらも1回30分を原則週1回で1年間実施しました。ただし6回あった「強化週間」の間は週4回です。。

「くじ引き」で分けているので人為性の入る余地はなく、両方の群の「認知機能」や「認知症になりやすさ」は同等でした。

このような「くじ引き」で群を分ける比較試験は「ランダム化比較試験」(RCT)と呼ばれ、医学的効果を調べる際、最も信頼できる方法とされています。新薬の効果を調べる試験はまず例外なく、RCTです。

1年後、「クロスワード」だけが認知機能を改善

そして1年後、両群の認知機能が比較されました。すると、「脳トレ」群では認知機能が少し低下していたのに対し、「クロスワード」群ではその倍ほどの幅で改善していました。「クロスワード」の方が「脳トレ」よりも、認知機能は維持されていた、つまり「ボケ」が進まなかったのです。

論文の著者たちもこの結果には「予想外で想定の逆だった」と驚きを隠せません。

ではなぜ、「クロスワード」の方が認知機能に良い影響を与えたのでしょう?

「クロスワード」は「脳の萎縮」を抑制

107人から集めたデータを注意深く解析していた研究者たちはあるデータに目を見張りました。「クロスワード」群では「脳トレ」群に比べ、「脳の萎縮」が抑えられていたのです。MRIという装置を使って調べたところ、記憶をつかさどる「海馬」という脳領域の縮小が「クロスワード」群では「脳トレ」群よりも抑制されていました。さらに記憶や推測、思考などに重要な「大脳皮質」も、「クロスワード」群で「脳トレ」群よりも「厚さ」が保たれていました。

研究者たちは、この脳に対する作用の差が認知機能の差をもたらしたのではないかと考察しています。

まとめ

いかがでしたか?今ではスマホでも簡単に楽しめるクロスワード・パズル。それを週に1〜4回やるだけで「ボケ」を遅らせることが証明されました。移動中やちょっとした待ち時間にやってみませんか?色々な知識もついて一石二鳥。ぜひトライしてみてください。

今回ご紹介した論文は出版社のサイトで、要約と全文(英語)を無料で読めます。無料翻訳サイトDeeplを使えば簡単に日本語にも直せますよ!

また認知症については以下の記事も書いています。ぜひ、お読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

黒澤恵(Kei Kurosawa)の最近の記事