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世界遺産の街レーゲンスブルク  クリスマスマーケット、大聖堂、石橋、BMW

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
大聖堂の少年合唱団歌声を聞いてみませんか

前回はレーゲンスブルク発のクリスタル遊覧船を紹介しました。

今回は更なるレーゲンスブルクの魅力をお伝えします。ドナウ河畔の美しい古都レーゲンスブルクは2000年の歴史を持ち、戦災をほとんど受けなかった美しい景観の街です。かってローマ帝国議会が置かれ、国内最古といわれる店やスポットがたくさんあります。

旧市街に聳える大聖堂、赤レンガの家並み、市街地には文化財保護指定を受けている建造物が1500もあります。そのうちの984が「レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ」として、2006年にユネスコ世界文化遺産登録されました。

伯爵家の宮殿中庭でクリスマスマーケット

この時期の楽しみはなんと言ってもクリスマスマーケット。ここレーゲンスブルクでも市内4箇所で開催されます。そのなかでもお勧めは、地元の貴族トゥルン・ウント・タキシス伯爵家の宮殿内クリスマスマーケットです。(11月27日から12月23日)

入場は有料(月曜日から金曜日6.50ユーロ、土日8.50ユーロ)ですが、宮殿の醸しだす優雅な雰囲気の中でクリスマスマーケットを満喫してみたいですね。

参考までに、旧市街中心部のノイファール広場(Neupfarrplatz)ルクレツィアーマルクト(Lucrezia-Markt)、聖カタリネンスピタル(St. Katharinenspital)のクリスマスマーケットはすべて無料で見学できます。

トゥルン・ウント・タキシス家は、主にドイツやオーストリア、イタリア、フランスなどで郵便事業を展開していた郵便王です。16世紀はじめに郵便事業の独占権と世襲権を得て、莫大な財を築き上げました。伯爵家は1748年にフランクフルトからレーゲンスブルクに移転し、1812年には郵便事業の独占権を失った代償として入手した建物を聖エメラム宮殿に改築、以来200年に渡りこの街に居住しています。居間や社交室、サロンなど500ほどの部屋があるこの宮殿は、ロンドンのバッキンガム宮殿より広いと言われています。

街のシンボル・大聖堂

街のシンボル、二本の尖塔が目印の聖ペーター大聖堂(Domplatz 1)は、ゴシック様式の祭壇とステンドグラスが見事です。また、大聖堂の雀(DomSpatz)の名で親しまれている少年合唱団は、その歴史も1000年ほどあり、800年のライプチヒ少年合唱団より古い歴史を持っています。日曜日や祭日の礼拝(10時から)で合唱団の透き通るような歌声を聞くには、少し早めに出かけて、席を確保しましよう。礼拝中は、入場できませんのでご注意を。

ベネディクト16世、第265代のローマ教皇だったヨセフ・ラッシンガー氏の兄ゲオルグ・ラッツィンガー氏もレーゲンスブルクの大聖堂で2013年2月28日まで聖職についていました。

弟ヨセフ氏が教皇に就任時には、驚きを隠せなかったゲオルグ氏でしたが、ヨセフ氏2013年退位時には、事前に本人より話しを聞いていたようで、静かに受け止めていたそうです。ローマ教皇が自ら退位を申し出たのは歴史上極めて異例という事で、当時、かなり大きなニュースになりました。

大聖堂正面玄関より
大聖堂正面玄関より

ドイツ最古伝統の帽子屋フート・ケーニッヒ

大聖堂正面玄関向かいにあるこの帽子屋さんフート・ケーニッヒ(Hut Koenig- Krauterermarkt 1)は、100年の伝統を誇るドイツ最古の帽子屋。5代目店主のアンドレアスさんとロバートさん兄弟が経営しています。店内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、紳士用の帽子の数々。2階にある婦人用と合わせて、なんと1万5千点ほどの帽子が所狭しと展示されています。

アンドレアスさんは、ドイツで唯一の紳士用と婦人用両方の職人資格を持つマイスターで、帽子の考案から制作まですべてを担っています。

アンドレアスさんにお話を伺うと「ひとつの帽子を完成させるには、80もの工程を経て昔と変わらない手法で丹念に作るのがモットー。帽子の木型、成型コテや縁伸ばし機などの工具は、今も開店当時のものが現役で活躍しています。帽子の素材兎の毛はとても細いため制作には手間がかかりますが、仕上がりがとても美しく、型崩れもせず手触りも抜群」と説明してくれました。

顧客は、元ローマ教皇ベネディクト16世や地元侯爵家のトゥルン・ウント・タキシスのグロリア夫人をはじめ、俳優や著名人など、数え切れないほど。観光客もふらっと立ち寄り、購入するそうです。

日曜日にもかかわらず、取材に応じて下さったお二人
日曜日にもかかわらず、取材に応じて下さったお二人

ちなみに店主が愛用の帽子は、通称プレイボーイハット。かってドイツプレイボーイ誌で掲載されてから大ブレイクして、それ以来看板商品のひとつとなったとのことです。

帝国議会博物館

レーゲンスブルクは、1245年に自由帝国都市となり、自治権を獲得。1663年から神聖ローマ帝国が崩壊する1806年まで帝国議会、つまり常設国会が置かれていた由緒ある街です。中世には、今で言う三権分立は存在せず、自由帝国都市の特権階級が「立法」「警察」「裁判権」より成り立つ、市議会を運営していました。そのため、市庁舎には、評議会室、税務署、裁判所など市の行政に関する重要な役所が含まれていました。

旧市庁舎は、現在帝国議会博物館(Rathausplatz/Altes Rathaus)として公開されています。舞踏会や祝祭ホールとして利用した帝国ホール、館内で最も豪華だった選定候の部屋、また地下には牢や拷問室、拷問器具も展示されています。なお、館内の見学はガイドツワーのみで入場が可能です。

議会終了後、当時の諸侯たちの出向いた先は、旧市庁舎の向かいにある国内で一番古いケーキ屋さんカフェ・プリンツェス(Cafe Prinzess)。ここでは、議会では取り上げることのできなかった秘密案件の会議を行ったそうです。

ドイツ最古の石橋

旧市街からドナウ川の対岸にあるシュタットアムホーフへと続く長さ310メートル、幅7メートルの石橋(Steinerne Bruecke)は、1146年に完成。当時、この種の橋では世界で最も大きく、「世界八番目の不思議」とされ、800年以上の間ウルムとウィーンの間ではドナウ川に架かる唯一の橋だったとか。今も橋の一部はオリジナルのまま維持されているドイツ最古の石造アーチ橋です。チェコ・プラハのモルダウ川にかかるカレル橋の手本になったそうです。

プラハのカレル橋の手本となった石橋
プラハのカレル橋の手本となった石橋

この石橋、ドナウ川の岸辺にある国内最古のソーセージ店(Historische Wurstkueche)も立ち寄りたいスポット。緑の小さな建物は、かって石橋を造る職人さんが小腹が空いた時に利用した簡易食堂だったようです。今もここで焼いているソーセージの鼻をくすぐるいい匂いが当たり一面に漂っています。画像では見えませんが、簡易食堂右側の白い建物にはレストランがありますので、ドナウ川を眺めながら食事をするのもいいでしょう。ザワークラウト添えの細身の豚肉ソーセージは、6本(8.40ユーロ)8本、10本とお腹の空き具合を見て注文できます。

緑色の建物内は狭いものの、座ってソーセージを満喫できます
緑色の建物内は狭いものの、座ってソーセージを満喫できます

BMW工場見学

BMWといえば、ドイツを代表する高級車。BMWの本社はミュンヘンにありますが、製造工場は国内に分散しており、ここレーゲンスブルクにもあります。この工場では、BMW1,3, 4, Z4などを製造しています。曜日や時間指定ですが、一般客に工場内を公開しています。見学所要時間は2時間30分とちょっと長めですが、時間が許せば、ぜひ足を運んで下さい。 

入場料金・大人6ユーロ、18歳以下および学生、障害者やBMWカード保有者4ユーロ

見学所要時間・2時間30分

見学公開日・金曜日15時からと土曜日11時から。10月以降は水曜日19時からも見学可能となりました。

住所・

BMW Werk Regensburg

Herbert-Quandt-Alle

93055Regensburg

最後に。レーゲンスブルクは、ドイツ国内でクナイペ(ドイツ風居酒屋)の密度がもっとも高い街としても知られているのをご存知ですか?。この街には、ミュンヘンに本店のあるビアホール、ホフブロイハウス(Hofbraeuhaus)支店もあります。本店に比べ、レーゲンスブルク店はこじんまりしていますが、美味しいビールを目的にやってくる客でいつも大賑わいです。

追記

タイトルの大聖堂内画像は、TV番組撮影時に許可を得て撮ったものです。

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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