トルコのエルドアン大統領「世界中がトルコの軍事ドローンの開発動向に注目しています」
トルコの軍事企業のバイラクタルが新たな攻撃ドローンを開発していることを明らかにした。同社の攻撃ドローンはシリア、イラク、リビア、アゼルバイジャンなどの紛争で実戦でも使用されている。新たに開発している攻撃ドローンは海軍が船の上からも発射が可能なタイプで、攻撃ドローンによって敵の海軍への攻撃を行う。来年には試験運用を行う予定。ドローン自身での自律した運用も可能になる予定。
同社が開発して攻撃ドローン「バイラクタル TB2」は、NATO加盟国のポーランド、ラトビアもトルコも購入している。またウクライナでは既に実戦でも使用している。さらにエチオピアとモロッコ、アルバニアやパキスタンも購買意欲を示している。
実戦での実績も豊富なトルコの軍事ドローン
トルコのエルドアン大統領は先日、バイラクタル社を訪問して同社の社員向けにスピーチを行った。そのなかで大統領は「世界中がトルコの軍事ドローンの開発動向に注目しています。先日、アフリカのアンゴラ、トーゴ、ナイジェリアを訪問した時にも、トルコの軍事ドローンに強い関心を示していました」と語りかけていた。
エルドアン大統領がアピールするように、トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。今回のウクライナ軍による使用もロシアにとっても大きな脅威になっている。
そして多くの紛争でトルコの軍事企業が開発した攻撃ドローンが使用されている。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノ・カラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。
また2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製の攻撃ドローンKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。
攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。
「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。
▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」
▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」でのアゼルバイジャンによるアルメニアへの攻撃