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イスラエルで今年も開催「ホロコースト生存者の美人コンテスト」優勝はルーマニア出身の86歳

佐藤仁学術研究員・著述家
優勝したサリナ・ステインフェルド氏(写真:ロイター/アフロ)

年々減少するホロコースト生存者

第二次大戦時にナチスドイツによってユダヤ人虐殺、ホロコーストが行われ約600万人のユダヤ人やロマらが殺害された。そして2021年11月にイスラエルで「ホロコースト生存者の美人コンテスト」が開催された。2012年から毎年実施されているが昨年は新型コロナウィルスで中止になってしまった。今年も79歳から90歳までのホロコースト生存者の女性たち10人が参加した。

今年の「ホロコースト生存者の美人コンテスト」で優勝したのは86歳のサリナ・ステインフェルド氏。ルーマニア生まれのユダヤ人でホロコーストを生き延びて、イスラエルが建国された1948年にイスラエルに移住してきて現在は21人の曾孫もいる。

減少する生存者に会える機会

現在、イスラエルには約175,000人のホロコースト生存者がいるが、年々少なくなってきている。戦争が終結して70年以上が経過しているため、参加者のほとんどが80歳以上だ。来年以降も開催されるだろうが、参加者がこれから若返ることもないし、いずれゼロになってしまう。参加者らはステージで全員がホロコーストの思い出を語っている。このコンテストは日本ではほとんど報じられていないが会場は毎年満員になっている。そしてイスラエルだけでなく欧米ではテレビ、新聞だけでなくソーシャルメディアやネットなど、あらゆるメディアで世界中に発信されている。

ホロコースト生存者もホロコーストを目撃していた人々も高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者や目撃者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。デジタル化された証言や動画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。ホロコースト映画をクラスで視聴して議論やディベートなどを行ったり、レポートを書いている。

ホロコーストの経験はデジタル化されたコンテンツやホロコースト教育などで語り継がれるであろうが、経験者自らが語れる場面と機会は年々少なくなってきている。1年に1回でもこのような「美人コンテスト」という世界が注目するタイトルで生存者がホロコーストの経験を語る場面を作ることが重要になっている。

優勝したサリナ・ステインフェルド氏
優勝したサリナ・ステインフェルド氏写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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