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自宅からタクシーでリゾートホテル往復送迎付き“ひとり4~10万円”は高いか?

瀧澤信秋ホテル評論家
(筆者撮影)

自宅からタクシー送迎でリゾートホテル

人気ビジネスホテルブランドの「ドーミーイン」といえば、温泉大浴場で知られるホテルブランドであるが、運営会社の株式会社共立メンテナンスは、ドーミーインのほかにも全国36ヵ所にリゾートホテル「共立リゾート」としてリゾートホテルや和の湯宿を展開している。ドーミーインもかなりのアイディアが溢れるホテルと認識しているが、共立リゾートもアイディアという点ではポテンシャルが高く、発売されて1年経ったいまでも密かにヒットし続ける個性的な商品がある。

その商品は、自宅からのタクシー往復送迎付き宿泊プランだ。共立メンテナンスがタクシー会社とタイアップ、「自宅からリゾートへ直幸往復便」と銘打ち、都市圏発で同社のリゾートホテルや湯宿へ“Door to Door”で結ぶという内容。“発売されて1年”と前述したが、1年前といえばホテル業界では、今後コロナ禍へどう対応していくのかという課題を目の前にして、安心・安全を確保しつつも自社の宿泊施設稼働をどのように上げていくのか、試行錯誤の最中(さなか)であった。

三密は避けられるが…やはり高いか?

アイディア勝負といった感もあるホテルのプラン生成であるが、三密を避けることが命題という中、公共交通機関を避けるという意味で、タクシーで送迎してしまおうという思い切ったアイディアを実行した。除菌されたタクシーをアクセス手段として利用するというのはわかりやい。コロナ禍での営業不振に喘ぐタクシー会社にとっても渡りに船だろうか。とはいえタクシー利用となれば提携とはいえ、基本となる料金があり法令上は下限からは下げることはできない。宿泊料金を割り引いたとしても相応の金額設定になってしまう。

ラビスタ富士河口湖(筆者撮影)
ラビスタ富士河口湖(筆者撮影)

確かに、公式サイトで当該プランの料金設定をチェックすると、ホテルの料金繁閑差にもよるが決して安くはない。1泊2食付きで安い日の安い施設が4名利用時ひとり2万円台後半~、2名利用だとひとり4万円台半ばといった設定。安い施設でもふたりで10万円近くなる計算だ。このプランにおいては、1台に何人乗るのかといったタクシー利用人数も収益のポイントであることは容易に想像が出来る。4名利用時と2名利用時の支払額の差は倍くらいとかなり大きく、施設や時期によっては、2名利用でひとり10万円近い設定の施設もみられる。

思い切って使ってみた

筆者もそうであったが、そんなプランに需用があるのか?と眉唾な人もいることだろう。ところが蓋を開けてみると想定外にもロングヒットしているという。各地の都市圏発がプラン展開されているが、今回一周年ということで、東京・千葉・神戸のエリア発を対象として(2021年6月1日から2021年7月15日までの期間限定であるが)最大で20パーセント引きで利用出来るという情報を発見した。

とはいえ、たとえ割引でお得とはいえ元々の料金はお高い。ひとり利用はプラン対象外、ふたりでも筆者としては予算オーバー。でも、どうして人気なのか気になっていたこともあり、なんとか家族協力のもとで参加者募り実際に出向くことに。向かったのは河口湖。他にもたとえば箱根などは比して安価であったが、マイカーで行ったことがあった施設も多く、プラン対象施設にして未体験だった「ラビスタ富士河口湖」に決定した。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

事前情報では“タクシー”ということだったが、到着してみると黒塗りのアルファードだった。タクシーというよりイメージとしてはハイヤーという表現の方がしっくりくる。ちなみに2名利用だとクラウンマジェスタ等、4名からでアルファードなどが使用されるというピシッとした制服姿の運転手さんがお出迎え、手際よく荷物を積み込んで下さったのは大和自動車交通の山田さん。

無事河口湖へ

筆者の自宅は都心でない郊外住宅街の路地に面しており、横付けされた黒塗りハイヤーは、近所の好奇の目に晒されかねないかなり目立つ光景である。いろいろな思いが巡り、正直、自分の車の方が気ままで楽ちんかも(道中ドライバーさんにも何となく気を遣うし)と想像していたが、座席の袖にセットされた冷たいペットボトルのお茶とおしぼりをみた瞬間に少しお大尽気分に(単純だ)。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

乗ったことのない車種だったが、足下広々なかなかどうして快適だ。ひざ掛けなどもセットされている。道中は極めてストレスフリー。環七や中央道は時々自ら運転する道路であるが、後ろの座席に座るというのはこんなにも快適なものなのか?いやいやプロドライバーの腕といったところだろう。大切なのは高速道路PA・SAでのトイレ休憩リクエスト。遠慮無く早めに申し出ることが肝要だ。

ラビスタ富士河口湖はさすがの共立クオリティというか、サウナー的には2種類の充実サウナにキンキン冷水浴、絶景ビュー外気浴でととのいまくりの時間。夕食はフレンチ。富士河口湖とフレンチというのはとてもイメージにマッチする。メインの肉料理が終わりデザートというタイミングで供されたのは、なんと鰻ご飯&汁椀というサプライズ。客層を考慮した内容に感心。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

食事といえば、ドーミーインも含めた共立メンテナンス社の運営ホテルは、概して朝食クオリティの安定的な高さでも知られる。とはいえ、旅館やリゾートホテル泊での翌朝の美味しい朝食ではあるが、食べ過ぎると眠くなってしまい帰路の運転がツラく控えめにするところ、気兼ねなくモリモリいけたのがタクシー往復送迎の意外な収穫、帰路の車中は爆睡だった。

プレゼントとしての引き合いも多い?

筆者が利用した日は4名利用でひとりあたり39200円の設定。都心のデラックスホテルへ投宿したつもりといった料金か。もちろん送迎付きが楽なことはいうまでもないが、公共交通機関ならもっと(かなり)安いし、鉄道ファンでもある筆者として交通機関ならではの移動体験の楽しみもある。結論、個人的にはなかなかハードルが高いプランに思えたが、ホテルのスタッフに聞いてみたところ意外な人気の理由が判明した。プレゼントでの引き合いが一定割合であるというのだ。

ラビスタ富士河口湖(筆者撮影)
ラビスタ富士河口湖(筆者撮影)

子どもが両親へのプレゼントに、孫がおじいちゃんやおばあちゃんへのお祝いにといった具合だ。確かに高齢者がふたりで出掛けるとならば“大丈夫だろうか?”とつい心配してしまう。加えてたとえば脚が不自由であれば、公共交通機関での移動を考え臆し諦めてしまうこともあるかもしれない。旅は健脚が必要という常識を覆すプランとも評せるが、そんなシーンを想像すると確かにこのプランの価値が見えてくる。また、孫と一緒にいたい祖父母がスポンサーとなり、三世代でというゴージャスなパターンもあるという。

そもそもコロナ禍において、他者との接触を最小限にした“Door to Door”の安全な移動、施設の徹底した安全対策による快適な旅行、というコンセプトで誕生したプランだったというが、コロナ禍で旅に縁遠くなってしまった人々へも、思いがけず旅へのハードルを下げることにもなったのは意外な効用だったのかもしれない。

今後、Yahoo!ニュース(個人)ライフカテゴリーへは、ホテル体験レポートも精力的にアップしていく。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

ホテル評論家の辛口取材裏現場

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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