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野澤武史、五郎丸歩が解説を付けた試合映像をプレゼント。「青春の宝」プロジェクト始動

多羅正崇スポーツジャーナリスト
解説付きの試合映像を楽しんだ石巻工業ラグビー部。写真:(一社)スポーツを止めるな
企画した2020年7月発足公表の一般社団法人「スポーツを止めるな」。代表理事は元ラグビー日本代表の野澤武史氏、共同代表理事は廣瀬俊朗氏らが務める。写真提供:(一社)スポーツを止めるな
企画した2020年7月発足公表の一般社団法人「スポーツを止めるな」。代表理事は元ラグビー日本代表の野澤武史氏、共同代表理事は廣瀬俊朗氏らが務める。写真提供:(一社)スポーツを止めるな

 もしトップ選手やスポーツアナウンサーが、自分達の試合映像に解説&実況をつけたら――。

 そんな夢のような企画がスタートした。

 コロナ禍により活動を制限されている学生アスリートを励まそうと、一般社団法人「スポーツを止めるな」が7月27日、「思い出の試合」にトップ選手らが本格的な実況&解説を付けてプレゼントする「青春の宝」プロジェクトを始動させた。

 初回はラグビーの「石巻工業高校×佐沼高校」(第68回宮城県高校総体3位決定戦/2019年6月3日)。

 解説はラグビー日本代表で活躍した五郎丸歩(34)と、ラグビー解説者として約10年のキャリアを持つ(一社)スポーツを止めるな代表理事の野澤武史氏(41)だ。

 そして実況はスポーツテレビ局「J SPORTS」のラグビー中継でもおなじみの谷口廣明アナウンサー。

 一流の実況解説陣が事前に音声を収録し、上映会という形で試合映像を贈り届けた。

 メディアへ向けた野澤氏の説明によれば、トップ選手の解説動画をプレゼントするアイデアは、元女子バレーボール日本代表の大山加奈さんによるもの。

 競技を横断して実現した上映会は、一体どんな盛り上がりを見せたのか。

事前収録の様子。左が野澤氏。右がトップリーグ・ヤマハ発動機のフルバックである五郎丸。写真提供:(一社)スポーツを止めるな
事前収録の様子。左が野澤氏。右がトップリーグ・ヤマハ発動機のフルバックである五郎丸。写真提供:(一社)スポーツを止めるな

■コロナ禍でのモチベーションアップに。応募したラグビー部部長「チームを好きになってほしい」

 (一社)スポーツを止めるなは7月27日、宮城・石巻工業とオンラインでつなぎ、プロジェクト初の上映会を行った。

 教室に集まった同校ラグビー部の生徒たちは、スクリーンに流れる実況解説付きの試合映像を楽しんだ。

「今回、僕たちの試合を野澤さんや五郎丸さんに解説してもらって、自分達の強み、弱点を把握できました。9月から花園(全国高校ラグビー大会)の予選が始まるので頑張っていきたい」(石巻工・石田主将)

 また石巻工のラグビー部部長で、思い出の試合に「最後までもつれたシビれる試合」として佐沼高校戦を選んだ布施雅博さんは、「こういう刺激を与えてもらい感謝したい」と語った。

「3月から5月末まで新型コロナの影響でラグビーができず、6月からやっと始動しました。こうした実況解説付きの動画は、僕が高校生だったら絶対に嬉しいし、モチベーションが上がると思って応募しました」

「今回の企画もきっかけにして、生徒に自分達のチームを好きになってほしいです」(石巻工・布施部長)

(一社)ラグビーを止めるな代表理事の野澤武史氏。元ラグビー日本代表。慶應高-慶大-神戸製鋼。 現在は日本ラグビー協会リソースコーチ、タレント発掘担当。2017-18年U17日本代表コーチ。提供:(一社)スポーツを止めるな
(一社)ラグビーを止めるな代表理事の野澤武史氏。元ラグビー日本代表。慶應高-慶大-神戸製鋼。 現在は日本ラグビー協会リソースコーチ、タレント発掘担当。2017-18年U17日本代表コーチ。提供:(一社)スポーツを止めるな

 

■トップレベルの知見で理解度もアップ。

 プロジェクトの主旨とは別の効果もあった。

 石巻工の石田主将が「強みと弱みが分かった」と語ったように、トップレベルの実況解説により、自分達のプレーやラグビーに対する理解度が深まった。

 試合の解説では、専門家ならではの洞察、指摘が飛び交っていた。

「こうした後半リードした状態でのリメイクモール(ラック等からモールを再構築するプレー)は相手にとって嫌ですね」(野澤氏)

「大きくリードしているので、この状況ならウイングは(DFラインの)フラットまで上がって全然問題ないです」(五郎丸)

 実況解説を通して知識が深まり、かつ一生の思い出として記憶にも記録にも残る――。一石二鳥、三鳥の企画だ。

 主催したスポーツを止めるな代表理事の野澤氏は、上映会の最後に高校生へ想いを語った。

「今回は実況解説をつける試合として『まずは2011年の東日本大震災で被災した東北から』ということで選ばせて頂きました」

「私も今回の機会に感謝しています。いま私自身もラグビーから遠ざかっていて、解説を通してあらためてスポーツの良さを感じました」

「30年後の同窓会でもこの映像を見てくれたら嬉しいです。ぜひこれからもラグビーのサポーターでいてほしいと思います」

 収録した試合映像の最後には、実況を担当した谷口アナウンサーが「みんなが大きくなった時、食事をしながら話をしたいな」と温かい言葉を贈っていた。

 スポーツ界の大人達のプロフェッショナリズム、そして温かみを感じた上映会となった。

ヤマハ発動機のフルバック五郎丸歩。佐賀工-早大-ヤマハ発動機。2015年ラグビーワールドカップイングランド大会に出場。
ヤマハ発動機のフルバック五郎丸歩。佐賀工-早大-ヤマハ発動機。2015年ラグビーワールドカップイングランド大会に出場。

■まずラグビー界から参加チーム募集。今後は他競技へ。

 「青春の宝」プロジェクトは8月31日まで、まずはラグビー界から企画参加チームを募集している。

(詳しくは一般社団法人「スポーツを止めるな」公式サイト https://spo-tome.com まで)

 日本ラグビーフットボール選手会とも連携しており、今後は五郎丸以外のトップリーガーらも参加予定だ。

 今後はバスケットボール、バレーボール、柔道にも展開していく。

 自身のプレー動画を投稿してもらい進路開拓に繋げるSNSプロジェクト「♯ラグビーを止めるな」に端を発し、ムーブメントを持続拡大するために設立された(一社)スポーツを止めるな。

 今後は青春の宝プロジェクトと並行して、学生側とリクルート側が安全な環境で情報交換ができる会員制サイトの開発、ソーシャルメディアのリテラシー教育も行っていく予定。

 こうしたサービス、企画の利用は無料。そのための活動資金は個人と法人からクラウドファンディングで募っている。※「スポーツを止めるな」クラウドファンディング 

 子供達のために、いま何ができるのか。スポーツ界の大人達の挑戦は続く。■

 

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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