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袴田事件再審判決を前に再審法改正めぐる動きも拡大!9月19日には3000人規模の市民大集会も

篠田博之月刊『創』編集長
9月10日に行われた会見(筆者撮影)

 社会的注目を浴びている袴田事件再審公判の判決がいよいよ9月26日に出される。当日、静岡地裁前には報道陣はもちろん、全国から関心を持った人たちが集まる予定だ。多くの人が無罪判決を確信しているが、検察側はこの期に及んでも有罪を主張している。この事件では、捜査側が証拠を捏造した疑いが強く、それがどう明らかになるかという問題を含めて、まだ決着がついていないわけだ。

 思えば、静岡地裁で最初に再審開始決定が出されたのは2014年。検察側の抗告でそれから10年の歳月が流れた。

 そんなふうに検察側が不条理な抗告を繰り返したり、自分たちに不利な証拠の開示を拒否するといった現実をめぐって、再審の仕組みを見直そうという、再審法改正をめざす動きも強まっている。

 改正の動きを推進している日本弁護士連合会(日弁連)は、この9月の袴田事件再審をめぐる社会的関心を追い風にしようと大きな取り組みを予定している。

9月19日に日比谷野音で3000人集会

 9月19日(木)には東京の日比谷野外音楽堂で3000人規模の大集会を開く予定だ。昨日9月10日、主催者側が司法クラブで記者会見を行い、この集会について説明した。冒頭写真がその会見で、出席したのは右から金聖雄監督、日弁連でこの問題に取り組んでいる鴨志田祐美弁護士、周防正行監督、そして日本プロボクシング協会の新田渉世さんだ。

 かつて共謀罪反対運動や秘密保護法反対運動が盛り上がった時期には、日比谷野音で大集会が何度も開催されたが、こうしたテーマで3000人規模の集会は久々かもしれない。

9・19日比谷野音大集会のチラシ(主催者提供)
9・19日比谷野音大集会のチラシ(主催者提供)

 9月19日は16時半開場、17時開会でYouTubeによる配信も実施予定。総合司会はジャーナリストの安田菜津紀さんで、2部構成で行われる。第1部は袴田事件の袴田ひで子さんや大川原化工機事件被害者の大川原正明さん、日本ペンクラブ言論表現委員長の金平茂紀さん、それに国会議員の発言が行われる。

 第2部は、せやろがいおじさん、古舘伊知郎さん、『虎に翼』法律考証の村上一博さん、ジャーナリストの津田大介さん、それに国会議員の発言のほか、音楽ライブも予定されている。

 主催は、第1部が日弁連、第2部は再審法改正をめざす市民の会(日弁連が共催)だ。再審法改正をめざす市民の会は、元裁判官の木谷明さん、映画監督の周防正行さん、元日弁連会長の宇都宮健児さんらが中心メンバーで、筆者も運営委員の一人だ。

今年3月の超党派議連の結成総会(筆者撮影)
今年3月の超党派議連の結成総会(筆者撮影)

再審法改正の超党派議連が加盟議員346人に

 日弁連はこの集会のほかにも、袴田事件再審公判判決を受けて9月28日(土)に集会を予定している。また「日弁連再審法改正全国キャラバン」と銘打って各地で集会を開催しており、本日9月11日夕方6時から札幌弁護士会が周防正行監督らを招いて札幌エルプラザで市民集会を予定している。

 袴田事件をめぐって再審についての社会的関心が高まっている流れを一気に再審法改正までつなげることができるかどうか、この9月が正念場と言える。

 現在、再審法改正をめぐっては超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が346人もの議員加盟を得て、大きな勢力になっている。しかし、100年ぶりの改正と言われる再審法改正については、法務省や検察が反対しているなど、障壁もまだ少なくない。この9月の大きな動きをばねにして、一般の市民の間にも理解と支持をどれだけ広げられるかがカギと言えるかもしれない。

映画『拳と祈り―袴田巖の生涯―』C:Rain field Production
映画『拳と祈り―袴田巖の生涯―』C:Rain field Production

袴田事件をめぐる映画や出版も

 また、そうしたうねりへの期待もあって、この間、袴田事件に関する映画公開や書籍刊行の動きも続いている。映画といえばこれまで、金聖雄監督のドキュメンタリー映画『袴田巖 夢の間の世の中』などが知られているが、来る10月19日には笠井千晶監督の『拳と祈り―袴田巖の生涯―』がユーロスペースほかで全国公開される。

 監督の笠井さんは元静岡放送でずっと袴田事件を追っていた女性で、長年の取り組みを結実させたのが今回のドキュメンタリー映画だ。昨日、筆者も試写会に足を運んだが、20年以上、この事件を追い、袴田ひで子さんと同じマンションに住みながらカメラを回し続けてきたという労作だ。公式ホームページは下記だ。

https://hakamada-film.com/

 また袴田事件について『サンデー毎日』や『創』(つくる)で何度もレポートしてきた青柳雄介さんがこの8月、袴田事件に関する著書を上梓している。文春新書『袴田事件 神になるしかなかった男の58年』で、これも長年、袴田事件について取材し報じてきた青柳さんならではの本だ。

 これを機に袴田事件、そして再審について改めて考えてみたい。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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