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2024年夏アジアンフード商戦 ファミレス、コンビニ、ファストフード、連日の発売嬉しい混戦だった!

恋しいアジアごはん伊能すみ子アジアンフードディレクター
2024年夏に登場したアジアンフード

暦の上ではもうすぐ立秋ですが、猛烈な暑さは衰え知らず。今年の夏も様々なエスニックテイストの料理やデザートが登場してきました。 「民族」を意味するエスニックの中でも、夏の注目はアジアンフード。特にタイやベトナムといった東南アジアの国々の料理が注目されていて、ファストフード店やコンビニエンスストアでは、「アジアンフードフェア」商戦が盛んになっているのです。

特に今年は、例年にない“タイミング”でフェアを実施していて、アジアンフードを愛する専門家の私としては驚きの年といえました。さて、それはいったいどういうことだったのでしょう。この夏の振り返りもかねてご紹介しましょう。

ポイントは2つありました。

同業態が同時期に展開

現在、Café レストラン ガスト(以下ガスト)では、エスニック料理が得意な料理研究家エダジュンさん監修の「アジアンフェア」が開催中(7月11日スタート)。同日にはホスピタリティーレストラン ロイヤルホスト(以下ロイヤルホスト)でも南国シンガポールの料理を提供する「シンガポールフェア」がスタートしました。さらに、翌7月12日には、大戸屋ごはん処(以下大戸屋)が「アジアングルメ」と題したフェアを開始しています。

大戸屋「大戸屋のアジアングルメ」
大戸屋「大戸屋のアジアングルメ」


驚きなのが、全国展開する同じ業態の店が同じタイミングで東南アジア各国の料理や食材を使用した夏ならではのフードフェアを開催しているのです。もちろん毎年夏には様々なアジアンフード商戦が繰り広げられていますが、ここまで数多くの「同業態が同時期に展開」が重なるのは今までにないと記憶しています。

早まるスタート! アジアンフード商戦

一般的に夏本番となるのが梅雨の明けるころ7月下旬から。5月の立夏から暦の上では「夏」が始まるので、アジアンフード商戦もそのころからスタートするのですが、すぐに梅雨の季節に入ってしまうため、梅雨明けからお盆のころまでがピーク、と意外にも短期決戦なのです。
ところが、ここ数年は暑くなるタイミングが早くなっていますよね。今年もゴールデンウィークの頃には、最高気温が30度を超える真夏日になった地域が多くありました。企画する飲食業界側も暑さを考慮しながら、前倒しでフェアを実施する傾向にあると思います。
今年も4月の早い段階からアジアンフードを銘打ったフェアや商品販売のタイミングが重なり、一気にアジアンフード商戦が始まったのです。

ファストフード店では名物料理やアジアの世界観を広げた商品が登場

まず、熱いアジアンフード商戦を繰り広げたのがファストフード店3社です。フレッシュネスバーガー、ロッテリア、マクドナルドが同時期に「アジアンエスニック」系の商品を期間限定販売しました。

シンガポール名物をモチーフにフレッシュネスバーガーの「シンガポールチリクラブバーガー」
シンガポール名物をモチーフにフレッシュネスバーガーの「シンガポールチリクラブバーガー」

その“タイミング”を初めて感じたのは、今年4月に発売されたフレッシュネスバーガーの「パクチーチキンバーガー」です。パクチーといえば日本で大ブームを起こした独特の香りを放つハーブで、2022年にパクチーを挟んでグリーンカレーソースで仕上げた「パクチーチキンバーガー グリーンカレー」が想定する販売数の3倍を売り上げ大人気に。翌年の2023年には新たにトムヤムクン味を追加し、タイ満載の味で話題となりました。この2年間は6月に期間限定で発売していましたが、今年は4月からと早めのスタート。不動の人気「パクチーチキンバーガー グリーンカレー」と、新たに「パクチーチキンバーガー ガパオ」が登場しました。
さらに、タイからシンガポールへとバトンタッチし、6月12日からは「シンガポールチリクラブバーガー」を販売開始。シンガポール名物であるスパイシーなカニ料理、チリクラブをイメージしたもので、殻ごと食べられるソフトシェルクラブを丸ごと1匹使用しました。見た目も斬新で、想定する2倍の売れ行きとなり、販売終了予定日より前に終了するなどのスマッシュヒットとなったのです。

ロッテリアの「トムヤムエビバーガー」と南国のココナッツミルクを使った「アイスココナッツラテ」
ロッテリアの「トムヤムエビバーガー」と南国のココナッツミルクを使った「アイスココナッツラテ」

一方、ロッテリアでは5月23日から「アジアングルメフェア」が始まり、第2弾としてタイの人気料理であるトムヤムクンをイメージした「トムヤム エビバーガー」が登場しました。第一弾の「旨辛 牛プルコギバーガー」に続く流れで、こちらも大人気に。
元々、ロッテリアのエビバーガーはおいしいことで評判でしたが、そこに旨辛なトムヤムソース、柑橘系の爽やかなバイマックルーとレモングラスのハーブコンビネーション抜群のソース、さらに特製タルタルソースを合わせた異国感あふれるバーガーに仕上げていったのです。ロッテリアは同時にココナッツミルクを使用したアイスカフェラテやトロピカルアイスティーといった「ロッテリアのアジアンドリンク」も提供開始し、より南国を感じられる企画となりました。

マクドナルドからは「アジアンスイーツ」で夏気分
マクドナルドからは「アジアンスイーツ」で夏気分

ファストフード店の中でもCMが話題となったのがマクドナルド。歌手のあのさんを採用し、6月5日から発売開始されたのが「アジアンスイーツ」です。「マックフルーリー 杏仁マンゴー」、「マックシェイク ソルトライチ」、「バナナキャラメルパイ」、マクドナルドスイーツとして初となるアジアの世界観をコンセプトにしたスイーツが3品登場しました。人気のマクドナルド商品に、杏仁やマンゴー、ライチやバナナといった南国フルーツ味を採用し、爽やかな味わいのアジアンスイーツになりました。

今回の「アジアンスイーツ」はマクドナルド初の展開でしたが、2023年2月には「アジアのジューシー」として油淋鶏や担々ビーフなどアジアの味をバーガーにした商品を発売していますので、今後もアジアンシリーズは続くかもしれませんね。

各ファストフード店らしく、メインの商品に合わせた飲み物や食べ物も提供することで、南国の味を手軽に楽しめたのも共通する点でした。

コンビニの狙いは、「香り」や「味」でアジア

この数年、季節に限らずアジアンフードの販売回数が増えているのがコンビニエンスストアです。麺類やごはんもの、おかずの種類も多く、冷凍食品も含めたら相当数になるのではないでしょうか。

ファミリーマートからはタイやベトナムの香りを提供
ファミリーマートからはタイやベトナムの香りを提供

ファミリーマートは6月18日から「香るアジア」と題し、韓国、タイ、ベトナムから7品が登場しました。魚を発酵させた魚醤の調味料ナンプラー(タイ語)を使用したタイの国民食「パッタイ」や同じく魚醤のヌクマム(ベトナム語)を加えた米粉麺の「フォー」、独特な香りのパクチーたっぷりなベトナムのサンドイッチ「バインミー」など、それらの香りでアジアを感じることができるので、特徴ある「香り」で商品展開するのも新しい切り口だなと感じます。

ローソンからは人気のホットメニューがタイの味に
ローソンからは人気のホットメニューがタイの味に

一方、カウンターフーズで新しく商品展開を実施したのが、ローソンの「夏に食べたいアジアンメニュー」(7月2日から)です。メイン商品であるからあげクンの新フレーバーとして「グリーンカレー味」がお目見え。トムヤムクンソースを入れた「ソースin Lチキ トムヤムクン味」やガパオ味の「アジアン春巻 ガパオ味」など、タイ料理を要となる特徴的な味を既存の商品にいかして発売したのです。

ローソンストア100からもタイの味を
ローソンストア100からもタイの味を


さらに、系列のローソンストア100でも、米飯や麺類商品として「カオマンガイおにぎり」、「ガパオおにぎり」、「パッタイ風焼きビーフン」がお手軽価格(125円~)で登場しました。

コンビニはアジアンフードを食材の香りで表現したり、おなじみの商品を活用してタイ料理の味を表現したりするなど、製造ベースを持った商品にアレンジをきかせ、様々な切り口から新企画が発表されるので頻繁にチェックして楽しみたいですね。

ファミリーレストランが考える個性光るアジアンフード

冒頭でも書いた通り、ファミリーレストランでも夏のアジアンフード企画が目白押しでフェア開催中です。

ロイヤルホストが「シンガポールフェア」を開催するのは3回目
ロイヤルホストが「シンガポールフェア」を開催するのは3回目

シンガポールに海外初進出(7月19日グランドオープン)を果たしたロイヤルホストの「シンガポールフェア」では、飲食の屋台施設であるホーカーセンターで名物となっている「海南チキンライス」をはじめ、ココナッツミルクのスパイシー麺「ラクサ」や魚の頭を使用したカレーをモチーフにした「シーフードカレー」と、南国の味が登場しています。

ガストの「エダジュン監修 アジアン風フライドチキン&グリーンカレープレート」
ガストの「エダジュン監修 アジアン風フライドチキン&グリーンカレープレート」

ロイヤルホストと同日7月11日にスタートしたガストの「アジアンフェア」は、料理研究家エダジュンさんが監修を担当。スイートチリソースたっぷりのフライドチキン、タイ産のハーブであるガパオの炒めやグリーンカレーやパクチーをふんだんに使用したタイ料理のワンプレート料理やサイドメニュー5品を提供しています。
スパイシーさのある料理は夏の暑さを吹っ飛ばしてくれるし、またアルコールとの相性も良いので、おつまみのような感じで食べてもぴったりです。

大戸屋の「アジアングルメ」は3品が登場。こちらは「スイートチリの大戸屋アジアンから揚げ」
大戸屋の「アジアングルメ」は3品が登場。こちらは「スイートチリの大戸屋アジアンから揚げ」

さらに大戸屋でも、エスニックな香りが食欲をそそる「アジアングルメ」を7月12日から開始。2005年のタイ海外進出をはじめアジアをけん引してきた企業なだけに、「和」と「エスニック」を融合させた日本人の舌に合う「アジアのごはん」を3品提供しています。

マクドナルド同様に、「この味」や「この食材」がアジアングルメらしさをアピールしていて、「スイートチリの大戸屋アジアンから揚げ」は、昨年6月に実施した「アジアン食堂」に続いての登場。ガスト同様に、甘くて辛くて酸っぱいスイートチリソースと鶏のから揚げのコンビは日本人にも食べやすく親しみやすい料理といえるでしょう。

この夏は、アジアンフードの情報収集をすればするほど、様々な業態から企画、販売が行われていたので驚きの反面、暑い夏の印象が強まったようにも感じました。

実は百貨店業界も近年、アジアンフードに注目していて、東京・伊勢丹新宿本店では6月に「アジアンフードタイム」と題したアジア各国料理の販売を期間限定で実施。全国の百貨店でも雑貨やファッションなども含めた東アジアや東南アジアの国々のフェアが開催されました。

暑い国の料理が注目される夏のアジアンフードですが、夏に限らず一年を通してたくさんの料理があるので、今後もぜひ注目してくださいね。

アジアンフードディレクター

アジア諸国に魅了されてしまったアジアンエスニック食偏愛人。今行きたいお店情報や食べてみたい料理・スイーツ、使ってみたい調味料など、アジアンフードが恋しくなる情報を発信。★1級フードアナリスト★日本エスニック協会アンバサダー★ごはん比較探Qユニット・アジアごはんズメンバー

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