原油相場50ドル台回復、安い原油価格は終わったのか?
10月8日のNYMEX原油先物市場では、ドル建て原油価格が一時1バレル=50ドルの大台を回復した。8月24日の37.75ドルをボトムに、約7週間で3分の1近い価格上昇になった計算である。50ドル台回復は7月22日以来のことであり、原油相場環境に大きな変化が生じていることが窺える。
こうした原油高の背景にあるのは、国際原油需給の歪みをもたらした一因であるシェールオイルの急激な増産傾向にブレーキが掛かっていることだ。5~6月にかけて60ドル水準を回復していた原油相場が再び40ドル台まで急落する中、原油安に耐えられなくなったシェールオイル開発業者が増えており、生産調整の動きが活発化している。
米ベーカー・ヒューズ社が調査した米石油リグ稼動数は、昨年10月10日の1,609基をピークに今年6月26日の628基まで急減した後、その後は8月28日の675基まで緩やかな回復を見せていた。このため、シェールオイル生産の安値対応の進展に対する期待感が高まっていたが、その後は5週連続で減少に転じており、直近の10月2日時点では2010年8月以来で最低となる614基まで落ち込んでいる。
また米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の産油量は6月5日時点の日量961.0万バレルをピークに、直近の10月2日時点では917.2万バレルまで落ち込んでいる。なお前年同期の887.5万バレルを上回った状態が続いているが、このままの減産ペースが続くと年末から来年初めにかけて米国の産油量が前年比での減産に転じる可能性が高まっている。
これは、供給サイドから過剰供給状態の解消を促す「需給リバランス」が進展していることを意味する。昨年後半以降は、石油輸出国機構(OPEC)が減産見送りで過剰供給を背景とした原油安を促すことで、シェールオイルなどの高コストのタイトオイルに生産調整を迫ってきた。こうした中でシェールオイルの減産傾向が強くなっていることは、OPECの対シェールオイル戦略が有効に機能している可能性が高いことを意味する。
もっとも、シェールオイルの減産が始まっているのは安い原油価格に耐えられなくなった結果に過ぎず、需給リバランスの進展期待から原油相場の安値是正が進んだ際に、このままシェールオイル生産の抑制された状態が続くのかは疑問視している。価格上昇が進めば再び増産圧力が強まるのは必至であり、原油価格の本格反発が可能なのかは、なお慎重な判断が求められる。