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ツアーファイナル現地リポ2 王者に1-6,1-6の敗戦に、錦織圭「今日のジョコビッチはすごすぎた」

内田暁フリーランスライター
会場前に張られた錦織のポスターと、その前で記念撮影をするファンたち

「自分はベストのプレーをし、そして彼の調子が良くないことを願うだけ。それが彼に勝てる唯一の方法だ」

2日前の会見で、そう言ったのはトマシュ・ベルディフでした。ここで言う「彼」とはもちろん、最強の時を謳歌するノバク・ジョコビッチ。現在22連勝、インドアでは37連勝、そして14大会連続決勝進出中というとてつもない記録を更新しながら、シーズン最終戦となるロンドンに乗り込んできた世界1位。その最強の王者と、錦織は今大会のオープンニングマッチを戦うことになりました。

パリ同時多発テロ犠牲者への黙とうに続いて、ジョコビッチのサービスで始まった一戦は、王者がラブゲームで奪う静かな立ち上がり。しかし次のゲームで、早くも試合は動きます。ジョコビッチが深く鋭く打ち込むストロークに、ジリジリと押し込まれバックでミスを重ねる錦織。一方フォアの打ち合いでは、広角に打ち分けていく錦織が勝ります。鋭いアングルショットでジョコビッチを追い出し、ストレートへの切り返しで立て続けに奪ったウイナー。2本のブレークポイントを凌ぎ、ゲームポイントまで漕ぎつけました。

しかしジョコビッチは、錦織のセカンドサービスを早いタイミングで叩いて、再びストローク戦で主導権を握ります。懐深く食い込むボールに押し込まれた錦織のショットはラインを割り、ジョコビッチがいきなりのブレーク。続くゲームもキープしたことで、ジョコビッチが試合を支配しはじめました。

第2セットも、第1セットと同じような流れになります。最初のゲームでブレークを許した錦織は、リスクを負って攻めていくも、攻守一体となった要塞のようなジョコビッチの壁をなかなか崩すことができません。第2ゲームでは、鮮やかなフォアのウイナーを叩き込み追い上げますが、その度に、反撃の狼煙に水を掛けるように決まるジョコビッチのエース。

終ってみれば、スコアは6-1、6-1。連勝を23に伸ばしたジョコビッチは、勝利直後のコートで年間1位のトロフィーを手渡されました。

この試合では、リターンを得意とする錦織が一度もブレークポイントを得ることができませんでした。7回あったジョコビッチのサービスゲームで、錦織が奪った総ポイントは僅かに9。リターンゲームに冴えを欠いたようにも見えましたが、それはサービスの不調も要因だったと錦織は言います。

「サービスゲームで乗り切れないところがあったので、そういう小さなところが、徐々に重みになっていたのかもしれません」

1週間前に負った脇腹の痛みのため、サービスの練習が不足していたことが大きな不安材料としてあったようです。またジョコビッチのサービスは「そんなに速いわけではないですが、ライン際に入るサービスが多く、ファーストの確率も高かった。なかなかリターンが思うように返せなかった」とも振り返りました。

もっともサービスの正確性は、ジョコビッチが最も集中していた点でもあったようです。

「セカンドサービスも含め、色んな球種やコースを組み合わせることを考えていた。同じボールを2度続けて打つことはしなかった。常に変化をつけるようにし、その戦術がうまくいった」

「今日はベストのプレーだった」。世界1位は胸を張ります。錦織も「今日のジョコビッチはすごすぎた」と、自分を納得させるかのように言いました。

初戦で敗れたとはいえ、この大会が他のトーナメントと違うのは、負けても次の戦いがあることです。

「これだけのスコアでやられたので、ショックは大きい」

そう認める錦織ですが、フォアではジョコビッチを上回る6本のウイナーを決めるなど「ストロークで攻められた」のはポジティブな要素。

「フェデラーやベルディフは、ジョコビッチとはまたタイプの違う選手なので、それに対応していくしかない。サービスが悪かったのは明確なので、それを直して次に行きたいと思います」

次なる戦いは2日後。相手は、実に3年ぶりの対戦となる……しかし練習は最近でも何度もしているというベルディフです。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日最新のテニスニュースを掲載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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